夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

休みが終わったら休みじゃないの

ふぅ、今月も試験が終わりました。先週の今日。その後本業が予期せぬ忙しさに見舞われて放置してしまいましたが、今回の試験について振り返ってみますか。

週○2日制

8月末から9月にかけて、6科目の試験がありました。

  1. 微生物学
  2. 人体の構造と機能(解剖生理学、内分泌と神経)
  3. 生化学
  4. 看護学概論
  5. 分子生物学
  6. 家族社会学社会学
  7. 心理学(単位認定済みのため受験しない)

夏休み明けて2営業日目に試験が入ってくるあたり何とも厳しいものですな。一時期の予定では初日に入ってたので、それよりは緩くなりましたが。ちなみに試験だからっていわゆる試験期間というものはなく、1時限目に試験があり、2時限目からは普通に授業なんですよ。

試験形式は高校と大学のものを足して2で割った感じでしょうか。むしろ高校よりかな。穴埋め問題や多肢選択式が多い。逆に自由記述は少なめ、論述は今回初めて家族社会学にあったのみですね。

看護学生はもちろんみな、国家試験への合格が一つの目標です。故に各科目の試験も国家試験を意識して、たりしていなかったり。その辺は教員の考え方が出るところのようです。

さて、わずか3週間の間に6科目も突っ込まれますと、どう戦おうかという戦略が学生ごとに分かれてくるものです。大学に通われたことのある方はお察しかと思いますが、だいたいこの3種類ね。

  1. 片っ端から頭に入れる、教科書の隅から隅まで勉強。
  2. 試験問題を予測、応じて勉強。俗に言う山を張る。
  3. 過去の試験問題、通称過去問を頼りに勉強。

私は大学時代から一貫して2の「山を張る」戦略を採用しています。「試験は授業中から始まっているのだよ」と言えば聞こえはいいのですが、要は手抜きと言われればそれまでですな。しかし要点を押さえている教員の授業であればと重ねて言ってみましょう。

そんな私が試験で一喜一憂するのは点数よりもむしろ試験問題。点数なんざ及第点があれば十分。むしろ試験問題の予測精度こそが大切です。今回の当たりは5/6ってとこですかねぇ。人体の構造と機能には今回もやられた。気持ちよく「参りました」ってとこですかね。絵を描かせるって形式はもちろん「そこが重要だったのか」って気付かせてくれる問題なのが、本当に凄いなと。

教科書これくしょん

各科目の教科書はこれ。

系統看護学講座 専門基礎 〔6〕―疾病のなりたちと回復の促進 微生物学 4

系統看護学講座 専門基礎 〔6〕―疾病のなりたちと回復の促進 微生物学 4

微生物学は先にも取り上げた医学書院の系看。索引もしっかりしているしわかりやすい。

nsns.hatenablog.com

教科書にはないものの先生が強調していたのは「アルコール綿はべしょべしょのを使ってくださいね。乾いているのはダメですからね」ってこと。当然なんだけど、これ、強調されなければ意識しなかったと思う。

トートラ人体の構造と機能 第4版

トートラ人体の構造と機能 第4版

人体はおなじみトートラ。女性の生理周期と生殖器、内分泌の変化は図がわかりやすく書かれていて、内分泌入門はここからがおすすめ。この教科書に限った話でもないとは思いますが。視床下部から順番に全部覚えようとすると流れが見えなくなっちゃう。男性が女性に生理周期の何たるかを説明している様は男女平等感に溢れるので、是非、職場でお試しください。

わかりやすい生化学―疾病と代謝・栄養の理解のために

わかりやすい生化学―疾病と代謝・栄養の理解のために

生化学はヌーヴェルヒロカワ。「わかりやすい」を意識しすぎていてちょっと説明不足なところがある気がする。タンパク質の分解のところは順序悪くて理解しにくかったぞ。

授業では教科書よりも配られるA4 1枚のプリント*1を主に使っていました。ここにある小テストを解けるようにしておくと及第できるという大学の教員らしいやり方。

看護学概論―基礎看護学〈1〉 (系統看護学講座 専門分野)

看護学概論―基礎看護学〈1〉 (系統看護学講座 専門分野)

