夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

第108回看護師国家試験を味わう(7) 飲水はペットボトル管理がおすすめ(午後99)

第108回看護師国家試験を味わう連載。しれっと母性領域をすっ飛ばして続けます。

秀栄社の少し手前にあるアラビア食材店(?)前 並ぶ水ボトル

教科書を置いて現場へ行くのはずるくないか

Aさん(82歳、女性)は、Alzheimer<アルツハイマー>型認知症で、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準IIb、要介護1である。息子と2人暮らしであったが、1年前から認知症対応型共同生活介護<認知症高齢者グループホーム>に入所している。 息子は仕事が忙しいため、2か月に1回面会に来所する。Aさんは2日前から活気がなくなり、食事量も減少した。本日、発熱や下痢を主訴に介護職員に付き添われて外来を受診した。外来の看護師が介護職員に普段の健康状態の把握の方法を尋ねると、1日1回の体温と血圧の測定、月1回の体重測定、レクリエーションへの参加の様子を確認しているという回答を得た。Aさんは、看護師の簡単な質問に答えることができる。

身体所見:体温37.0℃、呼吸数24/分、脈拍72/分、血圧132/82mmHg、呼吸音は異常なし。水様便が3回/日、濃縮尿、手指の冷感あり、顔色は不良。皮膚の乾燥あり。体重45.8kg。

検査所見:Ht40%、白血球9,800/μL、尿素窒素 25mg/dL、Na150mEq/L、尿比重1.030。

問題99

入院後3日。Aさんは開始された食事を全量摂取し、活気が出てきた。Aさんは自ら水分を摂ることはなかったが、看護師がお茶を勧めると、少量ずつ摂取している。体重47kg。Aさんの尿の性状は淡黄色で尿臭はなく、血液検査データは改善して基準値となったため、点滴静脈内注射が中止となり、退院が決まった。

Aさんが外来受診時と同じ状態を起こさないために、看護師が介護職員に伝える予防策で適切なのはどれか。

  1. 室温は30℃に保つ。
  2. 8g/日の食塩を摂取する。
  3. カフェインを含む水分を摂取する。
  4. 熱の放散を抑制する衣類を選択する。
  5. 食事を含めて1,300mL/日の水分を摂取する。

(第108回看護師国家試験(午後99)より)

渋い問題だな。

まず、Aさんは脱水。どこからこれを導くかですが、看護学生的には活気の低下と下痢あたりから判断するか。問題文の入院後も「自ら水分を摂ることはなかったが」は大いに使えますね。体内の血液量、つまりは水分量に影響を受ける血圧が132/82と良好*1なので軽症なのかな。検査値を見ればもう少しという話はありますが、そもそも診断は看護師の仕事ではないわけで、検査値を見てどうこうを求められるのは違うだろうと思う今日この頃です。

皮膚の乾燥から考える学生も多そうですが、皮膚がしっとりしている82歳なんてそうそういないからねぇ。後述の通り、この問題において「いないからねぇ」の感覚は重要ですから、読み流していいところかと思われます。ツルゴール*2低下と入れてくるのが定番の気がしたのですが、今回はありません。

さて、脱水となると選択肢5が正解かな。とすんなりいったらそれでよし。ただ、数字を警戒していると逆に疑ってしまうのがこの問題。日看学協が「正答がない」と物言いをつけたのはそこ。

2.日本人の食事摂取基準(2015年版)の Na目標量は70 歳以上女性1日7gであり、5.食事を含めた水分摂取は脱水予防の視点では1,300mL/日では少ない。1,400~2,000mL(Aテキスト)、1日水分量は体重kgあたり35mL(Bテキスト)でいずれからみても少ない。

(日本看護学校協議会「第102回助産師及び第108回看護師国家試験の実施に関する要望書」より)

ですよねぇ。望ましい水分摂取量はザックリと言って1.5 Lから2 L。ペットボトル1本分と覚えている学生も多いんじゃないでしょうか。1,300 mlはちょっと少ない。ここをどう評価するか。

経験で言えば、高齢者は1,300 mlも水を飲んでいません。そしてこの問題でも、水を飲まない人に対してどこを目標に指導するのかなと考えると、1,300 ml/dayでもいいかな、むしろ現実的かなと。

