夜勤病棟の女神様(仮)

てっぺんの街、ひよっこナースの日常

第107回看護師国家試験を味わう(5) 八百長なんて言わないで(午後22)

第107回看護師国家試験を味わうシリーズ。日看学協の物言いが適当なのか、その内容を検討する3回目。昨年の今頃は冬コミでしたよ。今年は仕事納めもまだなので、明日までここを更新する予定。

だから言うよ、キミは合格できるって

午後22は日看学協から物言いがついただけではなく、厚労省も誤りを認めている問題です。それならあえてここで検証しなくてもとなりそうなものですが、話はそう単純じゃない。この問題、合格率調整用の「正誤どちらにでもできる問題」なのではないかと私は考えています。

静脈血採血の方法で正しいのはどれか

  1. 駆血帯を巻いている時間は2分以内とする。
  2. 針の刃面を下に向けて血管内に刺入する。
  3. 静脈内に針を刺入したら強く内筒を引く。
  4. 針を抜いてから1分程度の圧迫止血を行う。

(第107回看護師国家試験(午後22)より)

私の解答は1でしたし、看護師となった今解答しても1。迷いはありませんが、試験問題で際どい数字を持ってきたなという気はします。

さて、日看学協の物言いはこの通り。

  • 正答がない。「1」が誤っているため、「4」を選んだ学生が多い。また、臨地実習場面において実際の採血後の看護師は数分の圧迫止血を実施するよりも、止血用パッド絆創膏や酒精綿で圧迫貼付などを実施して見せていることが多い現状から「4」を選ぶ可能性が高い。

①社団法人日本臨床衛生検査技師会静脈採血推奨法では、以下のように記されている。

駆血帯は1分以上巻いたままにしない様に注意する。<血液凝固が起こり、血液が組織に浸潤し血腫が形成されることもある。血液濃縮で蛋白濃度が高値になる。血液細胞数値が間違って高くなることもある。>

*通常2~3分間圧迫止血すると良い。

②各社の看護技術系テキストでは、以下のように記されている。

*駆血時間は「1分以内」*圧迫止血は「5分程度」

(日本看護学校協議会『第104回保健師、第101回助産師及び第107回看護師国家試験提出要望書』より)

対して厚労省の見解はなかなか巧妙です。

採点上の取扱い

 採点対象から除外する。

理由

 選択肢が不適切であるため。

厚生労働省第107回看護師国家試験における採点除外等の扱いをした問題について』より)

何が誤りかを言わない、お役所仕事の真骨頂。

争点は「駆血時間は2分以内で正しいか」です。日看学協もこの1点に絞って物言いをつければよいものを、なぜ圧迫止血時間を出してしまったのでしょうか。方法によらず一定時間の圧迫止血が必要なのは彼らも認めるところで、見通しの悪い議論になるだけ。

閑話休題。駆血時間ですが、結論から言えば1分でも2分でもどうぞって感じです。3分としたところで客観的で決定的な正誤を示すことは難しいのでは。日看学協は日本臨床衛生検査技師会の教科書を持ってきましたので、私はWHOの教科書を持ってきてみましょう。

Remove the tourniquet when the blood flow is established or after 2 minutes, whichever comes first.

World Health OrganizationPractical guidance on venepuncture for blood donation』より)

WHOは2分です。

駆血時間は、長すぎると採取する血液成分に影響がある、また、患者の血液うっ滞が生じる可能性があるため、適当に短くと言われます。前者については具体的な数値での研究も見つかりましたが、1分なのか2分なのかは明確に言えるほどのことではないようです。

よって、試験問題としての午後22に対する正答は明らかに1です。それでも、厚労省が誤りとした理由、そもそも物言いがつきそうな問題を放り込んできた理由。合格率調整のためではないかと私は見ています。厚労省が試験問題作成のために集めた精鋭たちと言えども、受験生が解答する前の試験問題を作るだけでピタリと合格率90%に合わせることは難しい。ではどうやって合格率を安定させるのか、試験実施後に正誤を変更できる問題を作ればいいわけです。その好例がこの午後22だと見ています。

受験生は試験を終えると、様々な情報に基づき自己採点を行い、例年の合格基準点を参考に一喜一憂します。しかし、合格基準点が動く試験ですからね。それなりにできていればそれなりに安心したらいいんです。