看護学概論も医学書院の系看。国家試験で出るらしい当たりの統計値についてよくまとまっていて、酒の肴にもおすすめ。

コア講義 分子生物学

コア講義 分子生物学

分子生化学は裳華房、この教科書だけかな。要点に絞った解説が売りなだけあり、要点に絞りすぎててちょっとわかりにくい気がします。ま、今時ウェブを検索すりゃいいんですが。小塚明朝を中心に組まれた珍しい1冊。

家族社会学は教科書なし。なぜか単位認定の申請を忘れてたんだけど、社会学の基礎中の基礎を扱った内容で、試験は軽い感じだったのでよしとしましょう。役割、規範と逸脱、要点はこの辺ですね。毎回身近な例を各自紙に書くところから始まる授業は、実にうまいなと思いました。社会学って本当に身近ですぐに活用できる学問*2のはずなのに、下手すると人物や理論の暗記になっちゃうんですよね。

新体系看護学全書 基礎科目 心理学

新体系看護学全書 基礎科目 心理学

逆に教科書を使うとこうなるんだなってのが心理学。教科書自体は退屈だよ、言うまでもなく。

試験についてのおすすめ記事

*1:大学だとレジュメ? 某業界だとペーパー?

*2:一挙手一投足に社会学的解説を付けてみると微妙な空気になるよねってのを試験前にやってみるわけです。

今頃反省会のつもりが祝勝会、ですよね

早いものであれから1年。本日、日本時間ではもう昨日か、私の通う学校では2016年度社会人入試合格発表がなされました。

今年は4名合格。受験者数は存じませんが*1、例年通りなら10名前後でしょう。高めの合格率になるのは、相対評価の度合いが低いからってことなのでしょうか。

今回は社会人組の合格を祝しまして、社会人入試について。看護学生を目指している方に、看護師に興味のある方に、入試を通って欲しいなって。金曜の夜、当然飲みながら。

それはまるで新卒採用試験のように

社会人入試と言われたら、社会人は、学校を出て十年も働いている人は、社会人として異業種の経験を活かして挑戦する入学試験だと考えることでしょう。定量的に言えば、永遠の17歳入りした人たちが受験するもの。

しかし看護学校の社会人入試は、そんなものじゃないんです。2014年度入試で私立2校、2015年度入試で国立1校を受けた限り*2、まるで新卒採用試験。Wo/Men in Blackが拝めます。借りてきたかの如き黒スーツに身を包んだ、20代であろう人ばかりが主流です。

そして異業種からの転向なんてのもそんなには多くないみたいです。入試で、あるいは入学後に私が聞いた限りではありますが、医療や福祉で働いている人が多いのです。ましてや誰かさんのように、他業界で楽しく寝不足で働いてましたなんてのは、私の知る限り誰かさんだけ。極々稀でしょう。

社会人入試経由ナスたま候補生に贈る言葉

新卒採用試験のようだってのは、受験姿勢においても言えることです。入学して社会人組と話してみて驚いたのですが、入試対策で小論文や面接の練習をするんだってさ。きっとここをたまたま見ている受験生のあなたも、そうなんでしょうね。

やめとけやめとけ。大切なのはそーゆーことじゃないと思うよ。

あまり下手なことも言えないけど*3、特に面接は、互いにその学校で学ぶことを納得できるか否かを判断する場では。そりゃ型通りの応対でも通りはするだろうけど、後々どうなのかな。学校側も、求めてるのはそこじゃないでしょ。

とゆわけで、不合格も合格も経験している私の臨み方はこんな感じでした。今でもこれが最善だったと言えます。他人と比べて優れているとは思わないけど。他人と比べるのは私の仕事じゃなくて、学校側の仕事だからね。気にしても仕方がない。

  • 英国数の筆記は落とさないようにする
    • 数学が悲惨だったので、中学2年生の教科書からやり直した
    • 国語は現代文である限り負ける気がしなかったのでそのまま
    • 英語はTwitterで会話するレベルがあれば余裕っぽかったのでそのまま
  • 小論文は酒を飲みながら話す感覚
    • つまり、自然体
    • ネタは手広く押さえてないと話にならないよね?
    • 独自の視点、意見がないと話にならないよね?
  • 面接は新規顧客との初回打ち合わせみたいなもの
    • 楽しく会話できるってことを重視
    • わからないものはわからない、質疑応答の内容はありのまま
    • 対顧客交渉における術は、持ってるでしょ?

社会人入試では不合格に落ち込む必要ってないんだと思うんです。それは性格の不一致で、その学校にはあわないってこと。次行こうよ。そうそう新規の仕事は獲れないって、知ってるでしょ?

