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第107回看護師国家試験を味わう(5) 八百長なんて言わないで(午後22)

第107回看護師国家試験を味わうシリーズ。日看学協の物言いが適当なのか、その内容を検討する3回目。昨年の今頃は冬コミでしたよ。今年は仕事納めもまだなので、明日までここを更新する予定。

だから言うよ、キミは合格できるって

午後22は日看学協から物言いがついただけではなく、厚労省も誤りを認めている問題です。それならあえてここで検証しなくてもとなりそうなものですが、話はそう単純じゃない。この問題、合格率調整用の「正誤どちらにでもできる問題」なのではないかと私は考えています。

静脈血採血の方法で正しいのはどれか

  1. 駆血帯を巻いている時間は2分以内とする。
  2. 針の刃面を下に向けて血管内に刺入する。
  3. 静脈内に針を刺入したら強く内筒を引く。
  4. 針を抜いてから1分程度の圧迫止血を行う。

(第107回看護師国家試験(午後22)より)

私の解答は1でしたし、看護師となった今解答しても1。迷いはありませんが、試験問題で際どい数字を持ってきたなという気はします。

さて、日看学協の物言いはこの通り。

  • 正答がない。「1」が誤っているため、「4」を選んだ学生が多い。また、臨地実習場面において実際の採血後の看護師は数分の圧迫止血を実施するよりも、止血用パッド絆創膏や酒精綿で圧迫貼付などを実施して見せていることが多い現状から「4」を選ぶ可能性が高い。

①社団法人日本臨床衛生検査技師会静脈採血推奨法では、以下のように記されている。

駆血帯は1分以上巻いたままにしない様に注意する。<血液凝固が起こり、血液が組織に浸潤し血腫が形成されることもある。血液濃縮で蛋白濃度が高値になる。血液細胞数値が間違って高くなることもある。>

*通常2~3分間圧迫止血すると良い。

②各社の看護技術系テキストでは、以下のように記されている。

*駆血時間は「1分以内」*圧迫止血は「5分程度」

(日本看護学校協議会『第104回保健師、第101回助産師及び第107回看護師国家試験提出要望書』より)

対して厚労省の見解はなかなか巧妙です。

採点上の取扱い

 採点対象から除外する。

理由

 選択肢が不適切であるため。

厚生労働省第107回看護師国家試験における採点除外等の扱いをした問題について』より)

何が誤りかを言わない、お役所仕事の真骨頂。

争点は「駆血時間は2分以内で正しいか」です。日看学協もこの1点に絞って物言いをつければよいものを、なぜ圧迫止血時間を出してしまったのでしょうか。方法によらず一定時間の圧迫止血が必要なのは彼らも認めるところで、見通しの悪い議論になるだけ。

閑話休題。駆血時間ですが、結論から言えば1分でも2分でもどうぞって感じです。3分としたところで客観的で決定的な正誤を示すことは難しいのでは。日看学協は日本臨床衛生検査技師会の教科書を持ってきましたので、私はWHOの教科書を持ってきてみましょう。

Remove the tourniquet when the blood flow is established or after 2 minutes, whichever comes first.

World Health OrganizationPractical guidance on venepuncture for blood donation』より)

WHOは2分です。

駆血時間は、長すぎると採取する血液成分に影響がある、また、患者の血液うっ滞が生じる可能性があるため、適当に短くと言われます。前者については具体的な数値での研究も見つかりましたが、1分なのか2分なのかは明確に言えるほどのことではないようです。

よって、試験問題としての午後22に対する正答は明らかに1です。それでも、厚労省が誤りとした理由、そもそも物言いがつきそうな問題を放り込んできた理由。合格率調整のためではないかと私は見ています。厚労省が試験問題作成のために集めた精鋭たちと言えども、受験生が解答する前の試験問題を作るだけでピタリと合格率90%に合わせることは難しい。ではどうやって合格率を安定させるのか、試験実施後に正誤を変更できる問題を作ればいいわけです。その好例がこの午後22だと見ています。

受験生は試験を終えると、様々な情報に基づき自己採点を行い、例年の合格基準点を参考に一喜一憂します。しかし、合格基準点が動く試験ですからね。それなりにできていればそれなりに安心したらいいんです。

ちなみに私の通っていた看護学校では諸説あることも踏まえ2分と教えられていたと記憶します。採血実技の演習があった学校なので、理由は「1分でできるならどうぞ。できないでしょ? 2分で」と実践的なものでした。現在の私は、だいたいは1, 2分でやるけど、どうにもならなければ5分ぐらいもあります。

午後22に対する物言いは不適当、日看学協に黒星

厚労省も誤りとした問題に変な話ではありますが、物言いが適当かどうかって観点では、不適当だと私は考えます。たまたま彼らの物言いが、厚労省の合格率調整策と一致したってだけでは。このページではあくまで物言いの適不適を検討するということで、不適当としました。

ここまで3戦、1勝2敗。

107回 問題番号 日看学協
午前18
午前100
午後22
午後24
午後65
午後105
午後114

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