みなさま、バレンタインデーの準備は整っていますか。今年もやってきました、看護師国家試験予想問題の時期です。第115回は現行出題基準『保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版』適用の末期で熟成期にあるはずですが、一昨年の113回で難度を上げすぎた反動で去年の114回で難度を下げすぎた荒波の中にもあり、もう一工夫せざるを得ないであろう状況でもあります。さて、どんな問題になりますかね。
個人的には去年、「今回は臨床看護師としてひとまず最後の予想問題作成となりますので」と申しましたが、今また病棟看護師として勤務しております。なんてこった。とは言え、昨年の大半は病棟、病院から離れておりましたので、今回の予想問題は院外との関係が色濃いものにしてみました。
予想問題1 一次救命処置
問題1
切れた電線に触れた状態で倒れている成人男性を発見した。救命処置として最も適切な行動はどれか。
- 男性の意識状態を確認する
- 男性を愛護的に抱え電線から引き離す
- 一般送配電事業者に通報する
- 電線を蹴り飛ばし男性から離す
正解1
3
解説1
一次救命処置についてはよく出題されていますが、現場で行うべき最初の行動について問われたことはなかったかと思います。ので、問うてみました。院内でこの最初の行動が問題になることはまずないため軽視されがちですが、院外では何よりも大切な行動です。故にAHA BLS講習では強く言われるところです。そのAHAのガイドラインでは最新の2025年版でも変わっておらず、最初に行うべきは「Verify scene safety」です。そして、切れた電線がそこにあるという状況は言うまでもなく安全ではなく、安全の確保が最優先となります。医療において大切なことの一つに、己の身の安全を確保することがありますからね。
よって、切れた電線に触れるのは論外、4は除外されます。*1
切れた電線にはさわらないでください
電線が切れて垂れ下がっているのを見つけたときは、お近くの 東京電力パワーグリッド へご連絡いただきますようお願い致します。
(東京電力ホールディングス「電線・電柱にご注意ください」より)
そして男性は感電していることが疑われますので、男性にも触れてはならず2も除外されます。
さて、1か3か。ここで考え方としては二通りを用意しました。一つは、事態を救命措置へと動かしていける方、つまりは安全を確保できる方を選ぶ考え方。この選択肢の中では3しかありません。もう一つは、1の意識状態の確認において男性に近づく、あるいは触れることを想定する考え方。残る選択肢は3になります。
普通119番するだろうよと思うかも知れませんが、今回、あえて「最も適切な」のよくない使い方をした試験問題ならではの問題にしてみました。当blog的にここで思い出したいのは第110回午前3、フロンを大気汚染物質としなかった問題です。この問題を機にフロン、冷媒として広く使われるフルオロカーボンへの理解を深めようと冷凍機械責任者試験に挑戦すること5年、やっと一種に合格した記念に引っ張り出してきましたよ。
問題2
労働基準法に照らし、適切なのはどれか。
- 制服に着替える時間は勤務時間とならない
- 休憩時間中にも内線電話を受ける
- 年次有給休暇の取得理由により取得可否を検討する
- 1勤務日あたり労働時間6時間の職場で休憩時間を3時間付与する
正解2
4
解説2
法規ですから、正解の通り。正解となった4を誤解している人がいるようですが、規定値は「少なくとも」です。どれだけ長い休憩時間を付与しても法的には問題ありません。
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
(e-Gov「労働基準法(令和7年6月1日 施行)」より)
今回は「実録! 看護師が知らない労基法」的な問題を作ってみました。
つい先日、昼休みに構内PHSの着信に気付かなかったら「ちゃんと出るようにしてください」的なことを他の看護師に言われてしまいました。代わりに対応した人がいるのでお手数おかけして済みませんと思うと同時に、労基法違反を犯していることに気付いているのだろうかと思ったのは言うまでもありません。数年前に国家試験を受けたはずの看護師すらそんなことを言うのですから、誠に遺憾であります。
労基法がいつから看護師国家試験の出題範囲となっているのかは存じませんが、現代の試験勉強においては必ず押さえるべき法律です。そもそも、労働と健康が密接に関わっていることは明らかで、労基法は「健康のために」「労働する」看護師にとって極めて重要な法律なのです。が、初歩的な内容についても知らない看護師が多い。重ね重ね遺憾であります。
看護師国家試験で「法令に照らし」という問題は見たことがないため、このまま出ることはないかなと思いますが。労基についてこの辺が問われてもよいのではという予想です。むしろいい加減問われるべきという予想と言った方がよいでしょうか。