看護とは何か、私が答えたこと

看護学校の社会人入試で聞かれることと言えば、この3つですよね。

  1. 看護師を目指す理由
  2. 看護師って綺麗な仕事じゃない、下の世話とかあるけど大丈夫?
  3. 看護とは何か

先述の通り、いずれも素直に答えたらいいと思うんですよね。

理由は「何となく興味があって」って私は答えました。マニュアル的にはあり得ない回答でしょうし、入学後にはクラスメイトにそれはヤバいだろうって言われましたが。嘘はここ一番にとっておくもの。わかりきった場面で使うものじゃない。

下の世話はどうとも思ってなかったので*4、これまたそのまま。

最後に、以前の記事でも伏せていた「看護とは何か」をどう答えたか、書いておきますか。

  • 清潔な環境を保つこと
  • 治療に必要なデータを取ること

この冷たさ、私らしいよね。

ナイチンゲール的な看護とは何かの話は、以前の記事、この記事を見て。

nsns.hatenablog.com

がんばれ、受験生

ここまでの話で、なんだか合格できそうな気がしてきたでしょ?

異業種からの転向は概ね、厳しい選択だと思います。特にそれなりの収入を得ているのならば特に、失うものが大きい。それでも挑戦したいと思うなら、その気持ちのままに飛び込みましょうよ。

確かに失うものは大きい。しかしそれでも手を伸ばそうとしたことを、後悔することはないと思いたい。

みなさんが「道を踏み外す」ことを、楽しみに待っています。

ちなみに、入試直前に聴いていたのはほちゃの『秘密』でした。「あからさまにミゼラブルなファイト」*5でいいじゃないですか。

秘密(初回限定盤)春夏

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秘密(初回限定盤)秋冬

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*1:知らない、知らないよ。

*2:採点基準が明確であろう国立を受けろとは、友人からの忠告でした。ありがとう!

*3:お察しください。

*4:今でもそれは変わりません。むしろ怖いのは食事の方だよね。まずいとわかってる流動食とか、どーゆー顔して食べていただけばいいのだろう。

*5:堀江由衣インモラリスト」より。

その薬、製造国はどこですか?

天津浜海新区倉庫爆発事故はまさに対岸の火事だと思っていたのですが。そいつぁナスたまとしちゃ恥ずかしい話だぜってGlaxoSmithKlineが言ってる。

GSK天津工場被災に伴うB型慢性肝疾患治療薬「テノゼットR錠300mg」出荷調整のお知らせ

2015年8月12日に起きた中国天津浜海新区倉庫爆発事故により、弊社GSK天津工場が被害を受けました。本工場では日本向けのB型慢性肝疾患治療薬「テノゼットR錠300mg(一般名:テノホビルジソプロキシルフマル酸塩)」を製造しておりますが、爆発事故による被災により本剤の製造・出荷が停止しており、8月31日現在、本工場の操業再開の目途が立っていない状況です。

この状況をうけ、誠に遺憾ながら本剤の特約店様への出荷調整を実施させて頂くことを決定致しました。なお、2015年8月末時点での国内における本剤の弊社在庫数は、月間出荷量の約2カ月分でありますことをご報告させていただきます。

http://glaxosmithkline.co.jp/press/pdf/tenozet20150831.pdf より)

なんと。ここでふと気付くのです、薬の製造国って気にしてないなぁって。今後、手にするものを片っ端から見てみよう。

日本肝臓学会の発表を見るに、テノゼットは長期処方もなされる薬のようです。影響の大きい患者さんもいらっしゃるのかも知れません。

会員の皆様におかれましては今般の事態につきご理解頂きご協力くださいますようお願いいたします。

具体的には、

  1. テノゼットの処方を新たな患者に対し開始することを控えること、
  2. 現在テノゼットを処方中の患者に対しては、長期処方を避け、一処方箋あたりの処方期間を短くする、

ことをご検討下さい。

テノゼット錠300の出荷調整に関するご協力のお願い|学会からのお知らせ|お知らせ|一般社団法人 日本肝臓学会 より)