コップ1杯 200 ml × 3食 ≒ 600 mlも飲まない人が結構いるんだ。全部飲んだとしても、味噌汁1杯 150 ml × 3食 ≒ 450 mlと併せて、1,050 ml。1,300 mlという指導が改善になりそうなのは現実です。が、急にそんな現場の、臨床の話を出すのはずるくないか、とは思いますよね。

高齢者の飲水量についての調査とかないのかなーと探したら、あるにはあった*3のですが、「要支援・要介護」のの高齢者ですら1,256 ± 558 ml、対して要支援・要介護でない高齢者は1,892 ± 1157 mlとのことで、平均値で言えばかなり飲んでるんですよね。感覚、卑近な例と合わないのはなぜなのか。

余談ですが、感覚、卑近な例では若い女性も水を飲みませんね。結果、膀胱炎になることも多くて、老若男女問わず、十分な水を飲む習慣は大切なようです。ペットボトルで管理すると1日分飲めたかがわかりやすいですね。

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日勤の日の私はこれで管理してる。

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第108回看護師国家試験を味わう(6) 最期も金目でしょ(午前72)

第108回看護師国家試験を味わう連載。引き続き日看学協から物言いがついた問題を見ていきましょう。

金持ちかも知れないけどね

Aさん(77歳、男性)は、脳梗塞による左片麻痺があり、右膝の痛みにより立位が困難である。端坐位で殿部をわずかに持ち上げることはできる。妻(77歳)は小柄で、体格差のある夫の移乗の介助に負担を感じている。

Aさんのベッドから車椅子への移乗の際、妻の介護負担を軽減する福祉用具で適切なのはどれか。

  1. 歩行器
  2. ベッド柵
  3. 電動介助リフト
  4. トランスファーボード

(第108回看護師国家試験(午前72)より)

3か4か、これは難しい。私は4を選んで正解したらしいのですが、なぜ4にしたのか覚えていません。メディックメディア「ネコナースの合格予報」では2019年3月5日22時時点で3が43%、4が46%で、3を正解と提示していました。日看学協は「正答が2つ」と物言い*1をつけましたが、 厚労省の出した正解は4。

注目すべきは「端座位で臀部を僅かに持ち上げることはできる」で、持ち上げたところで何かやったらいいんだなと、トランスファーボード*2でも入れてやるかと選択肢4になりましょうか。それでもやはり、持ち上げたところでリフトのスリング*3を入れてやってもいいわけで、選択肢3を消去できません。持てる能力を活用しADL低下を予防する観点からリフトは不適とする解説もありますが、端座位が安定し上肢機能が十分な人向けのスリングが存在することを踏まえれば解説は不十分で、やはり選択肢3を消せません。

視野を広げて。介護では、特に老老介護では、金銭負担を軽くすることから考えましょう。介護に金をじゃぶじゃぶ突っ込める人なんてそうそういないのは誰にでも想像できますし、実際でもあります。この観点なら最適解は選択肢4です。電動介助リフトはレンタルで月額1~2万円(1割負担で1,000~2,000円)。トランスファーボードなら購入しても1~2万円、Amazonでも買えちゃいます。

ここまで考えずとも「電動介助リフトは大げさでは」と解けばよいのですが。介護の問題が出てきたときに「最後は金目でしょ」と言えるのは有効かと思います。

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*1:「77歳妻は小柄である」との説明文があるため、4.トランスファーボードが正答と考えられるが、3.電動介護リフトについても負担の軽減に繋がると解答しうる。」といまいちな内容なのが残念でした。

*2:表面の滑りがよい板。ベッドと車椅子の間に渡して患者を滑らす。物はこの辺を参照。

*3:身体を保持する吊り椅子部分。この辺を参照。

第108回看護師国家試験を味わう(5) 試験戦術が先々役立つ?(午前49)

第108回看護師国家試験を味わう連載。国家試験も迫ってきておりますからちゃっちゃと捌いていきますよ。

医術ではない、戦術だ

Crohn <クローン> 病の患者の食事指導で適切なのはどれか。

  1. 「食物繊維を多く含む食事にしましょう」
  2. 蛋白質の多い食事にしましょう」
  3. 「脂肪分の多い食事にしましょう」
  4. 「炭水化物を控えましょう」

