夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

看護雑誌で今夜も一杯 『精神看護 2015年5月号』

1週間経つの早いですねぇ。いつまで週刊でいけるのだろうかと思いつつ。目下今週は道楽でこれ書いてないで、さっさとレポートを書けって感じなんですが。道楽を失うのは最期でいいのさ。

今日の肴は医学書院から隔月刊として発行されている「精神科医療従事者のための総合情報誌。」最新号、『精神看護 2015年5月号』です。「モーニング娘。」世代なのかなと思いつつ雑誌を眺めると、第18巻。1998年かな、本当にそんなもんかも知れません。注文カードがバッサリと挟まったままで、誰も読んでない感が溢れるチョイスです。

言うまでもなくナスたま1年生、やっと2が月経ったというところでは精神科医療なんてさっぱり。またまた全くわからない、味の楽しみな肴ですね。こんなときはおすすめを頼むぜってことで特集2本を楽しみましょう。

今日はアサヒスーパードライ ドライプレミアム 煎りたてコクのプレミアム。ビールは好きじゃないんですが、飲んだことないのは飲んでみなきゃわからないと言って、毎回やっぱりねとなる...。けど、これは割とうまいな。今さっき蹴り飛ばしてだいぶ減っちゃったけど。

お局様になれない私より

特集1は「A子がWRAP[ラップ]を作ったら」ですが、アクロニムのせいで全くわかりません。WARPと言われればOS/2なんですけどね。その筋でも一般的ではないのか、何よりも先に、アクロニムがバラされます。

WRAP(ラップ)とは、Wellness Recovery Action Planのこと。

「元気でいるために、そして気分がすぐれない時に元気になるために、また自分で生活の主導権を握り、自ら望むような人生を送るために、あなた自身でデザインするプラン」だと説明されています。

(p.219)

わかりますかね? わかりませんよね。元々は精神疾患を持つ方によって開発されたものらしく、ザックリ言えば自己管理方法です。ああ、どこかからセルフマネジメントって聞こえてきそうですが無視しましょう。

  1. 「いい感じの自分」を設定
    • 5つの観点から導く
      1. 希望(嬉しいこと、嬉しいと感じるとき)
      2. 自分の責任(行動選択時に重視すること)
      3. 学ぶこと
      4. 自分のために権利擁護すること
      5. サポート
  2. 「いい感じの自分」を維持するための方法を立案
    • 単純に維持する方法
    • 「いい感じの自分」であるか否かの指標
    • 維持を妨げる要因と妨げを

ああ、製造方面で言う危険予知*1みたいな? そっち方面でなくても、管理と呼ばれる作業では入ってくる要素ですね。そいつを人生、まずは己の人生に適用するってのも新しいわけではありません。私が風邪を引かない(ように見えているらしい)のはバカだからってのもありますが、この管理手法のおかげでもあります。

おそらく、精神疾患を持つ方に適用、しかも自身で活用するってのが画期的なのでしょう。もちろん精神疾患を持つ方にも豊かな生活を目指す自由があります。と心から言える人は未だに少ないでしょうし、日本における精神科病棟は隔離もっと言えば排除のための場所だった側面もあります。WRAPは米国発祥らしいのですが、日本じゃ画期的だと思いますよ。

ここまで淡々と書いていますが、私はこの記事、大盛り上がりで熟読しちゃいました。その理由は、この記事の構成です。WRAPを説明するために物語が組まれています。ある架空の看護師が挫折からWRAPを通して成長する。この架空の看護師が傑作なんですよ。

  • A子(35歳)
  • 既婚、子供あり
  • 看護学校卒業後(22歳かな)から精神科一筋
  • 大学病院、精神科単科病院(管理職)を経て、精神科特化訪問看護ステーション(チームリーダー、管理職候補)に
  • 論理的に説明するのが得意
  • 医学、薬学の知識も豊富
  • 患者に対する履歴からの診断的意見が極めて的確
    • 評価が高い一方、患者を中心に苦手と言う反応もある
  • 上司および周囲からの評価を重視