自給率チャイナリスクでお騒ぎのみなさま、たまには医薬品のことも思い出してあげてください。

この話で驚いたのは、知的財産の塊のような新しい薬が中国で作られてるんだってこと。でも、よく考えてみれば、秘密である必要があるのは研究開発して特許を取るまでなのかな。医薬品の研究開発から市販までってちゃんと調べたことないや。まあ、これはそのうち授業で出てくるだろうから、積んでおきますかね。

ところでGSKって一般用医薬品やってないのかなーってふと思って調べたら、コンタックがそうなんですね。

看護雑誌で今夜も一杯 『日本看護協会機関誌 看護 2015年7月号』 第3夜 「できない」が導く誤解

まさかの第3夜。前2夜はこちら。

nsns.hatenablog.com nsns.hatenablog.com

引き続き肴は日本看護協会出版会 『日本看護協会機関誌 看護』 2015年7月号。

看護 2015年 07 月号 [雑誌]

看護 2015年 07 月号 [雑誌]

なお、今週の試験は乗り切りましたが、来週も引き続き試験。えっと、ほら、あれ、corporate social responsibilityだよ。corporateじゃないけど。

ここまでのあらすじ

  1. 医師と看護師の違いはできることです。
  2. 医師は診断と治療ができますが、看護師はできません医師法および保健師助産師看護師法で定められています
  3. 2015年10月から看護師にできなかった(本説明で言う)治療行為の一部 = 特定行為が可能になります
  4. 専門の研修を受ければ特定行為が可能になります
  5. 専門の研修を受けずに特定行為を実施することは禁止しません。すでに実施している看護師がいるからです。
  6. えっ? そもそも法で禁止されてるって説明してたよね?

特定行為に軸足を置いた話は前回で結着したと思っているのですが。それ故に生じる疑問「特定行為は(現時点で)看護師による実施が法で禁じられているとゆー嘘がはびこっているのはなぜ?」というところにメスを入れていきましょう。メスを入れるのは「禁止」なの?

またもや一般教養が現れた

予告通り、聞いてきました。相手は看護学校の教員としてチェッカーフラッグを受ける直前であり、この手の話では信頼できるであろうと思われる方です。

なぜ、看護師はなぜ特定行為を、例えば動脈穿刺をできないとされているのか。

  • 訓練を受けていないのだからできない。
    • たった3年*1でそんなことまでできない。
    • そのための専門の研修を受けるから、特定行為を実施できるようになる。
  • やりたくない。
    • 私も、できないことは断ったことがある。
  • 患者だって嫌でしょう?

さすが。これを聞いて答えが見えました。

なぜ、看護師はなぜ特定行為を、例えば動脈穿刺をできないとされているのか。法律で禁じられていると誤った説明がなされるのか。

能力としての「できない」を、禁止としての「できない」と混ぜてしまった連中の説明が主流になったから。

意外と単純なところに、そしてまたもやいつも通りのところに結着してしまいました。日本語力、そして法に対する意識が誤りの原因のようです。

ちなみに上述の質問、実は「違法ではない」という前提を踏まえて話そうとしたのですが、その辺はうまく行きませんでした。私の話し方のせいでもあるのでしょう。また、その入り口を自分で書いておきながら忘れていたのですが、法を改めて読み、改めて考えるなんて、不要と言われてしまう嗜みなんですよね。

誤解を当然に続けてしまうだけの理由が、他にもないわけではありません。この一連の記事では奇しくも動脈穿刺を例に挙げていましたが、かつて看護師は静脈注射も業務範囲を超えるとの行政解釈がなされていました。

2002年にその通知は改められることになりますが、この流れを「法改正」と捉えている風があるんですね。よって「法改正で静脈注射は許可されたが」とゆー発想です。

実際には特定行為について厚労省が違法性を指摘していないように、通知は静脈注射に対する解釈を示しただけで、他がどうこうは言っていないというのが、淡々と捉えた話になると思われます。

尤も、2002年に通知を改める前の厚労省調査によれば、病院の看護師においては9割以上が静脈注射を行っていたことを考えると、今回の特定行為に対する認識は不自然とも言えるのですが。

ま、この辺にしましょう。3夜も使って、まさに酒飲み話を続けてきました。「看護雑誌で今夜も一杯」とゆー名前の通り、私は一連の記事に「一杯を楽しむ」以外の意味を求めていません。だから3夜が楽しかっただけで満足なのですが。加えて、「承知しました」の一言で済んでしまう物事を自らの目で見直してみるってのは意外と楽しいよって、誰かに伝わったのなら儲けものかなと思っています。いつか乾杯しましょうよ!

