夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

あなたがいないと世界が動かないとでも思ってるの?

と、ツンとした子が言ってくれたら少しは変わるのでしょうか。

あけましておめでとうございます。新年1本目は、流行中のインフルエンザに対する薬について。新年らしく「ゆっくり寝てようよ」って話です。

数字にすると効果が薄い抗インフルエンザ薬

インフルエンザに対する新薬「ゾフルーザ」が絶好調のようですね。日本における2018 Q3の売り上げシェアで65%だとか。患者から見れば2回×5日間も飲まなければならないタミフルに比べ、1回×1日間で済むゾフルーザの方が嬉しいのは確かでしょう。

それを言うなら抗インフルエンザ薬を使わなければ0回×0日で楽々だよ! って話だと思うのですが、みなさん抗インフルエンザ薬を欲しがります。2017年度は金額で47.9億円、個数で1,316万回治療できる分の抗インフルエンザ薬が売れたそうです*1。うあ、日本国民の1割が抗インフルエンザ薬を使っている計算になりますね。しかもこの薬の金額だけで国民医療費の0.1%ですよ。じゃぶじゃぶだ。

インフルエンザは典型的に、発症から1~3日程度、38℃以上の高熱が続くとされています。抗インフルエンザ薬はこの高熱期間を1~2日に短縮する程度の効果しかありません。インフルエンザウイルスを殺す効果はありませんから、解熱しようと何だろうと最低5日間程度の自宅安静が求められます。薬だけの自己負担分ですらタミフルで約800円、ゾフルーザで約1,400円と安くはない薬を飲んでまで、1日早く熱を下げたいのでしょうか。熱が下がった中で寝ていたいということなのでしょうか。

と、正論を並べたところで、某IT業界でサラリーマンをやっていた私は存じておりますよ。「仕事を5日間も休めない。早く治して早く出勤しないと」って声が抗インフルエンザ薬を欲していることを。改めて言っておきましょう。現在の抗インフルエンザ薬は「治す」薬ではありません。熱が下がっても出勤しちゃダメ。ゼッタイ。 知らないふりしてもダメです。

禁断の比較表に見る抗インフルエンザ薬

それでもやはり抗インフルエンザ薬を飲んだ方が安心。ちゃんと自宅安静を守る人たちの中でも、そんな気持ちがあることはわかります。私も以前は、ちょっとした風邪でもとにかく薬を飲む方でしたから、よくわかります。そんな私が「薬? 治らないのに? 無駄遣いでしょ」って考えるようになった頭の中を、ここに紹介しましょう。あなたが「薬が不要なのはわかっているけど」という考えでしたら、「薬は不要だからいらない」と踏み出す勇気になるかなと思います。

内服品 抗インフルエンザ薬 お菓子やジュース等、好きなもの
自宅安静期間 最低5日間程度 最低5日間程度
高熱期間 1~2日 1~3日
おいしい
好きなものを選べる
病院に行く時間の節約
院内感染の完全な予防
薬剤副作用の完全な予防
国民医療費削減への貢献
耐性ウイルス出現予防への貢献
治療費 約1,000円~ 0円
あの子に看病してもらえる可能性*2

小児や高齢者、妊婦、病気を患う方は話が別ですが。インフルエンザ以外に病気のない成人でしたら、おいしいものでも食べてゆっくり寝ましょうよ。インフルエンザにかかった現実は変えられません。その上で、余っている年休の使い時、何もせずに寝ていられるなんて最高だと考えてみては。

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*1:Quick「インフルエンザ 変わる治療薬の市場―ゾフルーザがシェア拡大 タミフルには後発品登場」の情報から算出。抗インフルエンザ薬はタミフル, ラピアクタ, イナビル, ゾフルーザの4種で、リレンザは含まず。つまり、実際にはリレンザ分がさらに多く売れてます。

*2:高熱で寝込む期間に準ずる。あくまで可能性。感染の機会を増やすからそーゆー看病はどーなのよってのもあるけど。