夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

名前は書けた? 稚内看護は0.37倍

今年も最北端、稚内にある稚内高校衛生看護科の入試倍率を肴にしましょう。今年の試験は日付が変わって一昨日、3月2日。先週あたりから気温も上がり穏やかな日が続いておりましたので、今年の受験生は合格者しかいませんね。そう、名前が書けたかが大切なのです。

過去の肴はこちら。

2023年、稚内看護は依然低調な0.37倍

稚内高等学校 衛生看護科 入学者選抜状況

募集人員 推薦標準枠 1次*1 出願者数 *2 1次 受検者数 *3 1次 倍率 1次 合格者数 2次 受検者数 2次 合格者数 入学者数 1次推薦 受検者数 1次推薦 合格者数 1次 一般募集人数 1次一般 出願者数 1次一般 倍率
2023 40 20 13 27 10 0.37
2022 40 20 16 16 0.40 16 0 0 16 6 6 34 10 0.29
2021 40 20 27 27 0.68 27 0 0 27 15 15 25 12 0.48
2020 40 20 24 24 0.60 24 0 0 24 11 11 29 13 0.45
2019 40 20 42 42 1.05 40 0 0 40 9 9 31 33 1.06
2018 40 20 39 38 0.95 39 0 0 39 25 20 20 19 0.95
2017 40 20 53 53 1.33 40 40 23 20 20 33 1.65
2016 40 20 36 35 0.88 35 1 1 35 20 20 20 16 0.80
2015 40 20 33 33 0.83 33 0 0 33 17 17 23 16 0.70
2014 40 20 39 39 0.98 39 0 0 39 18 17 23 22 0.96

北海道教育委員会「高等学校入学者選抜情報」をデータソースとして、「1次 倍率」列および「1次 一般募集人数」列以降は手元で算出、その他はそのまま引用しています。「1次推薦 合格者数」列までデータソースのままとした列順です。2021年の推薦合格者数は「推薦入学確約書提出者数」を入れています。

1次一般で0.37倍、昨年比では微増。当blog観測史上最低の更新は免れたものの、依然として極めて低調です。

稚内高校 衛生看護科 1次一般倍率推移

ちなみに今年も宗谷管内で1.0倍を超えた高校はありません。最高は0.88倍の稚内高校商業科。同普通科が次点で0.75倍。普通科がそれなりの数字なのはともかく、毎年商業科ががんばってるんですよね。この辺は少し深く考えてみるとおもしろいかも知れません。

それでも衛生看護科が維持される理由

定員の半分の確保がやっとなら廃止しちゃえよ、税金の無駄遣いだろ、と思ったけど、まあ20人いれば困ることないか。もちろん教育に金をかけることに異論はなくて、あまりに少ないのだったら奨学金握らせて札幌にでも集めた方がいいよね。でも、そんなことには絶対ならない。10人ぐらいまではがんばるんじゃないかな。

なぜ? そんな話をどこかでしようと思いつつ1年近くが経過したのですが。今もなお学位取得に必要な学修成果レポートに忙しいので、落ち着いたら。


お、社会人入試特集があるんだね。

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*1:1次試験は言い換えれば前期日程。2段階選抜ではありません。

*2:1次 出願者数 = 推薦合格者数 + 一般出願者数。おかしく感じるけど、数字を見る限りこういうことみたい。

*3:1次 受検者数 = 推薦合格者数 + 一般受検者数 。1次 出願者数に準ずる。

第112回看護師国家試験を味わう(1) 洗練された試験問題

去る12日に実施された看護師国家試験。今年もゆるりと味わっていきましょう。

昨年、一昨年と当日の夜か、翌日かには1本目の記事を書いていたのですが、今年は出遅れました。試験問題が見つからなくて。これまでずっとメディカ出版が素っ気ない解答速報ページに載せていた問題を利用していたのですが、今年は同社も「メディカ史上最速」と銘打って解答速報に力を入れて綺麗なページを用意したんですよね。追い出されましたね、何となくあった問題PDF。こうなると弱小プライベーターの私は困ってしまうわけですが、彼らは我々を見捨てなかった。看護教員向け支援サービス ラポールで登録すると問題をもらえるよ。ありがとう、お礼にFitNs.契約するからね。

改めて目的を与えられた試験問題たち

今年もクリアカットな問題が並ぶ傾向は変わらず、昨年に比べてもさらに明快な問題と解答になったという印象。疑義を感じた問題はありませんでしたね。COVID-19が現れるまでは実習経験から考えさせる問題を試し始めていましたが、COVID-19の大流行で実習がほとんどできない受験生も現れてからは単純に知識を問う問題を並べることに舵を切っていました。今年もその方向に進んでいる、まさに進んでいる。昨年まではとにかく暗記した知識を暗記したままに吐き出して解く問題が多かったのですが、今年は多少考える部分を入れてきたり、臨床で役立つところを選んできたりしています。昨年までは問題を途中まで読んだだけで答えていましたが、今年は問題を全部読んで答えることになったとも感じました。とはいえ悩むほどのことではなく、午前午後とも1時間ずつで終えられました。