次こそ最終、第4夜になります。勤務時間の話と、KYの話をしましょう。

*1:現在の看護学校を踏まえてのこと。

看護雑誌で今夜も一杯 『日本看護協会機関誌 看護 2015年7月号』 第2夜 看護師はなぜ動脈穿刺できないか

飲んで書いてる場合じゃねぇだろ、試験勉強しろ。ってわかってるんですけどね。やる気起きることからやるのがここでのたしなみ。

この記事は昨晩の続きですよー。

nsns.hatenablog.com

酒の肴は日本看護協会出版会 『日本看護協会機関誌 看護』 2015年7月号。酒は今日も角瓶 <黒43°>で作ったハイボール

看護 2015年 07 月号 [雑誌]

看護 2015年 07 月号 [雑誌]

安保だけじゃないんだからねっ

まずは昨日の特定行為について振り返りつつ、「矛盾がある」としていた部分の答え合わせを。

「具体的」とか言いつつスルーしていた、あそこなんですよ。

  1. 医師と看護師の違いはできることです。
  2. 医師は診断と治療ができますが、看護師はできません医師法および保健師助産師看護師法で定められています
  3. 2015年10月から看護師にできなかった(本説明で言う)治療行為の一部 = 特定行為が可能になります。
  4. 専門の研修を受ければ特定行為が可能になります
  5. 専門の研修を受けずに特定行為を実施することは禁止しません。すでに実施している看護師がいるからです。

特定行為について研修を必須とするか否かってのは、実は些末な話なんです。そう、強調した通り、できないはずのことをやっている看護師がいるってことです。でもそれ、保健師助産師看護師法でできないこととされているんじゃないの?

看護師のできることは保助看法で定められている。私の通う看護学校では当然のように説明されますし、ウェブを検索してみた感じでは他でも同様でしょう。結果、現役の看護師ですら保助看法で(あるいは医師法で医師のできることとして)定められていると理解しているようです。*1

これ、実際のところは誤りなんです。実際のところってのが肝で、確かに看護師の業務は保助看法「第四章 業務」で定められていますが、そんな細々具体的なことなんて書いてありません。「定められている」に期待するほどのことは定められていないのです。法律を多少なりとも学んだことがある方ならお察しでしょう。いや、今なら我らが安倍ちゃんのおかげで旬の話題でもあります。治療方法は日進月歩、法的安定性を得るためには法で定められないのです。*2

では保助看法がどうなっているかと言うと。この話題に関連しそうなのは第五条と第三十七条です。

第五条

この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

第三十七条

保健師助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

保健師看護師助産師法 より)

今まで用いてきた「診断と治療」に該当するのは「医師の指示なしに診療機械を使用、医薬品を授与、医薬品についての指示をすること」と「衛生上危害を生ずる恐れのある行為」ですか。何それ?

その答えは、概ね法令にはありません。これは私独自の見解ではありません。厚生労働省の見解でもあります。踏まえて延々と考えた結果が、件の特定行為なんです。と、わかったのはここまで遡って調べてからでした。

つまり、極端な話「傷病者の療養上の世話か診療の補助」って言えちゃえば何でもできるってことでしょう*3。その果てに、例に挙げた動脈穿刺も合法的に、お上に言わせても何ら問題なく行われているわけですね。

こうなると逆に、なぜ特定行為が今まで「禁止と流布されてきて、それが概ね守られてきたのか」が気になります。この状況があってこそ、特定行為の検討(の背景にある看護師を医師に近づける検討)が始まるわけで。特定行為というやり方が保助看法において筋が悪いように感じられる原因は、ここにあるんだと思うのですよ。この件は学生の立場を活かして先生にちょいと聞いてみようと思います。この問いに答えられそうな先生が一人、通ってる学校にはいるんですよ。

だいぶ寄り道をしてしまいましたが、私の特定行為に対する意見は先に申した通りです。専門の研修を受けずに特定行為を実施することは禁止すべきです。

これでも前職は某IT業界です、研修の受講と実際の腕とは別物だってことはわかっています*4。逆に、研修で最低限を確保しうることもわかっています*5。病院はシステムインテグレーターではありません。患者は病院を事実上選べません*6。最低限の品質確保に努めないとならないと思うのです。そして、努めていることを表すことで、患者のみなさんに安心してもらうことも大切だと思うのです。心身一元論が今時の医療だよね?