(第108回看護師国家試験(午前49)より)

真っ向勝負を挑むには分が悪い問題です。クローン病って指定難病だよ? 患者数は人口の0.1%以下と少数で、効果的な治療方法が未確立で根治不可能な病気。そんなものの指導をすらすら言えと? 無理無理。クローン病は国家試験問題にちょこちょこ出てくるのですが、戦略によっては捨ててもよいでしょう。深く理解しておくべき疾患とは全く思いません。覚えたとして若年層が多く、消化管の炎症、飛び石病変が特徴ってあたりでしょうか。

国内で採用されているらしい難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班)による『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針』によれば「成分栄養剤(エレンタール)あるいは消化態栄養剤(ツインライン等)」です。そこまででもないって事例には「病状と患者の受容性やQOLに配慮して適宜投与量の増減や経口法の併用、調理の工夫などを行っても良い」そうですが、正答がスッと導出できるような記載ではない。そこで成分栄養剤とはなんぞやから導いてみましょう。エレンタールの組成アミノ酸34%、デキストリン79.3%、大豆油0.6%。炭水化物のデキストリンが最も多く、選択肢4は誤り。脂肪分の大豆油は相対的にかなり少なく、選択肢2は誤り。タンパク質が分解した姿のアミノ酸は3割も含まれ、選択肢2が正解かな。ただ、選択されているのが成分栄養剤でありエレンタールの成分がアミノ酸であることからわかるよう、「タンパク質」はよろしくないことがあるため日看学協の物言いになっています。

看護師国家試験でここまで考えて解く必要はありません。試験なのですから、試験に対する戦術を駆使すればよいだけです。

  • 病変は休める(傷には触れない!)
  • 物理的修復にはタンパク質(プロテイン!)
  • 炭水化物はだいたい問題ない(実習で主食抜きの病院食はまず見ないでしょ?)

食事療法の問題に対してはだいたいこれで。括弧書きにした通り、看護学生的にこの3つは想像しやすいかと思いますしね。今回の問題について見れば、3つをバランスよく満たせるのは選択肢2だけです。

実は試験が問いたいのも戦術なのでは

内科病棟にいてよく見る消化器疾患と言うと、胆管炎や総胆管結石でしょうか。イレウスも多いですね。一方で、クローン病はこれまで2年間で1例か2例です。そもそも指定難病ですから。この状況下で試験で問われているのは本当にクローン病についてなのでしょうか。

意外と、試験の戦術、その先にあると考えられる看護の戦術が問われているのかも知れません。世の中は知らないことだらけ。知らない疾患が出てきても慌てることなかれ。

クローン病・潰瘍性大腸炎の毎日おいしいごはん

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ほー、こんな本もあるのね。

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第108回看護師国家試験を味わう(4) 今もそこにある結核(午前33)

第108回看護師国家試験を味わう連載。今回は日看学協からの物言いはなかったものの、厚労省が「採点除外等」とした問題。

病気と政策の狭間で

平成27年(2015年)の日本の結核対策で増加が問題とされているのはどれか。

  1. 新登録結核患者数
  2. 菌喀痰塗抹陽性の肺結核患者数
  3. 外国生まれの新登録結核患者数
  4. 新登録結核患者における20歳代の割合

(第108回看護師国家試験(午前33)より)

国家試験対策における結核は感染経路(飛沫核感染、空気感染)とツベルクリン反応におけるブースター現象ぐらいでしょうか。疫学から、それも現在の事情を問うてくるとは予想外。そんな問題ですから作る方も不慣れだったのか、ついやってしまったのかも知れません。

厚労省が「設問が不明確で複数の選択肢が正解と考えられるため」として正答を3もしくは4としました。

平成27年(2015年)の日本の結核対策」とまで書かれているので、そのものがあるのかと探したのですが見つかりません。では統計から解いていきましょう。選択肢1, 2はザックリ言って「最近、結核患者は増えてるの?」という問いで、答えは「いいえ、減ってます」となります。ここは感覚的にも辿り着けるところかと思うので、試験問題として結局は難度が低かったことになります。詳細な数字は「平成27年 結核登録者情報調査年報集計結果」、あるいは最新版「平成30年 結核登録者情報調査年報集計結果」をご覧あれ。