過去の予想問題(109, 113)でも労基法について取り扱っていますので、あわせてどうぞ。
予想問題3 国民医療費
問題3
後発医薬品の使用が促進される理由として不適切なのはどれか。
- 医療の質の向上
- 患者負担の軽減
- 医療費の効率化
- 医療保険財政の改善
正解3
1
解説3
医療費の効率化により医療の質が向上することが見込まれなくもないのですが、これは試験ですからね。2, 3, 4は堅いので。なお、この選択肢は厚生労働省が示す使用促進理由から抜いています。質は「保ちつつ」となっています。
後発医薬品を普及させることは、医療の質を保ちつつ患者負担の軽減や医療費の効率化を図ることができ、医療保険財政の改善に資することから、2007(平成19)年に「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」、2013(平成25)年に「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を作成し、後発医薬品の数量シェアについて目標を定め、後発医薬品の使用を進めてきました。
(厚生労働省「後発医薬品(ジェネリック医薬品)及びバイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進について」より)
国民医療費については過去にも問われていますが、看護師が最も目にする医療費対策と言えば後発医薬品だろうと予想問題にしてみました。
ひよっこナース 対 生成AI
今年もAIに問題を解かせてみました。用いたのはOpenAI ChatGPT GPT-4.1とxAI Grok 4です。意外と解答が分かれました。GPT-4.1は全問正解だったのに対し、Grok 4は2問落としています。一種冷凍の過去問解かせたときはGrokの方が優秀でしたが、全知全能のものなどおらぬと言ったところでしょうか。
プロンプトは「以下の看護師国家試験の予想問題を解いてください。解説も付けてください。(以下、問題3問)」としました。
問題1
GPT-4.1
解答:3.一般送配電事業者に通報する
解説
切れた電線に触れて倒れている場合、感電の危険が継続している可能性が高いため、まずは自分自身の安全確保が最優先です。
- ① 意識確認 → 直接触れると二次被害の危険があるため不適切
- ② 抱えて引き離す → 感電する危険が高い
- ④ 電線を蹴る → 電流が流れていれば極めて危険
このような状況では、専門機関(一般送配電事業者や119番通報)へ連絡し、安全が確保されるまで近づかないことが原則です。
👉 救急対応では「まず自分の安全確保」が最優先です。
まさに模範解答ですね。「まず自分の安全確保」が徹底されています。
Grok 4
正解:1. 男性の意識状態を確認する
解説
感電事故現場では、まず自分の安全を確保した上で対応します。切れた電線(活線)の近くに近づく行為は非常に危険で、自分も感電する(二次災害・連鎖感電)可能性が高いです。
- 選択肢2:抱えて引き離すのは最も危険。直接触れると自分も感電し、手が離せなくなる(筋肉の強直収縮)ことがあり、救助者も倒れる典型的な失敗パターンです。
- 選択肢4:電線を蹴るのも危険。電線が跳ね返ったり、自分が感電したりするリスクがあります(一部の古い教育で「ゴム靴で蹴る」などの話はありますが、現実的には推奨されません)。
- 選択肢3:通報は必要ですが、最初の行動ではありません。目の前に倒れている人の対応が先です。
正しい初動は、
① 現場の安全確認(自分は電線に触れない位置にいるか)
② 119番通報(可能なら)
③ 意識・呼吸の確認(安全に近づけるなら)
その後、可能であれば電源遮断(ブレーカー・スイッチ)や絶縁物を用いた引き離しを行います。
したがって、最も適切な最初の行動は意識状態の確認です。
不正解。「まず自分の安全を確保」と解説していますが、安全を確保していません。
一種冷凍の試験勉強で使ったときの印象通り、しっかり調べてきている印象はあります。「一部の古い教育で~」なんてのは、まさにその通りですよね。
問題2
GPT-4.1
解答:4.1勤務日あたり労働時間6時間の職場で休憩時間を3時間付与する
解説
労働基準法第34条では休憩時間について以下のように定められています。
- 労働時間が6時間を超える場合 → 少なくとも45分
- 労働時間が8時間を超える場合 → 少なくとも1時間
休憩時間の上限規定はないため、6時間勤務で3時間の休憩を付与すること自体は違法ではありません(適切かどうかは別問題)。
他の選択肢の誤り:
制服更衣時間
→ 使用者の指示で行う場合は労働時間に該当(判例あり)
休憩時間中の内線対応
→ 休憩時間は「労働から完全に解放されていること」が原則。電話対応を義務付ければ休憩にならない。