今更特定行為の部分だけどうこう言っても、ってのはその通り。しかも特定行為というやり方は穴を許容せざるを得ないやり方です。しかし何にせよ定めるのです。定めるならしっかりしないと。

って、おい、長ぇよ。今日はここまでにしたいよ。てことで、まだまだ続きます。

nsns.hatenablog.com

*1:保助看法に言及するのに保助看法を読まないの?」って思うあなたは、今や不要と蔑まれる文系学部を通ってきましたね? 医歯薬理工系の連中を舐めちゃいけない。大学や大学院まで通っているのに「日本国憲法? 名前しか知らないよ」ってのがあっちの常識だから。下位の法律に触れるなんざ夢のまた夢。私の経験上、だけどね。誤ってたらどんなに嬉しいことか。あ、もちろん全員がこうではない。変な奴はどこにでもいる。

*2:この理解が間違ってたらごめん。そのときは改めて勉強せねばならんな。なお、特定行為は保助看法から厚労省令を呼び出すお約束のやり方。

*3:極端な話ね。実際には医師法の側から見てどうかとか、積み重なってる判例等の法的条件があると考えられます。

*4:しかも私は研修が大嫌いでした。

*5:そもそも看護学校って、それだよね。

*6:セカンドオピニオン? ファーストはどうすんのよ? 倒れて運ばれる先は選べませんよね。

看護雑誌で今夜も一杯 『日本看護協会機関誌 看護 2015年7月号』 第1夜

久しぶりに書きますか、二杯目のハイボールを飲みながら。実はこれ、夏休み前にネタを仕込んでいたんですけど、本業があんなヤバいことになるとは。結局、明けて初日にやっと書こうかなと。今なお来週の試験に向けてヤバいんだけど。

今回のネタは日本看護協会出版会 『日本看護協会機関誌 看護』 2015年7月号。お堅いの選んだねぇ。

看護 2015年 07 月号 [雑誌]

看護 2015年 07 月号 [雑誌]

看護学校の図書室ですから、当然あるんですよ。看護学生や若手看護師が対象だと思われるものも。『クリニカルスタディ』と『エキスパートナース』はそれかな。なぜか『プチナース』はないんだけど。

クリニカルスタディ 2015年 09 月号 [雑誌]

クリニカルスタディ 2015年 09 月号 [雑誌]

プチナース 2015年 09 月号 [雑誌]

プチナース 2015年 09 月号 [雑誌]

でもさ、そーゆーの期待してる? 少なくとも私は私自身に、期待してないんですよ。

さ、今回もよくわからんからおすすめ特集を味わおう。

長いものに巻かれないからここにいるのデス

2つある特集のうち1つ、特集1は「専門性を発揮し国民のニーズに応える! 「特定行為に係る看護師の研修制度」始まる」。おお、これはおもしろそう。ナスたま1年生的には授業で触れていない(おそらく再来週出てくる)範囲ですが、業界的には熱いところで個人的にも注目しています。

当然これだけの雑誌ですから背景を知っていること前提で書かれています。その部分についてちょっと触れましょう。

突然ですが、医師と看護師の違いは何でしょうか。すごーく簡単に言うと、できることが違います。医師は診断と治療ができますが、看護師にはできません。と書くと、具体的な話を愛するみなさまは、診断と治療とは何かを問われるかと思います。そこを、互いのできることを定めているのが医師法であり保健師助産師看護師法(通称、保助看法)です。そしてこの保助看法が昨年改正になりまして、今年2015年の10月から、看護師のできることが増えることになりました。

しかし単純に「できることが増えたのでやっちゃいまーす」では、治療と診断という命がかかっている場面では不安です。そこで増える部分の実施に当たっては専門の研修を受けて、あらかじめ定められた手順書にしがたいましょうってことになりました。なお、この増える部分を「特定行為」と呼びます。

ちなみに手順書は「プロトコール」と呼びます*1。「てじゅんしょ」ではありません。ここは殴っていいところです。

閑話休題。特定行為にどんなものがあるかは日本看護協会のページ、「特定行為に係る看護師の研修制度」よくあるご質問をご覧あれ。わかりやすいところでは動脈穿刺でしょうか。血液検査には通常、静脈血が使われます。看護師さんが採血しているのはこれなんですが、詳細な分析のために動脈血が必要な場合があります。こうなると実は、看護師は採血できないんです。動脈に針を入れる行為は上述を踏まえれば治療と診断の一部。医師が行う必要があります。え、そうなの? 何かおかしくない? その感覚の延長線上にあるのが、この特集。