ちなみに私の通っていた看護学校では諸説あることも踏まえ2分と教えられていたと記憶します。採血実技の演習があった学校なので、理由は「1分でできるならどうぞ。できないでしょ? 2分で」と実践的なものでした。現在の私は、だいたいは1, 2分でやるけど、どうにもならなければ5分ぐらいもあります。

午後22に対する物言いは不適当、日看学協に黒星

厚労省も誤りとした問題に変な話ではありますが、物言いが適当かどうかって観点では、不適当だと私は考えます。たまたま彼らの物言いが、厚労省の合格率調整策と一致したってだけでは。このページではあくまで物言いの適不適を検討するということで、不適当としました。

ここまで3戦、1勝2敗。

107回 問題番号 日看学協
午前18
午前100
午後22
午後24
午後65
午後105
午後114

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ひとりきりのクリスマス翌日

JR稚内駅 開駅90周年

稚内駅 おかげさまで 開駅90年

2018年12月26日はJR稚内駅 開駅90周年の記念日でした。祝賀ムードで溢れる稚内駅を撮りに駅へと向かいましたが、そうだろうと思っていましたよ。

JR稚内駅 開駅90周年 見渡す限り人、人、人が

誰もいませんね。これ、19時、午後7時ですよ。なんと寂しいことでしょう。稚内の乗車人員は107人/日*1だそうですから、1時間後に幌延行きの普通列車を残すのみとなった駅では寂しくて当然かも知れません。

きっと君は来ない

高橋はるみ北海道知事が新幹線を稚内まで延伸したいと発言したことが一時話題になりました。多くの人は何をバカなことをと思ったのでしょうが、新幹線の終着点であった青森の弘前に3年間住んだ後、鉄道の終着点である日本最北端の稚内に来た私は納得せざるを得ない発言でした。新幹線って、本当に驚くほど予定通りに走りますよね。だから青森から東京へ行くのは全然苦労しませんでした。稚内から東京まで新幹線で結ばれたなら、予備の休日を取らずとも東京方面へ出かけられますし(逆に言えば東京方面から来られますし)、札幌までの移動に鉄道を選ぶ人も増えるんじゃないかなと思います。稚内を、鉄道を活性化するには新幹線ですよ。

とは言え、たった3.5万人の稚内、たった6.5万人の宗谷地域では採算が合いませんよね。廃線の方が余程現実的かも知れません。100周年が駅に誰もいない程度で済むことを願わずにはいられません。

JTB小さな時刻表2018年12月号

JTB小さな時刻表2018年12月号

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*1:Wikipedia稚内駅」より、2015年の統計。

看護師にわからない看護師の会話

医療従事者の間でもさっぱり話題にならないけど私は好きな医療ネタの漫画『なみだ坂診療所』*1。地味な内容をうまくドラマにしていて、看護学生、看護師と進んできた私もいろいろと考えさせられる内容がお気に入りです。先日、910話を読んでいて、おもしろい内容を見つけました。

ある日の夜勤、看護師2名の会話

ある内科病棟のお話。

モナ: 洋子ちゃん そろそろ巡回の時間よ

洋子: モナさん ごめ~ん! 日報が朝までかかりそうで巡回に行けそうもないんです~ぅ

モナ: あなた 先週もそんなような事言ってなかったか? わかったわ じゃ かわりに私が回ってくるわ

洋子: すみません! 来週一杯おごります!

モナ: 要するに真夜中に一人で回るのが怖いんだろうね…

(宇治谷順, 向後つぐお(2018)「なみだ坂診療所」第910話 こぼれ灯(前), 『週刊漫画TIMES』 2018年11月9日号, p.240, 芳文社.)

ここで言う「巡回」は、夜間、2~3時間ごとに病室を見回ることです。夜間の病棟は基本的に「お休み中」ですから、意図的に見回らないと何が起こっているか全くわかりません。日中はいろいろな人が出入りしますから、常に誰かが誰かを見ています。しかし夜間に見るのは数名の看護師のみ。とゆわけで、巡回となります。患者が全員病室で生きているかを確認して回ります。

改めて読むと、おそらく、こういう病棟の方が多いんだろうなと思います。学生時代実習でお世話になった某弘前病院も基本はこんな感じでしょう。

ところが、私は最初読んだときに「え? どゆこと?」って理解できなかったんですよね。

巡回の内容は病棟によりけり

ある、私の勤務する、内科病棟のお話。

私の勤務先における「巡回」は、夜勤者全員(と言っても2人か3人ですが)で行います。2~3時間ごとにおむつ交換と体位交換*2が必要だからです。おむつ交換と体位交換は1人でもできますが、2人でやった方が速くて安全です。成人のおむつ交換なんて言うまでもなく重労働ですから、怖いからと自分だけ避けられるような話でもなく、「一人で回る」程度の話でもありません。