これは目が離せませんよね! こんな子がいたらつい構っちゃうよね。既婚ってのが意外ですが、この業界における現実味を出しているのかな*2。それでもまだまだ典型的なお局様。そんなA子がある患者とうまく行かない中で余裕をなくし、チームではお局様度を増し、負の連鎖とばかりに患者への対応もキツくなり訴えられちゃいましたと。応訴すれば勝てる内容ながら和解を選び自信をなくすA子を育てるべく、訪問看護ステーションの所長がA子をWRAPの集合研修に放り込むという展開。

一ノ瀬かおる氏によるイラストも秀逸で、ドレスを着込んだハートの女王様が、生成りのワンピース姿に変わっていくのはなんとも。女王様な彼女も好きだけどね! A子の可愛さに乾杯。

私は極度と言ってもいいほどの男女平等論者ですが、現実は見ているつもりです。幸か不幸か、女性は己を知らなくてもそこそこ勝てちゃいますよね。A子みたいな人って周囲(の特に男性)からはお姫様というか、腫れ物というか、そーゆー扱い。Handle with careって貼られてるんですよ。だから多少おかしなことやってても大目に見て、業務に利益をもたらす部分だけで評価してあげる。してあげると言うより、そうすることで面倒を避けてるとも言えるんだけど。

お局様、お姫様。男性向けに対応する表現って使われないよね。やはり幸か不幸か、男性はそーゆーのが許されない。

だから私は、WRAPで楽しい明日を掴もうとしているみなさまに伝えたい。彼を知り己を知れば百戦して殆うからず。不得手は自ら飲み込んじゃおうよ。

とにもかくにも、創作意欲が刺激される特集でした。え、そーゆーまとめ?

知らない世界に踏み出す私より

特集2は「自分の病院に合った、持続できるクリニカルパスの作り方」。やっとアクロニムでなくなったけどカタカナもわからない。とゆわけで解説を探すべくパラパラとめくると、衝撃の記述が。

クリニカルパスのルーツ

まず、クリニカルパスとは何か、という話です。そのルーツを紐解くと産業界にあり、1950年代に考案された「クリティカルパス」だといわれています。

(p.262)

はい、終了。解散。

と言いたくなりますな。だいぶ軟らかい表現ですが、わざわざクリティカルパスは何かを2/3ページも使い、図解入りで解説されています。要は、そのものなのでしょう。実際、クリティカルパスの名で使っている現場もあるそうです。

「看護雑誌で今夜も一杯」企画における今年の流行語は「一般教養」で決まりだね。また一般教養ですよ。さすがはコメディカルと自称する看護方面、笑わせてくれます。引きつった笑いだけど。

クリティカルパスを扱っている人なら気付くはず。クリティカルパスは最も時間がかかる見込みの工程を示しているだけですから、「持続できるクリニカルパスの作り方」は意味不明です。

クリニカルパスあるいはその筋でのクリティカルパスとは、本来の意味でのクリティカルパスを考慮した治療および看護計画のことを示すようです。早い話、形で言っちゃえばWBSガントチャートだよ。

クリニカルパスではそれぞれの病院独自のパスシートなる表を作って使うようですが、これ、どうなんかなー。実績のあるプロジェクト管理ツール、例えばMicrosoft Projectを基礎にした方がいいんじゃねぇの? 例に挙がっているシートを見ても、依然そんな気がします。クリティカルパスが当然である業界でもそうなんですが「これが最良なんだ」で独自のExcelシートを持ってくると、そいつの維持費用がバカにならん。夜遅くまでシートの編集に力入れてる方々、いましたからね。所詮は紙に表を書いている程度なので、計算や変更に対する柔軟性も低く、何を管理するのに苦労しているんだかわからなくなるんだよ。

クリニカルパスのパスシートがどんなものか興味がある方は、この特集でも紹介されていた桶狭間病院藤田こころケアセンターさんが自作シートを公開されているので、ご覧になってみてはいかがでしょうか。まさにそれよ。

www.seishinkai-kokoro.jp

.xlsxってのがお笑いだよね。.mppでもいいじゃない。

特集1は素晴らしかったんだけどなぁ。後味がわるかった。でも他の記事も結構おもしろくて、これで1,404円ならおすすめできる酒の肴です。

ではまた、来週? 再来週? もっと先?

*1:KY。これはアクロニムなのか?

*2:身の回りからの推測。