夜勤病棟の女神様(仮)

てっぺんの街、ひよっこナースの日常

バックアップ電源で避難所に人を集めよう

観光客が戻ってきた稚内

北海道胆振東部地震から1週間ちょいが経過した3連休の週末(に草稿を書いたんですよ)、稚内への観光客も回復傾向でした。一時はさっぱりだったBMWやHarley-Davidsonのバイクも見かけるようになりましたね。写真は連休最終日、9月17日の日の入り時刻の夕日が丘パーキング。ここに関していえば、地震の前と同程度に人が来ていました。尤も、連休最終日の夕方にここにいるってことは、連休が関係ないのかも知れませんが。

さて、今回も北海道胆振東部地震のお話。

電気、ガス、水道、一番重要なのはどれか

電気、ガス、水道の中なら、水道が一番重要といわれがちです。しかし実際に最重要なのは電気。一戸単位で見れば水だと思われますが、今回の「北海道全体」のような広範囲では、電力が最重要、と申しますか、電力こそが全てに必要なものです。ガスも水道も、今や電力なしには供給できませんから。社会インフラの全てが、電力なしには維持できないのが現代です。

命の水とはいわれますが、命の電気と言われることはまずありません。生理学的にはそりゃそうですよね。一方で、現代の医療に思いを馳せたとき、電力で命を繋いでいる人がたくさんいることはご想像いただけるかと思います。しかし電力で生命活動を維持している人が、隣に住んでいる可能性があると思う人は少ないのでは。ところが実際に、あなたの隣に住んでいるかも知れないのです。

呼吸するために電力が必要な人たち

世の中にはいろいろな病気があり、「呼吸する能力が低下する病気」というのもございます。肺炎なんてのはその最たるもので、熱が出て、咳が止まらず、息が苦しくて酸素マスクをつけられるなんて想像をする方もいらっしゃるのかな。まあ、重症例ではそんな感じです。

肺炎であればだいたいは一過性で、適切に治療すれば元通り。しかし慢性的に呼吸能力が低下する病気もあります。COPD*1や肺がんがそれです。逆に言うと、COPDや肺がんは呼吸能力こそ低下しているものの、他は正常ということも多くあります。となれば、呼吸能力を補えば普通に生活できますから、呼吸能力を補う装置を持って帰って使ってね! となります。これが「在宅酸素療法*2」で、持ち帰る装置が「酸素濃縮器」です。

酸素濃縮器の仕組みはWikipediaを見ていただくとして、肝は、酸素濃縮器を動かすのに電力が必要だということ。災害で自宅の電力を奪われたから避難所へ、ん? 避難所になら電力があるの? 北海道全体が停電している中、避難所にバックアップ電源ってあるの?

避難所としてよく使われる公民館や小学校の体育館に、バックアップ電源なんてありません。全国的にはごく一部の避難所でバックアップ電源があるようですが、圧倒的多くには備えられていません。在宅酸素療法を行っている人にとっては、避難所への避難が難を逃れることにならないわけですね。

となると、在宅酸素療法を行っている人たちは病院にやってくるわけです。大規模停電の最中、電力*3や酸素濃縮器の産物である酸素*4が安定供給される傾向にあるのが病院だからです。電力さえあれば家で、あるいは避難所でのんびりできる人たちが病院に来る。このことが意味することが何か、お察しのことと思います。停電に加えて地震やら火事やら水害やら、他に患者が増える要素があったとすれば悲惨なことになります。

現在、在宅酸素療法を導入している人は全国で15万人以上*5*6、全人口の0.1%以上もいるそうです。稚内で考えると、稚内市民は3.5万人ですから、在宅酸素療法導入者は35人程度と推測されます。停電時に受け入れることになるであろう市内の病院*7の一般病床数は308床。突然1割が入院不要なはずの患者で占められることになります。258/308床を有する市立稚内病院の病床稼働率は7割程度であることを踏まえ、市内の空き病床数は平時で90床程度。災害時、避難所にバックアップ電源があれば90床空いている状態から始まりますが、バックアップ電源がなければ55床から椅子取りならぬ病床取りゲームが始まります。

在宅酸素療法を導入している彼らのためにも、また、彼ら以外の病院に来る人のためにも、避難所にはバックアップ電源が設置されるといいなと思います。

災害対策にも現代化「おいでよ! 避難所へ」

避難所にバックアップ電源があれば、近年課題となっている避難率の向上にも一役買うのではないかと思います。停電している地域において、電力の人気たるや半端なものじゃありません。*8

今回、稚内では宗谷バスが自社のバスをUSB給電装置として運用して大変好評だったようです。

安定した電力が避難所にあると知れ渡れば。みんな、喜んで避難してくるんじゃないでしょうかね。

あー、うん、わかってます。彼らが電力を欲する先には、落ちないITインフラの存在があるってこと。IT業界のみなさまにおかれましては、そんな理由で避難されても頭痛が痛むだけかも知れませんが。命を救うことすらしているんだと誇りを持っていただければと、医療業界の末席におる私は思うのです。

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個人で小さな発電機を買っても、ガソリンがね。

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*1:慢性閉塞性肺疾患」の方が一般的なのかな。

*2:HOT: Home Oxygen Therapyとも呼ばれます。

*3:一般家庭以上、データセンタ未満のバックアップ度。

*4:病院にある酸素だって大元は電力を用いて製造しているんですけどね。

*5:https://www.mtjapan.or.jp/jp/mtj/cn/pdf/hospeq2014_jp_01.pdf

*6:http://www.awmi.co.jp/images/upload/pdf/HOT%E5%85%A5%E9%96%80.pdf

*7:稚内市の病院の守備範囲は市外も含むけど、この試算で気にするほどの人口はない。

*8:豪雨如きで電力供給は止まりませんよ。って話になると、何だけど。