去る4月21日、統一地方選の一つとして稚内市長選挙が行われました。結果は現職であった工藤広氏が新人2人を押さえて当選し、3期目を務めることとなりました。同市陣営は開票が始まってからは楽勝ムードだった模様。地元のコミュニティFM、FMわっぴーの開票速報特番によれば、開票が終わる前に選対事務所を片付けだし、当確と見込んでインタビューを行ったときには人もかなり捌けていたそうです。
当blog的に興味があるのは医療に関する政策。今回の候補者3人はおもしろい感じに割れていました。
質を上げるのか、値を下げるのか
稚内は医療の具合がよろしくないところです。稚内市内*1で眼科、皮膚科、産婦人科、泌尿器科すら市立稚内病院ただ1カ所と言えば、その悲惨さがわかるかと思います。例えばコンタクトレンズ作るだけで、大混雑の市立病院外来受診となり1日がかりですよ。その唯一の頼みである市立稚内病院も難儀な状況で、スタッフは常時不足しており、設備は古く貧弱です。
市民もこうした状況をよしとは思っていないようで、医療体制が不安だとか要改善だとか言う声は聞きますし、新聞にもよく出ています。
となれば市長選ではもちろん、誰もが医療体制の強化を訴えると思うでしょう? しかしそうではなかったってのが稚内らしいところでしょうか。
新人2人は医療体制の強化を訴える
川崎真敏氏は医療体制をハード、ソフトの両面から改善すると訴えていました。同氏は目玉の公約であるカーリング場建設中止をこれでもかと重視しており、医療についてはほとんど聞こえてきませんでしたが、市立稚内病院の建て替えも視野に入っているような感じを受けました。
古我友一氏は「稚内市民病院改革」と銘打って、医療体制の改善を強く訴えていました。特に人材を重視していたようで、医師は都会の人材紹介会社から引っ張ってくること*2、看護師は稚内北星学園大学に看護学部設置すること*3を提案していました。看護師を外から持ってこようとしないあたり、よく考えているなと外から来た稀有な看護師は思いました。なお、財源は風力発電事業による税収を見込んでおり、同氏の立場からは当然とは言え、弱いかなとは感じました。
現職は個人負担医療費の削減を訴える
工藤広氏は驚いたことに医療体制の改善には触れません。医療については高校生までの医療費ゼロを掲げたのみ。三つのゼロが公約であり、保育所待機児童、特別養護老人ホーム待機者、そしてをゼロにすると訴えていました。ちなみに稚内市では保育所待機児童なんていないようなもので*4、新たな財源を示さないことも含め、老獪なやり口だなとは感じました。
悪くてもいい、無料ならいいんだ
医療の質を上げんとする新人に対し、価格を下げんとする現職。結果として市民が選んだのは後者、安価な医療です。
妊婦加算の件でも申しましたが、サービスの対価を支払いたがらないことは、経済の成長を否定することでもあります。市長自ら稚内市を沈めていかなくてもよかろうにと私は思うのですが、わかりにくい話をするよりも、保育所待機児童と併せて表面上「未来ある子供たちに投資」と気持ちよくなれる策を取ったのでしょう。高齢化率31.8%*5の稚内で自らも69歳である工藤広氏にしてみれば、本当のところ、未来なんて関係ありませんしね。
尤も、医療政策どころか政策で選ばれたのかと問われれば、出入りが少なくみな知り合いの稚内で、首を縦に振り切れないのも事実ですが。あえて医療を軸に、選挙戦を振り返ってみた次第です。
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