結核を初めとする感染症には、必ず感染源があります。どこかからやってきた細菌やウイルスが人体に入り込むことをきっかけに、その人は患者への道を歩み出します。この問題で問いたかったのは、結核患者減少の傾向を維持していく中で*1危険な要素はどれかということじゃないでしょうか。つまり、新たな感染源として警戒すべきはどれか。当初想定されていた正答は3だったのでしょう。

国内では結核はもはや珍しい病気と感じる人が多いかと思います。しかし世界的には現在も猛威を振るっている病気の一つ。今も新たな患者が1,000万人/年で増えており、150万人/年がなくなっているとWHOは推計しています。世界人口は75億人と見積もられていますから、その0.13%、1000人に1人は新たに結核患者となっているという勢いです。2016年時点で世界の死因第10位に入るほど。

外国人労働者や外国人観光客の増加をもくろむ我が国が結核において注意しているのは、「外国」が持ち込まれること。つまり選択肢3です。「平成27年 結核登録者情報調査年報集計結果」でも「平成27年の外国生まれ新登録結核患者数は1,164人であり、前年から63人増加した」とわざわざ解説されているように、近年の集計結果では必ず明記されています。平成30年度版では「外国生まれ新登録結核患者数は、前年から137人増加して1,667人」ですね。やはり意図した正答は選択肢3だったのでしょう。

意外と身近な結核

選択肢4の「新登録結核患者における20歳代の割合」についても統計から解いていきましょう。厚労省結核(BCGワクチン)ページより上述の年報「結核登録者情報調査年報集計結果」を何年度分か開いて、2000年(平成12年)以降を新規患者数とともにグラフにしてみました。

新登録結核患者数(20-29歳)

全体として新登録結核患者数が減少を続ける中、2013年以降、20歳代は横ばいです。そのせいで割合としては増えてしまっている。ここで問題の2つめの正答である選択肢4が導かれるわけですが、問題作成者には全体としては減っている傾向と、2013年までの流れが頭にあったんでしょうか。

近年の新規結核患者数の減少は高齢者によるもので、若年層は全然減っていません。同年報から新登録結核患者数を年齢階級別にグラフにするとわかりやすい。

新登録結核患者数(人)

高齢者世代においては結核が蔓延していた戦争直後までの世代が抜け、戦後の結核を減少させてきた世代に入れ替わっていくので、劇的に減っています。しかし結核を過去の病気として生きている年齢層では意外と結核が減らせていないんですね。これを前述の外国からの流入に影響されていると見るか、高齢患者からの感染が防げていないと見るか。数から言えば圧倒的に後者。外国生まれ新登録結核患者(全年齢)1,667人に対し、日本生まれ新登録結果患者(60歳以上)9,137人。5倍以上。今の日本がまず警戒すべきは高齢者からの感染拡大なのでしょうが、政治的に、高齢者を遠ざけかねない注意喚起は難しい。ただでさえ足りていない介護員が減るようなことは避けたく、かといって高齢者介護にかける金など増やしたくもない。そんなところでしょうか。

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*1:この裏側には先進国としては日本の結核罹患率が高いことがある。けど、それはさておき。

稚内が受け取った危険なクリスマスプレゼント

あけましておめでとうございます。冬コミあわせの修羅場で繰り下げていた答え合わせ。

Good Evening Wakkanai City. December 25, 2019

稚内北星学園大学、事実上の廃止へ

予告通り稚内市長 工藤広は12月25日、市議会全員協議会で稚内北星学園大学の今後を発表しました。各社報道をまとめるとこんな感じ。

  • 学校法人育英館京都市)に譲渡する
  • 2020年4月から理事長は現育英館理事長 松尾英孝に、理事会構成員の半数を育英館からの人員に
  • 2020年度は現行の情報メディア学部を維持する
  • 2020年8月を頃までには大学名を変更する
  • 稚内市は期間未定ながら財政支援を継続する
  • 育英館は京都にサテライト校を設置予定