そんなですから、上に引用した会話を読んだとき、疑問符が浮かんだのです。

職場を選ぶ材料にどうぞ

中途採用で入っていく人はこんなこと百も承知でしょうけど。看護学生が就職先の病院を選ぶときには、そこの患者のADL*3がどの程度だろうって考えるのは重要です。某氏のように場所だけで決定するのならともかく、大抵は場所と仕事とで決めますよね。ADLが低い患者がが多い病棟は、ADLが高い患者が多い病棟に比べ、おむつ交換や体位交換の業務が増えます。その良し悪しは人それぞれでしょうが、給料単価当たりの労働量は増える傾向にあるんだろうなと気付いてしまい私はぐったりしています。

病院によっても傾向がありますし、同じ病院の中でも病棟(診療科)によっても傾向があります。婦人科あたりはADL高いんですよね。

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*1:以前は『茗荷谷なみだ坂診療所』だった。800話あたりで切り替わったよーな。

*2:外部から身体の向きを変えて寝返りを打たせる。おむつをするような成人の多くは自発的に寝返りを打てず、放っておくと床擦れを起こしてしまうため。

*3:Activity of Daily Living、日常生活動作。生活に必要な動作が自立して可能であれば「ADL自立」と言ったり、可能な程度を高い低いで言い表したりする。

第107回看護師国家試験を味わう(4) 問題文はよく読もう(午前100)

第107回看護師国家試験を味わうシリーズ。日看学協の物言いが適当なのか、その内容を検討する2回目。久しぶりですね。108回受験生がそろそろ本格的に勉強し始めるであろうこの時期、108回の一喜一憂に間に合うよう進めていきましょう。

現場でもしばしば起こる実践的な問題

Aちゃん(3歳、女児)は、父親(会社員)と母親(会社員)との3人暮らし。Aちゃんは、生後11か月のときに、卵による食物アレルギーと診断され、医師の指示で卵の除去食療法をしていた。保育所では卵を除去した給食が提供されている。Aちゃんは保育所の給食の時間に、隣の席の園児の卵が入ったおかずを摂取し、蕁麻疹と咳嗽が出現した。保育士に連れられて救急外来を受診した。Aちゃんは保育士に抱っこされ、「かゆい」と訴えており、咳込みがみられた。

受診時に観察する項目で優先度が高いのはどれか。

  1. 体温
  2. 心拍数
  3. 腸蠕動音
  4. 蕁麻疹の範囲

(第107回看護師国家試験(午前100)より)

厚労省の定めた正答は2。

念のため、今の私が現場でどうするかを考えましたが、やはり2です。副次的に1も観察してしまいますが。

さて、日看学協は何が不適切だと物言いをつけたのでしょうか。

  • 最も必要な選択肢がないのでは? 卵アレルギーであることは分かっていることなので 蕁麻疹が出現するのは当然であり、むしろアナフィラキシーショックの状況を考慮すべきと考えられる。その場合は、「呼吸困難」の状態の観察が重要と考えるが、その選択肢がない。示された選択肢からでは2と4で迷わせたと言える。

(日本看護学校協議会『第104回保健師、第101回助産師及び第107回看護師国家試験提出要望書』より)

なるほど。試験慣れしていないと申しますか、試験を舐めていると申しますか。

アナフィラキシーショックを警戒する状況なのは間違いないでしょう。厚労省もそこを意識したはず。重要なのは「ショック」とは何か。

生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こり,生命の危機にいたる急性の症候群。

ショック 日本救急医学会・医学用語解説集 より)

ザックリ言えば「血流が維持できなくなる」ことです。この時点で、厚労省の定めた正答が適当であることがおわかりいただけると思います。出題意図は、多分、この程度。

しかし日看学協は深読みして、救急対応におけるいわゆるABCDEアプローチを意識して物言いをつけたものと思われます。目の付け所はよかったのですが、試験は問題文を読まなくちゃいけません。この問題、A = 気道, B = 呼吸の確認は終わってるんですよね。「かゆい」と訴えている、言葉を発している。これは気道開通しており呼吸できていることの証です。しかも園児が「かゆい」と言えるんです。呼吸困難がないとまでは言えませんが、あったとして度合いは低いでしょう。

