マナー講師が徳利の斬新な使い方をマナーと宣ってTwitterが盛り上がったのもつい最近の話。マナー方面の連中は金のためなら正しさなどお構いなし、私の嫌いな存在です。奇しくも先日、某マナー講座を2日間も受講する機会に恵まれ、こいつらがいなくなれば世界はどんなにもよくなるだろうと改めて実感しました。今回はその中から、日々厳しい要求と戦うIT業界のみなさまにせつなさ炸裂する*1ネタを紹介しましょう。
人は傷付くが、情報通信業従事者は傷付かない。つまり、
マナー講座の中に欠かせないのは、革新的な敬語を柱に含めた彼ら流の日本語講座。その中で、おもしろいことを言っていました。
- 「コンビニ」「ファミレス」はやめましょう
- コンビニエンスストア、ファミリーレストランで働いている人たちが傷付きます
なるほど。「あなたと、コンビに、ファミリーマート」は音商標として彼ら自身が登録しているぐらいなんだけど、ダメなのかねぇ。万人に通じることを目指して略称ではなく正式名称を基本にしましょうってんならわかるけど、傷付くと来ましたか。飛ばしてるねぇ。
直後ですよ。御マナー講師様が宣うのです。
- 「NTT」
- 「お電話が遠いようで」
「NTT」ってのはもしかして、日本電信電話株式会社のことでしょうか。しかし今や日本電信電話公社ではありませんからね。日本電信電話株式会社は持ち株会社です。文脈からは東日本電信電話株式会社か西日本電信電話株式会社のことのように思われるのですが、いかがでしょうか。あー、東日本電信電話株式会社や西日本電信電話株式会社などは傷付きうる「人」の働く会社ではなく、NTT東日本やNTT西日本という略称すらすっ飛ばしてNTTで十分であると。どれだけ省略したところで傷付く「人」がいないとおっしゃるのですね。
電話から聞こえてくる音声が小さいという事実を「お電話が遠い」と電話のせいにしましたか。東日本電信電話株式会社や西日本電信電話株式会社みなさんはもちろん、電話機から電話機までの間には、様々なところで働いているみなさんの仕事が詰め込まれています。実際、「電話が遠いんだよね」と不具合報告を受け取る方々すらいます。ああ、なるほど。彼らは傷付きうる「人」ではないと。音が小さいという事実を全て電話のせいにしても、彼らは「人」ではないから傷付くことなどないとおっしゃるのですね。
情報通信に携わっていた私は、携わってた「人」じゃないんだなと、寒空の下に痛感しました。
伝送という言葉を知っている私たち
ちなみに、私自身はコンビニもファミレスも、NTTもお電話が遠いも気にしません。わかりますから。ただ、自分からお電話が遠いとはあまり言いません。音が小さい、あるいは途切れるとか、雑音が入るとかの方が正確でしょ。
言語を用いたコミュニケーションで重要なことは、伝わることだと私は確信しています。コンビニやファミレスで伝わるならそれでいいんじゃないでしょうか。しかしちょっとお堅い文書上では、コンビニエンスストアやファミリーレストランと書いた方が伝わることもあるでしょう。ファミリーレストランはさらに意味をハッキリさせるため、家族連れで行きやすいレストランと言った方がよい場面もあるかも知れません。
御マナー講師様は相変わらず、いわゆるバイト敬語*2を扱き下ろします。しかし伝わることに重きを置けば、バイト敬語に不足があると言えるでしょうか。一方、御マナー講師様が改変を続ける日本語はいかがでしょうか。今回の例で言えば、情報通信業従事者を非「人」であると伝えたいのでしょうか。あ、伝えたいんですかね。
以上、マナー方面には情報通信業従事者を「人」に非ずとする向きがある旨、紹介いたしました。踏まえて、私は「人」でないものとして、医療従事者としても伝えることに努めたいとの気持ちを記して、今回の記事を締めましょう。
- 作者:
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 2013/12/11
- メディア: 単行本
三国編集委員の見解すら軽んじていた。許しがたい。