夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

新社会人、三種の神器?

ひよっこナースは毎日毎日同じところに通い、仕事をして、帰る。サラリーマン*1と呼ばれる立場にあった頃よりもサラリーマンらしい毎日を送っておりますよ。

サラリーマンと呼ばれる方々にも、この春たくさんのひよっこが生まれています。そんなひよっこサラリーマンに支給される三種の神器と言えばこの3つでしょう。

  1. 名刺
  2. メールアドレス
  3. 電話(内線電話、携帯電話)

この辺、ナースだとどうなるのかなってのが今日の話題。

電話中の女の子

ないよ、何もかもないよ

答え言っちゃったよ。3つどれもありません。新人看護師の大半は病棟*2勤務となりますので、病棟での事情という前提になりますが、どれもありません。

  1. 名刺
    • 病棟勤務である限り、ほとんどの病院で支給されない
    • 病院なら管理部門や地域連携、病院以外では訪問看護ステーションの看護師は持っていることも多いはず
  2. メールアドレス
    • 病棟勤務である限り、ほとんどの病院で割り当てられない
    • 看護部長、師長あたりが持っている病院もあるが、個人に割り当てられているかは怪しい
    • 電子カルテシステムの中にメッセージング機能があることもあるが、使われているか怪しい
  3. 電話(内線電話、携帯電話)
    • 病棟勤務である限り、多くの病院で支給されない
    • 病棟に数台の固定電話と5~10台の共用PHSが配備されている程度で、個人に支給されないことが多い
    • 先進的な*3病院では、各個人に構内PHS端末が支給される

名刺は渉外の道具だから

病棟勤務の看護師には使いどころがありません。患者、あるいは患者の家族と接することはもちろん多く、渉外の機会はあるとも言えますが、あくまで病院の窓口として活動します。個人を識別される必要はありません。むしろ「何かございましたら病院の総合窓口か、この病棟にご連絡ください」です。これは三種全てに言えることです。

使わないのに名刺が支給されている企業等の窓口担当者だっているだろうとゆー突っ込みもあるかとは思いますが、組織全体で多くが名刺を要するのか、要さないのかに合わせているだけでしょう。病院の看護部では多くが不要ですからね。

メールは直接連絡する道具だから

看護師は上述の通り渉外がなく、内部的にはピラミッド型の組織で活動するため伝言ゲーム以外の連絡が必要とされません。全てを飛び越えて個人に連絡することを可能として効率化を図るメールは不要です。

とは言え組織内での同報メールのように一気に周知したいこともあります。それは古い病院であれば毎朝ある打ち合わせ*4で、新しい病院であれば加えて電子カルテシステムのメッセージング機能を活用しています。民間企業で言えばグループウェアに表示されるお知らせですね。

電子カルテシステムの話は、また、そのうち。

電話は多分、システムが古いから

民間企業のオフィスでは古くは固定電話(ビジネスフォン)の内線番号が机ごと、あるいは机2台ごとぐらいにはあります。完全に個人に割り当てられないまでも、概ね個人を狙って電話できる感じで。昨今では固定電話に加えてか、代わってか、携帯電話が支給されているところもありますよね。

看護師個人にとって、固定電話はメールアドレスと同様の理由で不要です。病棟に数台の電話機が置かれている程度ですね。

しかし携帯電話、病院における主流である構内PHSについては事情が異なります。ナースコール*5を受ける道具としても使用されており、全員が持てるならそれに越したことはありません。その日の担当や出勤状況に応じてナースコールの着信端末を振り分ける等、各個人が持つことで業務の質や効率の向上を支援できます。

しかし実際には多くの病院で、病棟共用のPHSが5~10台あることがほとんど。ナースコールがあれば一斉に全てのPHSが鳴る具合です。この理由は定かではありませんが、運用を含め電話システムが古いことが直接の原因のようです。病棟に数台ある電話が今時のビジネスフォンでないことすらあり、下手すれば家庭用の電話機です。こんなですから内線グループも組めないのでしょう、病棟に電話がかかってきても1台でしか鳴りません。保留の共有やパーク保留もできません。基本的なビジネスフォンの導入だけでは病院においてメリットが薄く、ナースコール連携を完全に行うと費用面で折り合いが付かないのでしょうか。前職でも病院向けは関わったことがないので、なんとも言えないところですが。

つまり構内PHSについては費用なり何なりの問題で個人に支給されないだけ。あった方が嬉しいものですから、先進的な*6病院であれば個人に支給され、個人ごとに番号が割り当てられています。逆に言えば、看護師が全員PHSを持っている病院は、割と新しく、十分な費用を投じた電話システムを持っていると言え、業務の質や効率の向上に熱心な病院と推測できるのかも。

なお、病院の中でも医師には個人の構内PHSが支給されています。個人として識別され活躍するためですね。

三種の神器の副次的効果

ザックリ言えば「必要ないから三種の神器が支給されない」ってことでしたが。本当にそうなんでしょうかね。

電話システムのところで触れたような古い病院、特に地方の古い病院は十中八九どころか百発百中で人材確保に苦しんでいます。医師はもちろん、看護師も足りていません。看護師が足りないとどうするか。看護学生に金をばらまいて確保しようとするのですが、付け焼き刃なんですよね。

病院が出す看護学生向け奨学金というのは独特のもので、奨学金支払期間、あるいは概ね3年以下の一定期間その病院で勤める*7と、奨学金の返済が免除されます。まさにばらまきです。そして付け焼き刃と書いたことからお察しでしょう、多くの学生は返済免除に必要な期間を終えると、病院を辞めていきます。都会の新しい病院に移るわけですね。看護師が一通りの仕事を身に着けるには3~5年が必要と一般に言われているそうで、ね。どこに金をばらまいているんだかという話になってしまう。そして延々と人材不足は続きます。

稚内という果てにいる私だから自信を持って言いますが、地方であることはどうやっても変えられません。古い病院であることもそうそう変えられないことでしょう。そんな中で、看護師を「看護師」として扱うのか、「○○看護師」として扱うのかは、働きがい、各個人の病院に対するロイヤルティに影響するのでは。

「○○看護師」を手っ取り早く演出する道具として、個人に割り当てられる三種の神器が有効ではなかろうかと思うのです。例えば民間企業においても、新人に渡された名刺がすぐに使われることはそう多くない。それでも渡すのは効率という理由の他、「我が社の一員として○○さんに活躍して欲しい」という言外のメッセージもあるのかなと推測します。支給された新人だって「あ、自分の名前が入ってる! がんばろ」って思いますよね。

民間企業の人事部では、企業を向上させるため、優秀な人材を確保するため、社員のロイヤルティをどうやって向上させるかを真剣に考えているらしい現代。病院、特に地方の古い、人材不足に陥っている病院も少しは見習ったらどうかなと思う次第です。

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*1:性別がどうこう言いたいわけじゃないのですが、女性も含んでぴったりの言葉ってないよね?

*2:病院の入院患者を収容しているところ。

*3:と言うほどか?

*4:看護方面ではカンファレンスと呼ばれる。朝や夕の勤務時間帯の引き継ぎにおいては、申し送りと呼ぶこともある。

*5:さすがにたいていの人は知っているのかな。患者のベッドに呼び出しボタンがあり、押すとナースコールが鳴り看護師が呼べる仕組み。

*6:と言うほどか? と繰り返し。

*7:「お礼奉公」などと称されます。