夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

看護雑誌で今夜も一杯 『日本看護協会機関誌 看護 2015年7月号』 第2夜 看護師はなぜ動脈穿刺できないか

飲んで書いてる場合じゃねぇだろ、試験勉強しろ。ってわかってるんですけどね。やる気起きることからやるのがここでのたしなみ。

この記事は昨晩の続きですよー。

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酒の肴は日本看護協会出版会 『日本看護協会機関誌 看護』 2015年7月号。酒は今日も角瓶 <黒43°>で作ったハイボール

看護 2015年 07 月号 [雑誌]

看護 2015年 07 月号 [雑誌]

安保だけじゃないんだからねっ

まずは昨日の特定行為について振り返りつつ、「矛盾がある」としていた部分の答え合わせを。

「具体的」とか言いつつスルーしていた、あそこなんですよ。

  1. 医師と看護師の違いはできることです。
  2. 医師は診断と治療ができますが、看護師はできません医師法および保健師助産師看護師法で定められています
  3. 2015年10月から看護師にできなかった(本説明で言う)治療行為の一部 = 特定行為が可能になります。
  4. 専門の研修を受ければ特定行為が可能になります
  5. 専門の研修を受けずに特定行為を実施することは禁止しません。すでに実施している看護師がいるからです。

特定行為について研修を必須とするか否かってのは、実は些末な話なんです。そう、強調した通り、できないはずのことをやっている看護師がいるってことです。でもそれ、保健師助産師看護師法でできないこととされているんじゃないの?

看護師のできることは保助看法で定められている。私の通う看護学校では当然のように説明されますし、ウェブを検索してみた感じでは他でも同様でしょう。結果、現役の看護師ですら保助看法で(あるいは医師法で医師のできることとして)定められていると理解しているようです。*1

これ、実際のところは誤りなんです。実際のところってのが肝で、確かに看護師の業務は保助看法「第四章 業務」で定められていますが、そんな細々具体的なことなんて書いてありません。「定められている」に期待するほどのことは定められていないのです。法律を多少なりとも学んだことがある方ならお察しでしょう。いや、今なら我らが安倍ちゃんのおかげで旬の話題でもあります。治療方法は日進月歩、法的安定性を得るためには法で定められないのです。*2

では保助看法がどうなっているかと言うと。この話題に関連しそうなのは第五条と第三十七条です。

第五条

この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

第三十七条

保健師助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

保健師看護師助産師法 より)

今まで用いてきた「診断と治療」に該当するのは「医師の指示なしに診療機械を使用、医薬品を授与、医薬品についての指示をすること」と「衛生上危害を生ずる恐れのある行為」ですか。何それ?

その答えは、概ね法令にはありません。これは私独自の見解ではありません。厚生労働省の見解でもあります。踏まえて延々と考えた結果が、件の特定行為なんです。と、わかったのはここまで遡って調べてからでした。

つまり、極端な話「傷病者の療養上の世話か診療の補助」って言えちゃえば何でもできるってことでしょう*3。その果てに、例に挙げた動脈穿刺も合法的に、お上に言わせても何ら問題なく行われているわけですね。

こうなると逆に、なぜ特定行為が今まで「禁止と流布されてきて、それが概ね守られてきたのか」が気になります。この状況があってこそ、特定行為の検討(の背景にある看護師を医師に近づける検討)が始まるわけで。特定行為というやり方が保助看法において筋が悪いように感じられる原因は、ここにあるんだと思うのですよ。この件は学生の立場を活かして先生にちょいと聞いてみようと思います。この問いに答えられそうな先生が一人、通ってる学校にはいるんですよ。

だいぶ寄り道をしてしまいましたが、私の特定行為に対する意見は先に申した通りです。専門の研修を受けずに特定行為を実施することは禁止すべきです。

これでも前職は某IT業界です、研修の受講と実際の腕とは別物だってことはわかっています*4。逆に、研修で最低限を確保しうることもわかっています*5。病院はシステムインテグレーターではありません。患者は病院を事実上選べません*6。最低限の品質確保に努めないとならないと思うのです。そして、努めていることを表すことで、患者のみなさんに安心してもらうことも大切だと思うのです。心身一元論が今時の医療だよね?

今更特定行為の部分だけどうこう言っても、ってのはその通り。しかも特定行為というやり方は穴を許容せざるを得ないやり方です。しかし何にせよ定めるのです。定めるならしっかりしないと。

って、おい、長ぇよ。今日はここまでにしたいよ。てことで、まだまだ続きます。

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*1:保助看法に言及するのに保助看法を読まないの?」って思うあなたは、今や不要と蔑まれる文系学部を通ってきましたね? 医歯薬理工系の連中を舐めちゃいけない。大学や大学院まで通っているのに「日本国憲法? 名前しか知らないよ」ってのがあっちの常識だから。下位の法律に触れるなんざ夢のまた夢。私の経験上、だけどね。誤ってたらどんなに嬉しいことか。あ、もちろん全員がこうではない。変な奴はどこにでもいる。

*2:この理解が間違ってたらごめん。そのときは改めて勉強せねばならんな。なお、特定行為は保助看法から厚労省令を呼び出すお約束のやり方。

*3:極端な話ね。実際には医師法の側から見てどうかとか、積み重なってる判例等の法的条件があると考えられます。

*4:しかも私は研修が大嫌いでした。

*5:そもそも看護学校って、それだよね。

*6:セカンドオピニオン? ファーストはどうすんのよ? 倒れて運ばれる先は選べませんよね。