問題の状況なら、私はこのように対応します。

  1. 全身を見る、色、表情、冷汗、活気(ABCD) → この問題では不明
  2. 声をかけ、反応を見る(ABD)→ 「かゆい」と訴える = 気道と呼吸はとりあえず悪くない、意識も悪くない
  3. 頸動脈、橈骨動脈の脈を触れる(CE) → 心拍数と血圧がわかる。同時に体温もわかる

ここで選択肢を見直しますと、やはり「心拍数」となります。え? 「蕁麻疹の範囲」はどうかって? それ、急ぐの?

余談ですが、橈骨動脈の脈が触れないとヤバいなーと思います。数字で言うと収縮期血圧が80 mmHgを切っている目安*1だそうです。迷わず応援を呼びます。

午前100に対する物言いは不適当、日看学協に黒星

ここまで2戦で日看学協は1勝1敗。

今回の問題は看護師国家試験の先で、新人看護師として実際に遭遇するであろう内容です。教育する立場なんだからもう少し考えてくれよと思わずにはいられません。

107回 問題番号 日看学協
午前18
午前100
午後22
午後24
午後65
午後105
午後114

エレマーノ2 電子血圧計

エレマーノ2 電子血圧計

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*1:成人において。小児だとどうなんだろう。

門松が郵便受けに入っていた

先日、ここ向けの原稿を書いていたら突然、愛用のディスプレイ、PA-301Wが1枚お亡くなりになりました。すっかり集中力は途切れて、原稿は未完成。

気分を変えて、軽い話題を。年末年始の私と稚内

年末は本業がないので副業を

今年はコミケへの参加を見送るため、現在、何の締め切りにも追われず安穏と生きています。年末年始を稚内で過ごす私に、稚内市からちょっとしたプレゼントが届きました。

稚内市、紙門松を無料配布

郵便受けに入っていた『広報わっかない 2018年12月 第800号』に「紙カド松」なるものが挟まれていました。同誌に「今年も森林保護を目的として」とあるので、稚内市では例年配布しているようですね。

この田舎で豪奢な門松がこの紙ペラ1枚に代替されているのか気になるところではあります。代替されなければ森林破壊。三が日には街中をふらついた結果をお届けしましょう。

私個人としては、例年、新年のお飾りを用意することはありませんが、せっかくいただいた「紙カド松」。年の瀬も押し迫った頃に、我が家の入り口にでも貼りましょう。ん? 例年使わない紙を使うってことは、これ、ダメなんじゃ。

なお、年末は通常通り勤務が入っておりまして、28~29日が夜勤、30日が休日、31日が日勤の予定です。

年始はどこかで初日の出

元旦の朝、宗谷岬では「初日の出 in てっぺん 2019」が開催されます。1月1日05時30分より始まり、07時12分頃の初日の出をみんなで見ようというイベント。本年の参加者数は2,300名だったそうです。聞いた話では、真冬の吹雪の中バイクで乗り付ける方々が結構いるとか。

0712までに宗谷岬に辿り着く方法としては稚内に前泊するほか、札幌を31日2300に出る都市間バスに乗って0600に稚内駅着という方法もあります。宗谷岬へのバスは稚内駅0545発なので、最後はタクシーに乗り換えですかね。興味がある方は是非どうぞ。

元旦の宗谷岬も、見に行ければ現場の様子をお届けしたいと思います。

今のところ年始の勤務は未定。元旦に日勤が入った場合は、某所からの初日の出になるかも知れません。夜勤が入った場合は寝てます。

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マナー講師曰く、情報通信業従事者は人に非ず

マナー講師が徳利の斬新な使い方をマナーと宣ってTwitterが盛り上がったのもつい最近の話。マナー方面の連中は金のためなら正しさなどお構いなし、私の嫌いな存在です。奇しくも先日、某市新採用職員研修でマナー講座を2日間も受講する機会に恵まれ、こいつらがいなくなれば世界はどんなにもよくなるだろうと改めて実感しました。今回はその中から、日々厳しい要求と戦うIT業界のみなさまにせつなさ炸裂する*1ネタを紹介しましょう。

notemachi, this pic may have been posted via here.