同じ知識を問う問題でも大幅な書き換えを伴っているものがあり、その書き換えの目的は学ぶべきものが学べているかを測ろうとしているように見えます。問題がやや難化したとの声を聞きますが、これを難しいと感じるようなら受験戦略に誤りがあるのでは。なんて言えるのは試験が好きな趣味の連中だけなのかもしれませんが。

令和2年(2020年)の衛生行政報告例における看護師の就業場所で、医療機関(病院、診療所)の次に多いのはどれか。

(第112回看護師国家試験 午前9より)

一番多い就業場所が問われ続けていましたが、この手の問題は一番を覚えて欲しくて作られているわけではありません。統計の概観を押さえて欲しいわけですし、統計という結果、現状と方針、政策との関係を考えて欲しいわけです。病院から地域へと言う方針も含む、訪問看護ステーションを正解に据えた素敵な書き換えです。

令和元年(2019年)の0歳男児の平均余命はどれか。

(第112回看護師国家試験 午後1より)

午後1と言えば平均寿命と言うぐらいに近年よく平均寿命の問題が出されていました。平均余命と平均寿命の定義についても問われることがありました。しかしこの2つを組み合わせたのは初めてで、この見た目の問題は初めてでしょう。しかしこの高齢化社会で、平均寿命をみるときに看護師が念頭に置くべきなのはまさにこれですよね。85歳の男性を前にもう死ぬ時期と考えるべきではありません。

教養には点数をくれなかった

毎年注目している一般教養問題ですが、今年は見当たらず。240問もあるのだから遊び心を魅せてよとは思いますが、上述の通り洗練された試験を目指して作られたようで、まあ仕方ないところですかね。

我、勝利する

ここまであえて一言も触れておりませんでしたが、予想問題、完全勝利を手にいたしましたよ。いやー、よい読みでしたね。詳しくは次の記事で。


これで勝ちました。

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第112回看護師国家試験 予想問題3問(看護師(17)編)

今回はコロ休みを利用して早めに作ってみました。第112回看護師国家試験、予想問題3問です。

昨年までの分はこちら。

今回112回からは出題基準が変わり、厚生労働省医政局看護課『保健師助産師看護師国家試験出題基準 令和5年版』が適用されます。示されている概要から注目すべき点を挙げますと。

【必修問題】

○習熟度や難易度を考慮して、必修問題として問うべき内容の精査を行った。また、年の教育現場及び臨床現場の実態を踏まえ、感染防止対策に関する項目の充実を図った。

「習熟度や難易度を考慮して」とあえて書いてあるのは何なんですかね。ちょいちょい出る難度を理由にした採点除外等を減らしていこうという意気込みでしょうか。あれ、点数調整用だと思っていたんですが、違うんですかね。

「感染防止策」は言うまでもなくCOVID-19の影響でしょうね。今度こそ個人防護具の着脱順が出る、かも知れない。

【在宅看護論/地域・在宅看護論】

○改正後のカリキュラムでは、「在宅看護論」が「地域・在宅看護論」に変更となり、科目の位置づけも変更となるが、改正前のカリキュラムの「在宅看護論」と改正後のカリキュラムの「地域・在宅看護論」の双方において適用する内容とするため、制度改善検討部会報告書における「看護師国家試験の試験科目を改正する省令(保健師助産師看護師法施行規則の一部を改正する省令)が施行されるまでの間、出題基準に『在宅看護論』を併記することが必要である」との指摘も踏まえ、表題を「在宅看護論/地域・在宅看護論」とし、位置づけは改正前のカリキュラムにそろえることとした。

○地域における多様な場における対象者や看護の役割の拡大を踏まえて項目の充実を図った。具体的には、地域・在宅看護の対象である在宅療養者及び家族の特徴と健康課題について、対象を取り巻く環境や地域での生活を含めた理解を問うとともに、地域における多様な場での看護の役割や多職種連携について、全体的な体系の再構成を含めて項目を整理・追加した。

最大の変化は在宅。科目が変わっていますからね。示されている「保健師助産師看護師法施行規則の一部を改正する省令」によれば国家試験への適用は来年、第113回からです。なら今回は関係ないかというと、そもそも科目が変わったところで教科書が変わっていないという現実があり、要される内容としては今回も次回以降も、もっと言えば前回も変わらないのでしょう。「項目の充実を図った」って言い方もありますし、問題数として増やすってことかな。そもそも厚労省は半ば慢性的な高齢者医療の提供場所を病院から自宅に移したがっており、在宅の問題は増加していくだろうと見られていたので既定路線ですね。ただ、問題にするとなると制度中心にならざるを得ない内容に感じますので、どう出してくるのかは見物かなと。その辺を織り込みながら予想もしたいですね。