本件は全国紙でも報じられ、日経は「北海道の稚内北星学園大存続へ 京都の学校法人が支援、朝日は「「国内最北の大学」京都の学校法人が経営を継続」と見出しをつけています。地方紙の北海道新聞は「稚内市長「北星大存続へ最善の道」 育英館から経営陣受け入れ」、地元の稚内プレスは「北星大に救いの手 京都の学校法人「育英館」」という具合です。各社はいずれも「大学存続」と報じていますが、事実は好条件での売却、現大学の廃止*1です。稚内市側から見ればマイナス価格で売り払う、育英館側から見れば金と居抜き物件と得ることになります。

騎士の主は誰か

居抜きで新しい大学が入ってくるなら悪くないんじゃないか。そう思う向きもあるでしょうが、入ってくるのが育英館なのが気になるところです。同法人は2017年にも居抜きで大学、苫小牧駒澤大学を得ているため、その辺の手腕は手堅く心配ないのですが。

育英館は中国の学生を日本へ流す教育ルートを構築するための学校法人です。そのために中国にも日本にも学校を持っており、このことは理事長 松尾英孝が公言しています*2。中国色が強い同法人ですが、産経の報道*3によれば、理事会には共産党員もいるとのこと。

ところで中国と言えば昨今、アメリカおよびその周辺で5Gインフラを中心にHuaweiの通信機器を使用禁止にする措置が執られています。通信内容が筒抜けになる、安全保障上問題があるためだとか。実際のところは情報セキュリティという観点では評価が難しい話で、経済的な価値の大きい措置なのだろうと見ています。

本当に彼らが安全保障上、他国を脅かしたかったら何をしたらいいのだろうか。ある国を自在に操るためにはどうしたらよいのだろうか。その手法の一つは教育を乗っ取ることです。我が国でも古くから知られている手法ですね。他国を乗っ取るという形ではないにしろ、自国を思い通りに操るためであれば我が国でも僅か80年前に行われてたことです。

つまり、そういうことだろうと私は考えています。稚内市は中国に、教育機関を謝礼金付きで譲渡することを決めた。悲惨な話です。

しかし報道各社は歓迎ムードで情報を流し、公共セクターに対して理不尽に厳しい地元の稚内プレスですら「経営危機にある稚内北星大学にホワイトナイト(純白の騎士)現わる」と好意的に報じています。我が国の目は一体どうなっているのだろう。「お前ら、大学で何やってたんだ?」と言いたいところですが、稚内では「大学なんか行ってないよ」と返されてしまいますね。厳しい。

個人的な予定は変わらず、来春をお楽しみに

前回、稚内北星学園大学の市民聴講生になることを試みると書きました。ここは変わらず、有言実行。入学シーズンになったら問い合わせてみましょう。廃止になった夜間も含めて、今回の件で当blog的におもしろい方向になったらいいなとも思っております。

「御真影」に殉じた教師たち

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稚内北星学園大学、身の丈に合わせて廃止か

大学の存続を願う人が1人でも増えたらいいな。てことで。

稚内北星学園大学は山の中

朝から珍しく稚内の話題

今朝、眠くて吐き気のする朝食中のこと。ラジオから稚内の話題が流れてきました。しかも一聴してNHKのexclusiveであろうことが感じられる大物です。

稚内市北星学園大廃止表明へ

学生の定員割れが続いている宗谷地方唯一の大学、稚内北星学園大学について、大学と、財政支援を行っている稚内市が廃止する方針を固めたことが関係者への取材でわかりました。稚内市の工藤広市長は年内にも市議会の全員協議会の場でこの方針を示す考えです。

稚内北星学園大学は、情報メディア学部を置く宗谷地方唯一の大学で、現在およそ120人の学生が在籍していますが、定員割れによる赤字経営が続き、大学や財政支援を行う稚内市は廃止するかどうか慎重に検討を進めています。 そして、来年春の入学者の募集状況を踏まえるなどした結果、学生の確保は今後も厳しい状況が続くとして、大学を廃止する方針を固めたことが大学関係者への取材でわかりました。