人は傷付くが、情報通信業従事者は傷付かない。つまり、

マナー講座の中に欠かせないのは、革新的な敬語を柱に含めた彼ら流の日本語講座。その中で、おもしろいことを言っていました。

なるほど。「あなたと、コンビに、ファミリーマート」は音商標として彼ら自身が登録しているぐらいなんだけど、ダメなのかねぇ。万人に通じることを目指して略称ではなく正式名称を基本にしましょうってんならわかるけど、傷付くと来ましたか。飛ばしてるねぇ。

直後ですよ。御マナー講師様が宣うのです。

  • 「NTT」
  • 「お電話が遠いようで」

「NTT」ってのはもしかして、日本電信電話株式会社のことでしょうか。しかし今や日本電信電話公社ではありませんからね。日本電信電話株式会社は持ち株会社です。文脈からは東日本電信電話株式会社か西日本電信電話株式会社のことのように思われるのですが、いかがでしょうか。あー、東日本電信電話株式会社や西日本電信電話株式会社などは傷付きうる「人」の働く会社ではなく、NTT東日本NTT西日本という略称すらすっ飛ばしてNTTで十分であると。どれだけ省略したところで傷付く「人」がいないとおっしゃるのですね。

電話から聞こえてくる音声が小さいという事実を「お電話が遠い」と電話のせいにしましたか。東日本電信電話株式会社や西日本電信電話株式会社みなさんはもちろん、電話機から電話機までの間*2には、様々なところで働いているみなさんの仕事が詰め込まれています。実際、「電話が遠いんだよね」と不具合報告を受け取る方々すらいます。ああ、なるほど。彼らは傷付きうる「人」ではないと。音が小さいという事実を全て電話のせいにしても、彼らは「人」ではないから傷付くことなどないとおっしゃるのですね。

情報通信に携わっていた私は、携わってた「人」じゃないんだなと、寒空の下に痛感しました。

伝送という言葉を知っている私たち

ちなみに、私自身はコンビニもファミレスも、NTTもお電話が遠いも気にしません。わかりますから。ただ、自分からお電話が遠いとはあまり言いません。音が小さい、あるいは途切れるとか、雑音が入るとかの方が正確でしょ。

言語を用いたコミュニケーションで重要なことは、伝わることだと私は確信しています。コンビニやファミレスで伝わるならそれでいいんじゃないでしょうか。しかしちょっとお堅い文書上では、コンビニエンスストアファミリーレストランと書いた方が伝わることもあるでしょう。ファミリーレストランはさらに意味をハッキリさせるため、家族連れで行きやすいレストランと言った方がよい場面もあるかも知れません。

御マナー講師様は相変わらず、いわゆるバイト敬語*3を扱き下ろします。しかし伝わることに重きを置けば、バイト敬語に不足があると言えるでしょうか。一方、御マナー講師様が改変を続ける日本語はいかがでしょうか。今回の例で言えば、情報通信業従事者を非「人」であると伝えたいのでしょうか。あ、伝えたいんですかね。

以上、マナー方面には情報通信業従事者を「人」に非ずとする向きがある旨、紹介いたしました。踏まえて、私は「人」でないものとして、医療従事者としても伝えることに努めたいとの気持ちを記して、今回の記事を締めましょう。

三省堂国語辞典 第七版

三省堂国語辞典 第七版

三国編集委員の見解すら軽んじていた。許しがたい。

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*1:えみりゅんとか出てこないよ。

*2:現医療従事者として聴力の低下も考えておきたいところ。そこを支える医療や機器すら含むんですよね、本当は。

*3:「期間の定めのある労働契約に基づき雇用される従業員敬語」と申した方がよろしいかしら。

コンビニほど便利じゃない、救外は休外だよ

コンビニ受診」という言葉はいつ頃現れたのでしょうか。Google Trendsによれば2007年11月頃のようです。Wikipediaに「コンビニ受診」立項されたのも2007年12月です。どうやら11年ほど前に現れた言葉のようですね。

今ではすっかり定着した「コンビニ受診」という言葉、その行動を差し控えて欲しいと訴える医療関係者すら口にするのを見て私は悲しい気持ちになります。

今日はコンビニ受診の行き着く先、救急外来についてのお話。そしてコンビニ受診なんて存在しないんだよってお話。

雪の中、救急車は行く

救急外来って何?

