夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

第107回看護師国家試験、助産師撤廃への布石か

第107回看護師国家試験、お疲れさまでした。疲れました。2週連続の国家試験はさすがに疲れました。自分の解答をざっと採点してみますと必修、一般ともに8割強と言ったところで、マークシートの記入に大きな問題がなければパスできそうです。

Getting ready for an examination for registered nurse.

独自予想問題は大ハズレ。範囲としては1問、近いところがありましたが。その辺を含め、第107回看護師国家試験を振り返ってみましょう。

「闘えなかった」第107回看護師国家試験

あちこちから難しいという声は聞こえてきますが、終わってみれば点数は取れたというのが今回、第107回看護師国家試験だったようです。周囲と話した感じでは。

  • 過去問で見たことのない単語がちょこちょこ出てきた
  • 記憶しているか否かで決まる問題が多く、考える問題は少なかった
  • レビューブック*1丸暗記組が高得点だった一方、思考力に重きを置く連中は輝くところなし

看護学生の生活に当てはめると「講義や実習なんてどうでもいい、レビューブックを暗記しよう」という最悪の内容です。が、仕方なかったのかなというのが私の理解です。厚生労働省は前回、第106回を「考える試験」にしたのですが、試験問題の出来の悪さに看護学校協議会から苦言を呈され240問中8問もの不適切問題を出すに至りました。看護師になるならば当然わかっているべきと要求正答率を8割に引き上げている「必修」範囲50問中でも2問の不適切を出す悲惨なことに。そんな昨年を受けて、今年はクリアカットな問題作成に努めたものと推測されます。となれば思考力より知識を問うこととなり、それでも不正解を作るためには「見たことのない」を出すしかなかったのでしょう。

予想する各社とも今年はもっと考えさせてくると見ていたようですが、大ハズレ。買いかぶりましたね。出題する側は失敗と闘ってまで理想を追い求めなかったのです。

昨今の大学受験における失敗と重なるところがあります。考えさせる試験を作るのには慣れてないと言ったところか。

労働法でまさかの惨敗

予想問題3問のうち、最も自信があり、いい線いくだろうと考えていたのは労働法、労働基準法について。

(予想問題)

労働基準法で原則として定められているのはどれか。

  1. 年次有給休暇の付与日数は20日以上とする。
  2. 取得されなかった年次有給休暇は事業者が買い取り、手当として給付することができる。
  3. 事業者は労働者の年次有給休暇の取得理由により、年次有給休暇の付与を決定することはできない。
  4. 年次有給休暇を時間単位で付与することはできない。

第107回看護師国家試験予想問題3問(看護学生(17)編) より)

目の付け所は悪くなかった。最も近い問題はワークライフバランスの問題でした。

(出題された問題)

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章が策定された年はどれか。

  1. 1947
  2. 1967
  3. 1987
  4. 2007

(第107回看護師国家試験(午後4)より)

ワークライフバランスについては第107回の出題基準で加わった部分で、問題としても初出題。しかし、惨敗と評する理由はこの出題内容です。こんな表層的な部分が問われるとは。全く変わってないじゃないか。

衝撃の母性領域、助産師撤廃への布石か

斜め上から楽しむのが得意なこのblogで、最も注目したいのは午前117の問題。

 Aさんは、午後2時に子宮口が4cmまで開大し、破水した。このときの胎児心拍数陣痛図(別冊No.8)を別に示す。

 胎児心拍陣痛図の情報で正しいのはどれか。

  1. 陣痛間欠4分
  2. 陣痛発作10秒
  3. 母胎脈拍数50/分
  4. 胎児心拍数基線150~160bpm

(第107回看護師国家試験(午前117)より)

母性領域*2の問題。図は省略しますが問題としての難度は最低と言ってよく、母性は捨てている私ですら楽々解ける問題です。

しかしこいつを見た瞬間、衝撃を受けました。看護師が臨床で読むことのない、胎児心拍陣痛図に関する問題だったからです。これを読むのは助産師なのです。

助産師が読む胎児心拍陣痛図を、看護師国家試験で問うた厚生労働省の意図は何なのか。遺産、いよいよ負の遺産となりつつある助産師を撤廃する布石であると私は受け取りました。

助産師はかつて出産対応の主役であった流れから、今も正常分娩*3に関する行為を認められています。これが正常分娩が医行為(医師のみが行える絶対的医行為)ではなく、医療保険の対象とならない根本です。

しかし技術*4の進んだ現代、生殖補助医療の末に正常分娩という流れを辿ることは増える一方です。このような現代に対し、正常分娩は医療の範囲外という話は少々立て付けが悪くなっているのでは。

加えて現代の出産対応の主役は病院や診療所であり、その中に医師と助産師がいる状況。助産師の開業権は新たな開業という観点において不要と言えましょう。つまり、助産師を分娩という特定行為に対応可能な看護師に移行しても問題なく収まるわけです。さらに助産師を看護師に移行して助産師を撤廃すれば、上述の医行為の範囲を改め、周産期医療を現代にあった形で繋がりあるものにできます。

看護師教育の一つの山、看護師国家試験において胎児心拍陣痛図を問うたことは、今後は看護師が臨床で読むことになるという厚生労働省からのメッセージ。私はそう読みながら、問題を解いていました。

合否発表は3月26日

ざっと振り返ってみた第107回看護師国家試験。その合否発表は3月26日です。私の合否については改めて、お知らせいたします。それまでは引っ越しの話でも書こうかしらん。

看護師・看護学生のためのレビューブック 2019

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*1:重要な用語とその簡素な解説がひたすら書かれている、多くの看護学生が愛読する国家試験対策の参考書。私は持っていませんし、読むなと言っていましたが。

*2:診療科で言えば産科。

*3:いわゆる自然分娩と同義。

*4:技術が先か、高齢出産が先か。