これを受けて、稚内市の工藤広市長は年内にも市議会の全員協議会の場で廃止の方針を示すとともに、大学は廃止の具体的な時期を決めることにしています。 一方、来年度については、市がすでに財政支援を決めているほか、大学も入学者を受け入れることにしていて、すべての学生が卒業するまでは大学を存続させるとしています。 大学関係者はNHKの取材に対し、「今後も定員割れが続く見通しで、廃止は残念だがやむをえない。学生が困らないよう、全力で対応していきたい」と話しています。

稚内市長 北星学園大廃止表明へ|NHK 北海道のニュース (Internet Archive) より)

市民としてはいよいよかと思う反面、来年度の募集中、しかもその広告が稚内市公報に載ったばかりのこの時期にリークしたであろう稚内市筋の行儀の悪さも感じました。

私がこれを聴いたのはNHKラジオ第1で0720頃に流れる北海道地方のニュースでした。そして日勤から帰ってきて、いつも通りにニュースをザクザクと読んでいてちょっとした騒ぎになっていることに気付きます。

本日、NHKが「稚内市北星学園大学廃止表明へ」というニュースを流しましたが、誤報です。市長がそのような表明をする予定はありません。また「大学関係者」が語ったとされるコメントも出ていますが、本学では誰も取材を受けていません。稚内市と協議の上、NHKに対して謝罪と訂正を求める所存です。

稚内北星学園大学×COC on Twitter より)

稚内北星学園大学が真っ向から否定。同大学のウェブサイトにも同様のお知らせがあります。大学側の話を受けてか、Internet Archiveによれば、0617には存在した件のNHKニュースのページは、0805には消えていたようです。

NHKよ、お前も「身の丈に合わせて」と言うのか

稚内北星学園大学宗谷管内唯一の大学。同大学が失われれば、例えば稚内市民が大学に行くために名寄市立大学まで3~4時間かける必要があります。公共交通機関はJRのみ、午前中到着できるのは2本、到着時間帯を終日にしても6本しかありません。

NHKは今年の9月、導入中止が決まる前の大学入試における英語民間試験について、こんなことを言っていたのです。

テストは本当に公平か?

(中略)

都市部と地方の高校の「格差」です。

北海道稚内高校。

「民間試験」の会場はまだどこになるか、わからないといいます。 もし稚内市内に設けられないと、札幌まで往復およそ10時間以上かけて試験を受けに行かなくてはなりません。

列車代だけで、およそ2万円。

宿泊代も重なると、経済的な負担も大きくなります。

テストは本当に公平か? - 特集ダイジェスト - ニュースウオッチ9 - NHK より)

NHKに限らず、萩生田光一文科相の「身の丈に合わせて」発言を散々叩いた連中は今、何をやっているのか。そのとき都合よく使ってくれた稚内が今*1、こんなことになっているのだよ。本当は彼らこそ、稚内を「身の丈に合わせて」と蔑んだ目で見ていたのでしょうね。

存続を願う私にできるたった一つのこと

すでに上述しお漏らししてしまいましたが、私は件のニュースを稚内市筋のリークであると見ています。稚内市にとっては金を食うだけのお荷物になっているものの、市議会の反対が(意外と?)根強くなかなか切れない今、外堀を埋めて一気に事を進めようと狙っているのでは。つまり、廃止は概ね決定なのでしょう。もちろんこれは私の憶測に過ぎませんが、どこから話が出うるのかを考えればあながち外れてもいないはず。

憶測はさておき、私は稚内北星学園大学の存続を願っています。いつかも書いた通り、なぜか学問が好きなんですよ。しかし今の私は廃止が残念と言うことができるほど同大学と関わっていません。私が大学と関わるとしたら、食堂や図書館に行くか学生になるか。この状況に対して食堂や図書館へ行っても役に立たない。となれば学生になるしかない。幸い、夜間はなくなってしまいましたが市民聴講生制度は残っているようです。来年度は聴講生になってみようかなと思います。では、この続きは春が訪れる頃に。

追記: 翌日の珍事

NHKがまさかのお詫びを出しました。

稚内北星学園大 存続目指し調整

(中略)