「救急外来」とは、コンビニ受診に軸足を置いて説明すると、休日深夜も24時間営業している外来のこと。救急車で運ばれる先と言うとわかりやすいかな。

どこの病院*1にもあるわけではなく、ある程度大きな病院にだけあります。ここも、救急車が行く病院といった方がわかりやすいんでしょうかね。

「救急外来」という名は体を表しており、本来は、救急、つまり急な病気や怪我に対応する外来です。もっと言えば、急ぎ命を救うための外来です。ここからはその救急外来の実態を説明しましょう。

コンビニは何でも揃うけど、救急外来はあまり揃わない

コンビニの何が便利って、何でも揃うことですよね。値段はちょっと高いけれども、欲しいものはだいたいある。食料品は生鮮から弁当まで、日用品、衣料品、衛生用品、書籍や雑誌と充実しております。広さだけでなく深さも相当なもので、何か飲み物を買おうと行けば、迷うほど置いてあります。ものだけじゃなくてサービスもありますよね。複合機を利用したコピーやFAX、ATMでの入出金、キオスク端末でのチケット購入や各種支払いもできます。日常生活に必要な物事のだいたいをカバーしている気がしますよ。

一方の救急外来は、実は、あまり揃っていないんです。コンビニの売り物に対応するのは、薬剤でしょうか。限定的にしか置いてありません。急な病気や怪我で必要なものに絞られており、慢性的な治療に必要な薬などはありません。例えば「高血圧の薬」として患者が一定期間もらって内服するようなものは置いていないこともあります。また、サービスも限られます。検査がいい例で、基礎的な検査である血液検査やレントゲン撮影すら、すぐにはできない病院もあります。

救急外来にはコンビニのように何でもあるわけじゃないんですよ。むしろ病院全体の機能と比べれば、何かと足りない。

コンビニ店員はいつも均質だけど、救急外来の医師はいつも違う

コンビニの魅力は24時間、いつでも同じことです。店員の質についてもそれは言えることで、いつ行っても、店員の対応まで含めて均質なサービスが受けられます。例えば税金の払込票を持っていけば、いつだって同じように税金を収納してくれます。

しかし救急外来の医師は異なります。当番制で病院の医師から数人が、その日の救急外来を担当します。担当医師の専門は消化器内科かも知れませんし、呼吸器内科かも知れません。はたまた整形外科かも知れませんし、小児科かも知れません。診療科にかかわらず医師は医師ですから、救命に関わる診療はできます。しかし整形外科の医師が担当する救急外来で、以前から煩う心不全の相談をしても、循環器内科外来と同じ質の答えは得られないでしょう。

救急外来の医師には急ぎ命を救う以外の能力が保障されていません。改めて言うと、どの診療科の医師がいるかわかりません。

救外じゃなくて休外だから

我々医療関係者は、救急外来のことをよく「救外」と、「きゅうがい」と省略して呼びます。ただ、その実態は「休外」、「休んでいる外来」と言っていいかも知れません。平日日中の外来が持つ機能のほとんどは持ちません。救急救命に特化した最小限を持っているだけです。

コンビニ受診」と言えば、受診先の救急外来はコンビニのように何でも一通り揃う、一通りの診療が受けられるところだと思う方も少なくないでしょう。しかし実際には何も揃わない、自らの意思で受診するような場合に欲しいものは何もないようなところが救急外来です。

今「コンビニ受診」だと思い休日深夜の救急外来に訪れる人も、実は行く先がコンビニとは似ても似つかぬ不便な「休んでいる外来」だと知ったら、救急外来へ行かなくなるんじゃないかなと思うのです。実際、救急外来で「翌日外来を受診しろと言われた」、「いつももらっている薬がもらえなかった」と憤る声を聞きます。医療関係者は「当然でしょ、バカじゃないの」と一笑に付しますが、バカなのは医療関係者です。

私たちが「コンビニ受診」と言うことをやめない限り、彼らは正しい知識を身につけることなく、私たちは不要な患者の列に悩まされ続けます。だから私は、彼らが「コンビニ受診」と口にするたびに、悲しい気持ちになるのです。単純に「不要な救急外来の受診」ではいけないのでしょうか。

Dr.アシュラ (1) (ニチブンコミックス)

Dr.アシュラ (1) (ニチブンコミックス)

何でもできるアシュラがいる救急外来ですら、命を救うことに限っているんだぞ。

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*1:ここでは法的な診療所と病院の区別は無視して、一括りに病院ね。