第107回看護師国家試験を味わうシリーズ。日看学協の物言いが適当なのか、その内容を検討する2回目。久しぶりですね。108回受験生がそろそろ本格的に勉強し始めるであろうこの時期、108回の一喜一憂に間に合うよう進めていきましょう。
現場でもしばしば起こる実践的な問題
Aちゃん(3歳、女児)は、父親(会社員)と母親(会社員)との3人暮らし。Aちゃんは、生後11か月のときに、卵による食物アレルギーと診断され、医師の指示で卵の除去食療法をしていた。保育所では卵を除去した給食が提供されている。Aちゃんは保育所の給食の時間に、隣の席の園児の卵が入ったおかずを摂取し、蕁麻疹と咳嗽が出現した。保育士に連れられて救急外来を受診した。Aちゃんは保育士に抱っこされ、「かゆい」と訴えており、咳込みがみられた。
受診時に観察する項目で優先度が高いのはどれか。
- 体温
- 心拍数
- 腸蠕動音
- 蕁麻疹の範囲
(第107回看護師国家試験(午前100)より)
厚労省の定めた正答は2。
念のため、今の私が現場でどうするかを考えましたが、やはり2です。副次的に1も観察してしまいますが。
さて、日看学協は何が不適切だと物言いをつけたのでしょうか。
- 最も必要な選択肢がないのでは? 卵アレルギーであることは分かっていることなので 蕁麻疹が出現するのは当然であり、むしろアナフィラキシーショックの状況を考慮すべきと考えられる。その場合は、「呼吸困難」の状態の観察が重要と考えるが、その選択肢がない。示された選択肢からでは2と4で迷わせたと言える。
(日本看護学校協議会『第104回保健師、第101回助産師及び第107回看護師国家試験提出要望書』より)
なるほど。試験慣れしていないと申しますか、試験を舐めていると申しますか。
アナフィラキシーショックを警戒する状況なのは間違いないでしょう。厚労省もそこを意識したはず。重要なのは「ショック」とは何か。
生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果,重要臓器の血流が維持できなくなり,細胞の代謝障害や臓器障害が起こり,生命の危機にいたる急性の症候群。
(ショック 日本救急医学会・医学用語解説集 より)
ザックリ言えば「血流が維持できなくなる」ことです。この時点で、厚労省の定めた正答が適当であることがおわかりいただけると思います。出題意図は、多分、この程度。
しかし日看学協は深読みして、救急対応におけるいわゆるABCDEアプローチを意識して物言いをつけたものと思われます。目の付け所はよかったのですが、試験は問題文を読まなくちゃいけません。この問題、A = 気道, B = 呼吸の確認は終わってるんですよね。「かゆい」と訴えている、言葉を発している。これは気道開通しており呼吸できていることの証です。しかも園児が「かゆい」と言えるんです。呼吸困難がないとまでは言えませんが、あったとして度合いは低いでしょう。
問題の状況なら、私はこのように対応します。
- 全身を見る、色、表情、冷汗、活気(ABCD) → この問題では不明
- 声をかけ、反応を見る(ABD)→ 「かゆい」と訴える = 気道と呼吸はとりあえず悪くない、意識も悪くない
- 頸動脈、橈骨動脈の脈を触れる(CE) → 心拍数と血圧がわかる。同時に体温もわかる
ここで選択肢を見直しますと、やはり「心拍数」となります。え? 「蕁麻疹の範囲」はどうかって? それ、急ぐの?
余談ですが、橈骨動脈の脈が触れないとヤバいなーと思います。数字で言うと収縮期血圧が80 mmHgを切っている目安*1だそうです。迷わず応援を呼びます。
午前100に対する物言いは不適当、日看学協に黒星
ここまで2戦で日看学協は1勝1敗。
今回の問題は看護師国家試験の先で、新人看護師として実際に遭遇するであろう内容です。教育する立場なんだからもう少し考えてくれよと思わずにはいられません。
107回 問題番号 | 日看学協 |
---|---|
午前18 | ○ |
午前100 | ● |
午後22 | |
午後24 | |
午後65 | |
午後105 | |
午後114 |
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*1:成人において。小児だとどうなんだろう。