夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

第108回看護師国家試験を味わう(5) 試験戦術が先々役立つ?(午前49)

第108回看護師国家試験を味わう連載。国家試験も迫ってきておりますからちゃっちゃと捌いていきますよ。

医術ではない、戦術だ

Crohn <クローン> 病の患者の食事指導で適切なのはどれか。

  1. 「食物繊維を多く含む食事にしましょう」
  2. 蛋白質の多い食事にしましょう」
  3. 「脂肪分の多い食事にしましょう」
  4. 「炭水化物を控えましょう」

(第108回看護師国家試験(午前49)より)

真っ向勝負を挑むには分が悪い問題です。クローン病って指定難病だよ? 患者数は人口の0.1%以下と少数で、効果的な治療方法が未確立で根治不可能な病気。そんなものの指導をすらすら言えと? 無理無理。クローン病は国家試験問題にちょこちょこ出てくるのですが、戦略によっては捨ててもよいでしょう。深く理解しておくべき疾患とは全く思いません。覚えたとして若年層が多く、消化管の炎症、飛び石病変が特徴ってあたりでしょうか。

国内で採用されているらしい難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班)による『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針』によれば「成分栄養剤(エレンタール)あるいは消化態栄養剤(ツインライン等)」です。そこまででもないって事例には「病状と患者の受容性やQOLに配慮して適宜投与量の増減や経口法の併用、調理の工夫などを行っても良い」そうですが、正答がスッと導出できるような記載ではない。そこで成分栄養剤とはなんぞやから導いてみましょう。エレンタールの組成アミノ酸34%、デキストリン79.3%、大豆油0.6%。炭水化物のデキストリンが最も多く、選択肢4は誤り。脂肪分の大豆油は相対的にかなり少なく、選択肢2は誤り。タンパク質が分解した姿のアミノ酸は3割も含まれ、選択肢2が正解かな。ただ、選択されているのが成分栄養剤でありエレンタールの成分がアミノ酸であることからわかるよう、「タンパク質」はよろしくないことがあるため日看学協の物言いになっています。

看護師国家試験でここまで考えて解く必要はありません。試験なのですから、試験に対する戦術を駆使すればよいだけです。

  • 病変は休める(傷には触れない!)
  • 物理的修復にはタンパク質(プロテイン!)
  • 炭水化物はだいたい問題ない(実習で主食抜きの病院食はまず見ないでしょ?)

食事療法の問題に対してはだいたいこれで。括弧書きにした通り、看護学生的にこの3つは想像しやすいかと思いますしね。今回の問題について見れば、3つをバランスよく満たせるのは選択肢2だけです。

実は試験が問いたいのも戦術なのでは

内科病棟にいてよく見る消化器疾患と言うと、胆管炎や総胆管結石でしょうか。イレウスも多いですね。一方で、クローン病はこれまで2年間で1例か2例です。そもそも指定難病ですから。この状況下で試験で問われているのは本当にクローン病についてなのでしょうか。

意外と、試験の戦術、その先にあると考えられる看護の戦術が問われているのかも知れません。世の中は知らないことだらけ。知らない疾患が出てきても慌てることなかれ。

クローン病・潰瘍性大腸炎の毎日おいしいごはん

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