夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

第108回看護師国家試験を味わう(3) とにかく押しとけ?(午前5)

さて、寒くなると再開される連載、看護師国家試験を味わう。しばらくは試験問題に対する日看学協の物言いを通じて、試験を味わっていきたいと思います。第107回に対しては日看学協の物言いが適当か否かって視点でしたが、第108回からは純粋に試験問題とその周辺を味わう道しるべとして物言いを使うという感じで行きます。

この機に一次救命処置の優先度を理解したい

午前の、それも5問目が、第108回で最も話題になった(と思う)問題となりました。

呼びかけに反応のない患者に対し、医療従事者が行う一次救命処置で最も優先するのはどれか。

  1. 気道確保
  2. 胸骨圧迫
  3. 人工呼吸
  4. 除細動

(第108回看護師国家試験(午前5)より)

私自身は、当然2だよねって何の迷いもなく解いたのですが。その後、Twitterや日看学協の物言いで、1を選んでいる人も多いと知りました。界隈で有名なメディックメディアの「ネコナースの合格予報」によると、3月5日22時時点で1を選択が48%、2を選択が51%と、綺麗に二分していました。

厚労省の結論は「採点対象から除外する。」「設問が不十分で正解が得られないため。」得点調整じゃねーの? なんて思っちゃうのですが、どーなんですかね。現場じゃ不十分だから除外ってわけにはいきません。

肝は脈拍および呼吸の状態が不明なこと。つまり脈拍と呼吸の有無が判断できない。

となれば、日看学協が持ってきた『JRC 蘇生ガイドライン 2015*1でも、「傷病者に反応がなく、呼吸がないか異常な呼吸(死戦期呼吸)が認められる場合、あるいはその判断に自信が持てない場合は心停止、すなわち CPR の適応と判断し、ただちに胸骨圧迫を開始する」とあり、2が選択されます。まず呼吸で判断していくのがJRC流で、これがこの問題に対する誤解に結びついていると感じます。

AHAの「Adult Basic Life Support」では「The healthcare provider should take no more than 10 seconds to check for a pulse and, if the rescuer does not definitely feel a pulse within that time period, the rescuer should start CPR beginning with chest compressions.」となっています。pulseでの判断が重視され、no pulse(疑い)ならば胸骨圧迫になります。やはり選択肢2です。加えて言うならば、AHA BLSでは現在、CPRの優先度をCirculation-Airway-Breathingと明確にしており、どれが優先と聞かれたらCirculationを保つための胸骨圧迫です。

JRCもAHAを意識しているはずなのですが、なぜ古いA-B-Cを中途半端に引きずってしまったのでしょうか。まあ、この問題には関係ありませんね。この問題では上述の通り2の選択が基本です。

結局採点対象外となったこの問題ですが、一次救命処置は看護師となったあとに行うことです。しっかり考える機会が得られたと思えば、受検者的には二度おいしい問題でしょう。かくいう私もこの記事を書きながら、改めてBLS講習を受けて、ACLSを目指そうかなと思いました。

BLSプロバイダーマニュアル  AHAガイドライン2015 準拠

BLSプロバイダーマニュアル AHAガイドライン2015 準拠

おすすめ関連記事

nsns.hatenablog.com nsns.hatenablog.com nsns.hatenablog.com

*1:Japan Resusciation Council。Japan Red Crossじゃないんだって思った。