Google先生に聞くと「辛い」がサジェストされることでおなじみ「看護実習」ですが、一体何が辛いのか、大変なのかは看護学生以外にわかりにくいところです。高校生あたりであれば何となく「病院という環境での実習は大変そうだな」となるかも知れませんが、社会人だと「研修みたいなものでしょ? 楽じゃない?」とか思っちゃうんじゃないかなぁと。
今回は臨床実習の何が大変なのか、紹介してみたいと思います。
辛さの素は2種類
実習が大変、辛いと言われる理由は2種類に大別されます。
- 実習先、病院の看護師が理不尽に厳しい
- 書かなければならない実習レポートが多い
朝から夕方まで病棟で看護師の厳しい言葉に叩かれ、夕方からは大量のレポートに潰されそうになるってのが実習中の標準的な看護学生らしいです。え、私? 私も緩いとは感じていませんが、そこはまあいつも非標準なので。
前者の看護師については細かく説明しようがありません。「白衣の天使」は「白い悪魔」って読むんだよ。「おはようございます」とナースステーションに入るも反応なしなんてことがある世界ですから*1、あとはお察しください。他の業界から移ってきた連中は驚きます。常識に欠けると言われることもある某IT業界から移った私ですら。もちろん、みながそうではありませんが、普通は逆じゃないとまずいよ、ね。
多くても少なくても大変って感じは共通
後者のレポートは、看護方面では「記録」とか「実習記録」と呼ばれているものです。看護学生にあったら「記録、大変?」って聞いてあげると釣れます。おすすめ。記録を書くことを「看護過程を展開する」と言ったりもします。記録を書くことを通じて、必要な看護活動を導き出し実施、評価することから、そんな言い方なのでしょう。
これを一定の実習期間、看護学校だと3週間で1人の患者さんについて書き上げていきます。カルテを眺めたり、患者さんと話したりして情報を得て、まとめて、考察の上で患者さんにあった看護活動を作っていきます。
結構な分量で、私の通う学校だとこんな感じ。全て担当患者さん1名*2に対するものです。
- 疾患およびその看護について(事前作成、A4で5~10枚)
- 既往歴、入院まで、入院から現在までの経緯(A4で1枚)
- 疾患の状況、治療方針、治療内容(A4で1~2枚)
- ヘンダーソンの14の基本的ニードの視点で*3患者情報を整理(A4で3~5枚)
- 整理した情報を関連図として図示、患者の抱える問題を導出(A4で1枚、問題数は3~5ぐらいが標準)
- 問題の背景、原因、解決方針(A4で3~5枚、1枚/1問題)
- 問題を列挙(A4で1枚)
- 問題の解決策、解決策実施に対する患者の反応、解決策および実施に対する評価(A4で5~10枚)
- 実習を通じて学んだこと(A4で1~2枚)
- 日々の行動目標、計画と学び(A4で1枚/日)
あーあー、列挙しただけで嫌になってきますなぁ。これが大変な理由の2つめですよ。
「問題」と記したものは「看護問題」と呼ばれ、看護によって生じる、あるいは解決できる問題のことです。代表的なところだと「ベッドからの転落」とか。実習では患者さん1人1人にあった、個別性*4を満たした問題とその解決策が求められるため、教科書通りのままだと合格を得られないのが肝ですかね。
ただ、記録をどのぐらい書くのかは学校によってかなり差があるようです。不運にも私の通う学校は多いことが複数の証言からわかっており、受験前に学校を選ぶ機会がある方はこの辺を調べておけと強く言っておきます。
記録の内容を見たい方は、この辺かな。ウェブと書籍をご紹介。
「書き方のポイント」で紹介されている「ゴードンの機能的健康パターンと記録の実際」は、上述の中では「4. ヘンダーソンの14の基本的ニードの視点で患者情報を整理」にあたります。

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この本は私も教科書として持っています。「難しく分厚く結局開かない高価な本よりも、簡単で薄く読む気の起こる安価な本の方がいいかなと思いまして」と私たちの代から選ばれた教科書です。ので、興味ある人は買ってみてもいいんじゃないでしょうか。考え方としては部下の教育計画立案とか、病み上がりの方の復帰計画立案で使えるかも知れません。
情報セキュリティは看護実習生を救うのか
この記録も、あと何年か、十何年かしたら大幅に減るんじゃないかと見ています。今、記録を書くのは病院外どころか学校外です。個人情報にあたらないように改変して使ってはいますが、上述の記録の内容を見てもらえれば、そんな言い訳が許されるのも今のうちって感じがするんですよね。
この予想は今の大変さを何ら軽減しないんですけどね。