このニュースを19日の「おはよう北海道」や「ひるまえナマら北海道」などで放送した際、「大学と稚内市が廃止する方針を固めた」とお伝えしました。

しかし、事実関係の確認が不十分でした。

学生や教員をはじめとする大学関係者や稚内市にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。

稚内北星学園大 存続目指し調整|NHK 北海道のニュース

本日は北海道新聞、日刊宗谷にも記事が載り、NHKの新たな記事も含め言っていることは皆同じ。第三者に譲渡の可能性を示しており、25日の市議会で市長が発表すると。結果として、稚内市が切り捨てたとて許される流れを作った昨日のNHK報道。マスメディアの効果的な使い方です。あくまで憶測と繰り返しますが、稚内市筋の行儀の悪さには開いた口が塞がりません。

何にせよ、私は廃止の方向だろうという見方を堅持しています。理由は簡単。大学には学生が必要で、同大学には学生を集められる見込みがないからです。尤も、よほど改革を得意とする第三者が譲り受けて、たちどころに人気を集める大学に再生させられる話も変わってきましょう。

つづき

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*1:少なくとも6月からですが。

第108回看護師国家試験を味わう(3) とにかく押しとけ?(午前5)

さて、寒くなると再開される連載、看護師国家試験を味わう。しばらくは試験問題に対する日看学協の物言いを通じて、試験を味わっていきたいと思います。第107回に対しては日看学協の物言いが適当か否かって視点でしたが、第108回からは純粋に試験問題とその周辺を味わう道しるべとして物言いを使うという感じで行きます。

この機に一次救命処置の優先度を理解したい

午前の、それも5問目が、第108回で最も話題になった(と思う)問題となりました。

呼びかけに反応のない患者に対し、医療従事者が行う一次救命処置で最も優先するのはどれか。

  1. 気道確保
  2. 胸骨圧迫
  3. 人工呼吸
  4. 除細動

(第108回看護師国家試験(午前5)より)

私自身は、当然2だよねって何の迷いもなく解いたのですが。その後、Twitterや日看学協の物言いで、1を選んでいる人も多いと知りました。界隈で有名なメディックメディアの「ネコナースの合格予報」によると、3月5日22時時点で1を選択が48%、2を選択が51%と、綺麗に二分していました。

厚労省の結論は「採点対象から除外する。」「設問が不十分で正解が得られないため。」得点調整じゃねーの? なんて思っちゃうのですが、どーなんですかね。現場じゃ不十分だから除外ってわけにはいきません。

肝は脈拍および呼吸の状態が不明なこと。つまり脈拍と呼吸の有無が判断できない。

となれば、日看学協が持ってきた『JRC 蘇生ガイドライン 2015*1でも、「傷病者に反応がなく、呼吸がないか異常な呼吸(死戦期呼吸)が認められる場合、あるいはその判断に自信が持てない場合は心停止、すなわち CPR の適応と判断し、ただちに胸骨圧迫を開始する」とあり、2が選択されます。まず呼吸で判断していくのがJRC流で、これがこの問題に対する誤解に結びついていると感じます。

AHAの「Adult Basic Life Support」では「The healthcare provider should take no more than 10 seconds to check for a pulse and, if the rescuer does not definitely feel a pulse within that time period, the rescuer should start CPR beginning with chest compressions.」となっています。pulseでの判断が重視され、no pulse(疑い)ならば胸骨圧迫になります。やはり選択肢2です。加えて言うならば、AHA BLSでは現在、CPRの優先度をCirculation-Airway-Breathingと明確にしており、どれが優先と聞かれたらCirculationを保つための胸骨圧迫です。

JRCもAHAを意識しているはずなのですが、なぜ古いA-B-Cを中途半端に引きずってしまったのでしょうか。まあ、この問題には関係ありませんね。この問題では上述の通り2の選択が基本です。

結局採点対象外となったこの問題ですが、一次救命処置は看護師となったあとに行うことです。しっかり考える機会が得られたと思えば、受検者的には二度おいしい問題でしょう。かくいう私もこの記事を書きながら、改めてBLS講習を受けて、ACLSを目指そうかなと思いました。

BLSプロバイダーマニュアル  AHAガイドライン2015 準拠

BLSプロバイダーマニュアル AHAガイドライン2015 準拠

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*1:Japan Resusciation Council。Japan Red Crossじゃないんだって思った。