何らかの基準があって医師と看護師の境目を決めたはず。それを今になってどうして変更するの? それも「特定行為」だなんて筋が悪くないか? とゆー問いに真っ先に答えているあたり、現役看護師も同じ疑問を抱いているんでしょうね。

なぜ法改正を求めてきたか

本制度における特定研修を終了した看護師の導入は、医療の効率性・効果性の向上に貢献すると大きく期待されています。検討が行われてきた特定行為は、侵襲性の高い医行為であり、判断と技術において難易度が高く、患者の安全性を担保するために、そして実施者である看護師の安全に不安なく実施するには法制化が不可欠であると考え、保助看法の改正を国への要望活動とともに、検討会においても主張してきました。

(p.44)

わかる? わからないよね。わからないように書いているのには理由があるんですよ。ちょっとした続きがありましてね。

「特定行為を行うことはミニドクター化であり、看護の視点から逸脱する方向である」という意見をよくいただきます。一見、そう見えなくもありませんが、しっかり読み込むと、決して医師の代替えのためにつくあっれたのではないとわかります。

(p.44)

現状、医師が足りないと年中ニュースになっていることを思い出してください。医師が足りない。しかし医師の増産は難しいのです。増産については看護師も同じです。概ね(誰かみたいなおかしなヤツ以外は)10代の若者が、医師や看護師になっていくわけです。10代、減ってるよね? がんばったって無理がある。さてどうしよう。「Qu'ils mangent de la brioche!」ですよ、パンがなければケーキを食べればいい。相対的には数が圧倒的に多い*2看護師でどうにかしようぜ、とゆー話です。

記事では思いっきり否定されているんですが、どうにもこうにも、そーゆーことみたいです。今、看護学校に通われている方はきっと、そう聞かされてすらいるでしょう。あ、この部分については何を言われようと反応しませんからね!

間接的には米国を見ているってのもあるようです。尤も向こうのナースは診断も治療も可能なレベルにあるんですが。ここで遊びに行って仕入れた知識が役立とうとは。

nsns.hatenablog.com

しかし一足飛びに米国並みは無理なのでってことではなかろうと、私は見ています。制度が違いすぎて後追いのしようがない範囲ってのが、この辺ではないでしょうか。あくまで参考でしょうね。

あれー、ここまでいつもと違う調子じゃないですか。何か説明しちゃってますよ、私。そろそろいつもの調子に戻りましょ。

尤もらしい理由までこさえて行う制度変更、念願叶っての特定行為実施なんだと私も思っていたんですけど。違うそうです。

今回の制度変更でおもしろいのは特定行為の実施に当たって研修が必須じゃないってこと。研修で免許の限定解除なんて話じゃないんです。研修でお墨付きがもらえたりするわけじゃないんです。ん? どゆこと? って思ったら。

特定行為の全てについて、現状で看護師が実施している例があるそうな。暗黙にね。もし「免許の限定解除」扱いにしてしまえば、現状実施しているところで少なくとも短期的に(おそらく中長期的にも)「やっていたことができなくなる」不便が生じます。だから研修受講者による業務独占とはしない。って、この特集に書かれてるんですよ。日本看護協会の機関誌で書いてあるわけですから、同協会のページにも。実は先ほどのFAQページにあるんです。しかしこちらはみなさん読まれますからね、巧妙に隠してますよ。

Q3. 特定看護師になるためには、どうすればよいですか。特定行為研修を修了すると、特定看護師になることができますか。

A3. 法律上、「特定看護師」という資格はありません。2011年に取りまとめられたチーム医療の推進に関する検討会報告書「チーム医療の推進について」において、「特定看護師(仮称)」の提案がされましたが、その後の議論を経て創設された「特定行為に係る看護師の研修制度」はあくまで研修制度であり、新たな資格をつくる制度ではありません。

「特定行為に係る看護師の研修制度」よくあるご質問 より)

アホか。甘ったれたことをやっているから医療業界は人々の信頼を得られないし、事実として事故をなくせないんじゃないのか。子供たちに夢見て医師を目指してもらわないときに、こんな体たらくでどうするんだよ。

