夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

最も多い業務上疾病は問われない

あけましておめでとうございます。1本目はみんな大好き国家試験ネタ。

看護師国家試験における鉄板必修問題の一つに「最も多い業務上疾病は何か」というものがあります。正解は「負傷に起因する疾病」もしくはその内数である「腰痛(災害性腰痛)」だったのですが。

圧倒的じゃないか、COVID-19は

業務上疾病発生状況

データソースは政府統計「業務上疾病発生状況」。労働基準法 第75条、労働基準法施行規則 第35条に基づき、休業4日以上となった業務上疾病の発生状況です。

様変わりもいいところである。もはや圧倒的大差で「病原体による疾病」、その内数である「新型コロナウイルスり患によるもの」が最多です。

業務上疾病を問う問題は直近で105回(2015年度), 99回(2009年度)と出題されていて、問題集には必ず出てくる問題でもあります。しかしその実数を示した表や推移を示したグラフを見たことがある看護学生はいないのでは*1。なぜならば圧倒的に負傷で、圧倒的に腰痛という状況が続いていたから。全く変わることなく、続いていたから。

COVID-19の影響を受ける直前の年、2019年の統計を見てみると、業務上疾病8,310件のうち72%の6,015件が負傷、62%の5,132件が腰痛です。他の疾病とは文字通り桁が違う状況で、同年は「異常温度条件による疾病」が同じ4桁で食い下がるものの1,039件と全く及びません。こんな状況ですから腰痛とだけ覚えるのが当然になっていました。

慣例によれば今年2024年の国家試験で問われるのは2021年統計。最も多い業務上疾病は「新型コロナウイルスり患によるもの」になるのですね。

ただ、私は問われないと考えています。10年後はわかりませんが、現時点ではあくまで短期的な変動と見るべき事柄。統計についての必修問題は長期の傾向から日本の行き先の理解度を測るためのものでは。直近の変化であった死因における老衰を問う問題が出されたのは、今後長期にわたって老衰が増えて行くであろうとの流れからですよね。COVID-19が長期にわたって業務上疾病の主役たり得るか。そうではないと思うんですがねぇ。

よく見るとおもしろい業務上疾病発生状況

私もご多分に漏れず、業務上疾病発生状況の統計値をまじまじと見たことなどありませんでした。しかし今回この記事を書くために見てみると、結構おもしろいんですよ。

  • 腰痛は漸増傾向。2022年度と10年前を比べると約3割増
  • 腰痛が最も多い業種は保健衛生業、全体の約3割
  • 新型コロナウイルスり患によるものが最も多い業種は保健衛生業(割合はまだバラバラ)
    • 2019年以前の病原体による疾病からして最も多い業種は保健衛生業、全体の5~6割

腰痛は貨物取扱業が多いのかなと思っていたんですが。まあ、いわゆる労災として扱われ、4日間以上休業している数ですからね。腰痛になって労災です休みますが通る業種なのかってのもあるのでしょう。保健衛生業の腰痛なんて日頃の運動不足によるところだろうと突っ込みたい例が多数あるとかないとか。ホワイトであるなぁ。


看護学生なら教科書として持っているけど、試験を通すのに不要だからまず読まないよね。興味のあるところを眺めると結構おもしろいんだけど。

おすすめ関連記事

nsns.hatenablog.com nsns.hatenablog.com nsns.hatenablog.com

*1:よほど熱心な学生なら『国民衛生の動向』で実数を見ているかも知れません。