有給休暇の取得理由で可否判断
→ 年休取得に理由は不要。理由で拒否するのは違法。
これまた模範解答。
Grok 4
- 制服に着替える時間は勤務時間とならない
- 休憩時間中にも内線電話を受ける
- 年次有給休暇の取得理由により取得可否を検討する
- 1勤務日あたり労働時間6時間の職場で休憩時間を3時間付与する
正解:なし(すべて不適切) → ただし出題意図から最も「適切に近い」or「誤りが少ない」ものを選ぶ場合、強いて言えば1が議論の余地があるが、正しくはすべて誤りです。問題文が「適切なのはどれか」なので、最も誤りが少ないor文脈で1を選ぶケースもありますが、厳密には以下のようにすべて不適切です。
解説(労働基準法の原則)
- 制服に着替える時間
使用者の指揮命令下にある場合(業務に必要な着替えで、着替えないと業務できない場合)は労働時間に含まれます(最高裁判例:三菱重工長崎造船所事件など)。特に看護師のように制服着用が義務で、職場内で着替える場合は労働時間とされることが多いです。→ 不適切(勤務時間になる)
- 休憩時間中にも内線電話を受ける
休憩時間は「労働から完全に解放される時間」です(労基法34条)。電話対応を強いるのは休憩の自由利用原則に反します。→ 不適切
- 年次有給休暇の取得理由により取得可否を検討する
年次有給休暇は理由を問わず取得できる権利です(労基法39条)。理由を聞いて拒否することは違法です(時季変更権は別)。→ 不適切
- 1勤務日あたり労働時間6時間の職場で休憩時間を3時間付与する
労基法34条では「労働時間が6時間を超える場合、少なくとも45分」の休憩を定めていますが、上限は定めていません。しかし「3時間」は明らかに過剰で、実質的に労働意欲を削ぐ・実働が極端に短くなるため、通常の運用では不適切とされます(休憩は労働時間の途中に与えるもの)。→ 不適切
→ すべて不適切ですが、国家試験では「1」が正解扱いされる年もあり(着替えが労働時間に含まれないケースを想定)、文脈次第です。現実の看護現場では「着替え時間は労働時間に含まれる」のが通説です。
不正解。「1」が正解にされてたまるかっての! 「労働時間とされることが多いです」ではなく、業務上の命令によるのだから労働時間です。まあ実際には言わずもがなであり、不適切な例がウェブにも山ほどあり、その辺を学習したり調べたりしている影響なのかも知れません。
正解である4に対する解説が、私が受験生を惑わそうとしたことを見事に言い当ててくれているのは凄い。でもそういう問題ではありません。
問題3
GPT-4.1
解答:1.医療の質の向上
解説
後発医薬品(ジェネリック医薬品)は、
ため、
- ② 患者負担の軽減
- ③ 医療費の効率化
- ④ 医療保険財政の改善
これらが促進理由です。
一方、医療の質の向上を目的としているわけではありません。
(質は同等とされるが、「向上」が目的ではない)
最後もしっかり模範解答で決めました。
Grok 4
正解:1. 医療の質の向上
解説
後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進の主な目的は国の医療費削減政策です。
- 患者負担の軽減 → 自己負担額が安くなるため適切
- 医療費の効率化 → 薬剤費全体が下がるため適切
- 医療保険財政の改善 → 国の保険財政負担軽減が最大の目的のため適切
一方、1. 医療の質の向上
後発医薬品は先発医薬品と生物学的同等性が確認されており、効果・安全性は同等とされていますが、「質が向上する」とは通常言われません。むしろ「同等である」ことが前提で、品質向上を目的とした促進ではありません(品質が劣るわけではないが、向上させるためのものではない)。
したがって「不適切」な理由です。
国家試験では「医療の質の向上」はジェネリック推進の理由として挙げられないのが定番です。
こちらも模範解答ですね。後発医薬品に関する問題は定番ではありませんから、最後の解説は余計かと思いますが。
いつものおまけ
マークシート試験ではちょっと高級な鉛筆がおすすめ。軽くなめらかに太い線が描けます。結果として早く試験を終えられる、つまり、集中力が高いままに問題を解ける可能性が高まるのでこの道具選びは重要。
鉛筆3本と消しゴム1個、マークシートなら私もこの布陣です。
製品出荷状態では鉛筆がしっかり削られていますが、前日にでも、当日試験会場ででも、サラサラと線を書いて丸めるべし。マークする部分は結構面積ありますから。
今回の予想問題記事はここまでです。受験生のみなさん、試験終了まで何卒ご安全に。
予想問題が当たったら誰か買って。昨年は給料に未払いがあるような保健室の先生をしていたので買えませんでした。今年こそ買いたいけど、去年滞ったあれこれの更新にだいぶお金使ってるからなぁ。
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