んあ? 現状の実施で救われている命はどうするのかって? 移行期間を設けたらいいじゃないか。

政治としていろいろあることは察します。しかし、日本看護協会が堂々とこんなことを言っていいのか。反対するぐらいじゃなきゃいかんのではないか。永遠の17歳となった今も青い私は、訴えてしまうわけです。3年後、長いものに巻かれてたら笑ってやってくれ。

暗い気持ちになりながら次に行こうかと思ったのですが、ここまででだいぶ長いな。ってことで、続きはまた今度。さらにもう一杯二杯と飲みながら認めることとしましょう。

あ、気付いている人もいるかも知れませんが、ここまででとんでもない矛盾が1つあるんですよ。それについても次回ね。

nsns.hatenablog.com

*1:プロトコールだそうです。JISではプロトコルだけど、ここ、工業界じゃないから。

*2:従事者数としては看護師も足りないと言われていますが。こちらは免許がありながら従事していない人を引っ張り出そうとしています。

「あ、同じ教科書ですね」は未検証

本日は夏休み最終日。私としたことが日本時間で締め切り前日に夏休みの宿題を終えてしまいました。

さて、本当はもうちょっと堅いことを書くつもりだったのですが予定変更。

この本見たら看護学

夏休みに宿題だけやってりゃいいなら、大した話じゃありません。休み明けて2営業日目から始まる試験に備えるのが重たいのです。とゆわけで、相変わらず家では勉強できない子なのでお外*1で勉強していると、ふと見かけるのです。

特徴的な表紙デザインの教科書を。

看護学概論―基礎看護学〈1〉 (系統看護学講座 専門分野)

看護学概論―基礎看護学〈1〉 (系統看護学講座 専門分野)

系統看護学講座 専門基礎 〔6〕―疾病のなりたちと回復の促進 微生物学 4

系統看護学講座 専門基礎 〔6〕―疾病のなりたちと回復の促進 微生物学 4

系統看護学講座 (別巻11)

系統看護学講座 (別巻11)

この本を開いている人は看護学生デスよ。

医学書院 系統看護学講座、通称「系看」です。看護師国家試験はこの医学書院の教科書を参考に作られていると言われており、シェアが高いであろう教科書です。私の手元にもたくさんあります。

Textbooks for the first grade in a nursing school

看護学生の教科書はシリーズでだーっとあるので表紙のデザインを揃えた方が綺麗ですし安上がりなんでしょうね。他社のものでも表紙デザインでわかります。

例えば私の手元で看護学の主力となっているメヂカルフレンド社。こちらも特徴的なデザインで、シェアが高いと思われます。

新体系 看護学全書 基礎看護学 基礎看護技術I (専門分野I)

新体系 看護学全書 基礎看護学 基礎看護技術I (専門分野I)

  • 作者: 深井喜代子,宮脇美保子,新見明子,兵藤好美,山口三重子,岩脇陽子
  • 出版社/メーカー: メヂカルフレンド社
  • 発売日: 2012/02/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
精神看護学概論・精神保健 (新体系看護学全書 精神看護学1)

精神看護学概論・精神保健 (新体系看護学全書 精神看護学1)

  • 作者: 佐藤壱三,清水順三郎,神郡博
  • 出版社/メーカー: メヂカルフレンド社
  • 発売日: 2011/12/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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新体系看護学全書 基礎科目 物理学

新体系看護学全書 基礎科目 物理学

他には南江堂かな。私の手元にはありません。

基礎看護技術―看護過程のなかで技術を理解する (看護学テキストNiCE)

基礎看護技術―看護過程のなかで技術を理解する (看護学テキストNiCE)

精神看護学―こころ・からだ・かかわりのプラクティス (看護学テキストNiCE)

精神看護学―こころ・からだ・かかわりのプラクティス (看護学テキストNiCE)

ヌーヴェルヒロカワはデザインが揃ってないんですよね。

看護学概論―看護とは・看護学とは

看護学概論―看護とは・看護学とは

考える基礎看護技術 (1) (基礎看護学)

考える基礎看護技術 (1) (基礎看護学)

とゆわけで、街中で看護学生に声をかけてみたい方は参考にしてください。そんなヤツいねぇよって言われそうですが。そうだよね、同業者ぐらいしかいないよね。

*1:だいたい弘前駅前公共施設 ヒロロスクエアで教科書開いてます。