第108回看護師国家試験を味わう連載。引き続き日看学協から物言いがついた問題を見ていきましょう。
金持ちかも知れないけどね
Aさん(77歳、男性)は、脳梗塞による左片麻痺があり、右膝の痛みにより立位が困難である。端坐位で殿部をわずかに持ち上げることはできる。妻(77歳)は小柄で、体格差のある夫の移乗の介助に負担を感じている。
Aさんのベッドから車椅子への移乗の際、妻の介護負担を軽減する福祉用具で適切なのはどれか。
- 歩行器
- ベッド柵
- 電動介助リフト
- トランスファーボード
(第108回看護師国家試験(午前72)より)
3か4か、これは難しい。私は4を選んで正解したらしいのですが、なぜ4にしたのか覚えていません。メディックメディア「ネコナースの合格予報」では2019年3月5日22時時点で3が43%、4が46%で、3を正解と提示していました。日看学協は「正答が2つ」と物言い*1をつけましたが、 厚労省の出した正解は4。
注目すべきは「端座位で臀部を僅かに持ち上げることはできる」で、持ち上げたところで何かやったらいいんだなと、トランスファーボード*2でも入れてやるかと選択肢4になりましょうか。それでもやはり、持ち上げたところでリフトのスリング*3を入れてやってもいいわけで、選択肢3を消去できません。持てる能力を活用しADL低下を予防する観点からリフトは不適とする解説もありますが、端座位が安定し上肢機能が十分な人向けのスリングが存在することを踏まえれば解説は不十分で、やはり選択肢3を消せません。
視野を広げて。介護では、特に老老介護では、金銭負担を軽くすることから考えましょう。介護に金をじゃぶじゃぶ突っ込める人なんてそうそういないのは誰にでも想像できますし、実際でもあります。この観点なら最適解は選択肢4です。電動介助リフトはレンタルで月額1~2万円(1割負担で1,000~2,000円)。トランスファーボードなら購入しても1~2万円、Amazonでも買えちゃいます。
ここまで考えずとも「電動介助リフトは大げさでは」と解けばよいのですが。介護の問題が出てきたときに「最後は金目でしょ」と言えるのは有効かと思います。
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