去る6月7日、厚生労働省が「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」を発表しました。同概況によると、最新の死因上位3つは。
今、国家試験に出たら多くの看護学生は失点しそう
- 悪性新生物
- 心疾患
- 老衰
そうです、2018年、3位に変動がありました。2017年に3位に返り咲いた脳血管疾患でもなく、その前数年3位にいた肺炎でもなく、急上昇の老衰が3位の座に着きました。
(同概況より「図6 主な死因別にみた死亡率(人口10万対)の年次推移」)
看護師国家試験で頻出の上位3つ、しかし今、最新の3つを答えられた看護学生は少ないのでは。さあ、今すぐ覚え直すのです。
あれ、それって禁じ手じゃ
個人的には驚きでした。「老衰」は死因としてあげないことが原則だと聞いていたからです*1。確かに厚労省の出すマニュアルにもその旨記載があります。
死因としての「老衰」は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用います。ただし、老衰から他の病態を併発して死亡した場合は、医学的因果関係に従って記入することになります。
(例)
(ア)直接死因 誤嚥性肺炎
(イ)(ア)の原因 老衰
グラフを見るに、まさに、この例の通りの状況、つまり肺炎と書いてきたところを老衰とするようになったようです。このことについて、日経メディカルは日本呼吸器学会『成人肺炎診療ガイドライン2017』の影響ではないかと報じています。
死亡統計における死因の変化には、2017年4月に発表された『成人肺炎診療ガイドライン2017』(日本呼吸器学会)の影響が大きそうだ。同ガイドラインは、「易反復性の誤嚥性肺炎のリスクあり、または疾患終末期や老衰の状態」の場合には、「個人の意思やQOLを重視した治療・ケア」を行うこととし、患者背景を考慮した上で積極的な治療を行わないことを初めて推奨した。
(日経BP「三大死因に「老衰」が初ランクイン:日経メディカル」 より)
積極的な治療を行おうと行うまいとその手前は変わらず、それなりの材料を揃えて「肺炎の可能性が高い」と患者本人や家族に説明するはず。積極的な治療を行わないから記載が変わるというのは腑に落ちません。2006年あるいは2012年あたりからグラフに変化があるのに、2017年のガイドラインを理由にしているのも疑問です。とは言え日経メディカルの連中もアホではないでしょうから、推測と書きつつも裏を取っているのでしょう。
ちなみに1994年(平成6年)に心疾患が激減したのは、1995年1月施行の新しい死亡診断書において「死亡の原因欄には、疾患の終末期の状態としての心不全、呼吸不全等は書かないでください。」とすることを事前周知したため*2*3です。日経メディカルの報じた通りであれば、今回はお上から但し書きが出ないのでは。看護師国家試験という観点からは、解説で面倒なことになるかも知れませんね。尤も、なぜ減った、なぜ増えたなんて話は同試験の合格に不要なのですが。

国民衛生の動向 2018/2019 2018年 08 月号 (厚生の指標)
- 作者: 厚生労働統計協会
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今年出る2019/2020には載ってくるのかな。
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*1:あるとき隣に座っていた医師から。