夜勤病棟の女神様(仮)

てっぺんの街、ひよっこナースの日常

自粛が脅かす医療、経済なくして医療なし

COVID-19が勢いを増し続ける中、自称人道派のみなさまは医療か経済かと問い、自明とばかりに医療優先、経済活動の自粛を声高に訴えてらっしゃいます。しかしそれは本当に医療を守る、人の命を救う行為なのでしょうか。

あくまで例としてですが、中国の未開の奥地と、日本の東京と、どちらの方が医療が充実していると思いますか。あなたが病気になりどちらかで治療を受けられるとしたら、どちらを選びますか。日本の東京と答える人が大半でしょう。もう少し話を緩くして、稚内と東京でも東京ですよね。では、なぜ東京なのか。それは東京に強い経済があるからです。卵か鶏かではありますが、人と金があるところにこそ充実した医療が存在しうるのです。

冒頭の話に戻りますと、経済活動の自粛は医療を弱化させることに他なりません。簡単な話なのです。と言うと、自称人道派のみなさまは「今は医療」みたいなことをおっしゃいますが。すでに、自粛が医療の首を絞めている一例を今回は紹介します。

宗谷線が運ぶ医療資源

旭川から稚内へと向かう鉄道の最終便、特急サロベツ3号に乗っていると時々こんな光景を見ることがあります。

特急サロベツ3号 血液製剤輸送中 1

わかりにくいですかね。では、近くに寄りまして。

特急サロベツ3号 血液製剤輸送中 2

血小板、つまりは血小板製剤、輸血用血液製剤です。

稚内で使用される血液製剤旭川から供給を受けており、その輸送方法の一つはJR北海道の鉄道です。旭川2006発、稚内23:47着のサロベツ3号に血液製剤が乗っていることは、私が知る限りそう珍しくもありません。

このサロベツ3号、肝心の人はあまり乗っていないんですよね。COVID-19なんて現れる前からガラガラ。そこにCOVID-19由来の移動自粛が襲いました。JR北海道は「新型コロナウイルス感染症の影響によりご利用が減少していることから」と断り*1、2020年6月14日から同30日までサロベツ3号を運休しました。その間、普段ならサロベツ3号で届けられる血液は翌日に届けることとなったのです。緊急の場合には別の方法でサロベツ3号と同等の輸送も提供可能だったようですが、輸血製剤の供給体制が弱化したことは事実。自粛は実際に、弱い医療をさらに弱くしているのです。

なお、特急サロベツ3号は驚いたことに7月1日より再開しましたが、来春のダイヤ改正での減便が決まり*2、4,5,10,11月の火水木曜は運休となります。COVID-19がなくとも宗谷線は赤字路線であり、余程のことがなければ、それこそ経済が急上昇でもしない限りはサロベツ3号が完全に戻ることはないでしょう。つまり、輸血製剤の輸送手段は減ったまま、自粛が弱らせた医療が回復することはありません。

都会にいてはわからぬ田舎の苦境

昨今一般にも使われているらしいカタカナ「レジリエント」ってヤツですよ。そもそもが盤石な経済を有する都会であれば「今は医療」が通じます。多少の自粛を経ても、戻る力があるんですよね。それこそがまさに潤沢な人と金、強い経済のなせる技。一方で脆弱な経済でなんとか成り立っている田舎に「今は」は通じない。

自分はぬくぬくと潤沢な人と金に守られながら、自粛自粛と弱いものに刃を突きつける。言葉にするとずいぶん非道な行いですが、ぬくぬく側にいたら気付きませんよね。私も田舎に来なかったら同じことをしていたかも知れません。でも、私は今、田舎にいます。故に、刃を突きつけられている現状をお伝えしました。

稚内殺人旅情 (光文社文庫)

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かにの密漁密輸で潤ってた頃の稚内が舞台。稚内と小樽がわかるとおもしろい話だった。地理的な描写は今と変わらない。

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