夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

EBMと言ってるうちはなされない

明けましておめでとうございます。手洗いのおかげかはわかりませんが感染症にやられることもなく本業の修羅場を乗り切りまして、弘前にてゆるゆる過ごしております。

さて、前回の続きです。

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答えは手首

手首を洗うか否か。

日本の医療方面では、もちろん看護教育においても、手指衛生では手首も洗えとされています。むしろ強調されているほどです。

しかしWHOのおすすめでは手首が含まれません

実は私も、昨年の11月まで、この事実に気付きませんでした。自分の手洗い手順がどうも崩れている気がして、WHOのページを見たときに「あれ?」と。しかしWHOが主張するには根拠があるはずです。ハムを颯爽と発癌物質にぶっ込んでくるWHOなのです、冷徹なまでに根拠に基づいた方法を推奨しているに違いありません。

そこで調べてみたところ、出てきました。英国のNational Clinical Guideline Centreが2012年に発行した「Infection: Prevention and Control of Healthcare-Associated Infections in Primary and Community Care」にドンピシャ、手首を洗うか否かについて記されています。

  • Should wrists be washed?

(中略)

Although current practice is that wrists should be washed as part of hand decontamination, there is uncertainty as to whether there is evidence to support this. In addition, there is a need to identify an end point to the areas of the hand to be included.

(「Standard principles for hand decontamination - Infection: Prevention and Control of Healthcare-Associated Infections in Primary and Community Care - National Library of Medicine - PubMed Health」 より)

さすがはWHO、根拠に基づくことを徹底してらっしゃる。

EBMの仮面 vs. EBMの権化

このblogでも何度か触れたかと思いますが、今や日本の看護、医療方面ではEBMを重視しています。Evidence-Basede Medicene、根拠に基づいた医療。英語であることからもわかるとおり輸入品なのですが、まともに輸入できないのはこの界隈の癖なのでしょうか。キホンのキ、手指衛生にすら輸入失敗が出てしまったようです。

これも繰り言かなと思いますが、少なくとも看護におけるEvidenceは出典程度の意味になっていて、下手すると先に挙げたサラヤのページに書いてあったとかなかったとかそのレベルに落ちます。看護の教科書には大量に出典が記されていますが、自著を差していることも少なくありません。

残念ながら看護教育の現場で、WHOの推奨を持ってきたところで通用しないでしょう。看護の現場に出てどうなるのかは楽しみなところですが、これまた何度も言うように、一般教養の問題ですからねぇ。「わかってくれないひとにはやさしくウソつこう」*1ってのは大切ですな、残念ながら。

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*1:横山智佐「ぼくはもっとパイオニア」より。