さて、今回は学位取得に向けて新たな教科書を読んだりもしましたので、そこで気になった(と記憶が残っている)あたりで問題を作っていきましょう。

予想問題1 老年/地域在宅

問題1

対象者を一人の人として尊重し、その人の立場に立って考えて行われるケアはどれか。

  1. ベストサポーティブケア
  2. パーソンセンタードケア
  3. レスパイトケア
  4. エンドオブライフケア
  5. グリーフケア

正解1

2

解説1

まあ正解の通りですとしか言いようがないのですが。Thomas Kitwoodのperson-centered careです。内容的には老年と地域在宅にかかってくるところなので、出題基準的にも大変おいしいところかと思います。

1, 2は国家試験ではまだ出ていないはず。逆に3, 4, 5は出ていますね。

Best supportive careは看護学生的にはなじみがない言葉かも知れないのでこの機に押さえておきたいところ。要は緩和ケアなのですが、流行り廃りの問題で今の現場ではBSCと言われることが多いと感じます。私の学生時代にはpalliative care/therapyという表現で見かけました。それぞれ根っこが異なるものの、現時点で行われることは同じく緩和ケアです。

予想問題2 看護学全般

問題2

バイオサイコソーシャルモデルにおけるバイオの側面に該当する患者状況を示す情報はどれか。

  1. IADL
  2. 生活の満足度
  3. 住環境
  4. 友人関係

正解2

1

解説2

BPSモデルとも呼ばれるらしいですよ。まうまう。

1がバイオ、2がサイコ、3, 4がソーシャルに該当します。患者に関する情報はなんであろうとこの3つの側面のどれかに該当してしまうので、適切/不適切を問う問題は作りにくいですね。そこがこのモデルの価値でもあるのですが。

Biopsychosocial modelはGeorge Libman Engelが1977年にbiomedical modelに対する形で提唱したもの *1 で新しくもないのですが、私が看護学生だった頃の教科書で見かけた覚えがありません。国家試験問題でも見たことがありません。ざっととぐぐった感じですと、日本では2010年代後半から流行っているんですかね。今年度履修した精神看護学には出てきており、地域在宅や統合も含めあらゆる領域に関わってくる考え方でもあるので予想問題にしてみました。

なお、カタカナでは「バイオ・サイコ・ソーシャルモデル」と書かれることが多いようですが、上述の通りbiopsychosocial modelですので「バイオサイコソーシャルモデル」あるいは「バイオサイコソーシャル・モデル」が適当でしょう。

予想問題3 地域在宅/統合

問題3

自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、損害を最小限にとどめつつ、ケア等の事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画はどれか。

  1. アドバンス・ケア・プランニング
  2. ビジネス・コンティニュイティ・プラン
  3. 新エンゼルプラン
  4. ゴールドプラン

正解3

2

解説3

「事業継続計画 <BCP>」って表記になるだろうなとは思いましたが、ACPが「アドバンス・ケア・プランニング」として国家試験に出てきていましたので揃えてみました。Google先生に聞いてみると、世間では意外と「ビジネス・コンティニュイティ・プラン」という表記もなされているんですね。なお、問題の定義文には中小企業庁1.1 BCP(事業継続計画)とは」の説明をほぼそのまま使っております。

BCPはあらゆる事業にあってしかるべきものなのですが、看護を含む医療方面ではやや弱い印象があります。どうしてもIT方面を念頭に置いてしまうためそう見えるのもあるのでしょうが。実際に現在のCOVID-19大流行により事業継続が困難な状況が生じているところを見るに、やはり弱いのでしょうね。流行度合いから手が空いた時期もあったのに何をしていたのかなと。

看護方面では訪問看護BCPという言葉が出てくる頻度が高いようで、領域的には地域在宅で扱われています。看護管理でも出てくるよねと積まれた医学書院の教科書『看護サービス管理 第5版』を見てみましたが、索引には出ていませんでした。お寒い事業継続状況の原因はこの辺かも知れません。この現状が望ましいはずもなく、国家試験で問われる可能性はあると予想します。

いつものおまけ

マークシート試験ではちょっと高級な鉛筆がおすすめ。軽くなめらかに太い線が描けます。結果として早く試験を終えられる、つまり、集中力が高いままに問題を解ける可能性が高まるのでこの道具選びは重要。

鉛筆3本と消しゴム1個、手堅く1勝した昨年の私も同様の布陣で挑みました。

製品出荷状態では鉛筆がしっかり削られていますが、前日にでも、当日試験会場ででも、サラサラと線を書いて丸めるべし。マークする部分は結構面積ありますから。

今回の予想問題記事はここまでです。受験生のみなさん、試験終了まで何卒ご安全に。

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脱げばわかる、救急車を呼ぶべきか

COVID-19大流行の最中、タクシー代わりの救急ではない救急要請、119番が救急現場を困らせているとのニュースはみなさまご覧になったことがあるかと思います。本当に困りますね、なんて言うと決まって「どんなときなら呼んでいいんだよ」的な反応があるんですよね。そして救急車を呼んだ方がよかった経験談が並べられ、やっぱり念のために呼んだ方がいいみたいな流れに。それでは現状は変わらない。どんなときなら救急車を呼んでいいのか。私は今日、その問いに明確な回答をいたします。

An ambulance is coming

全裸であっても救急車に運んでほしいか

これです。本当に救急救命が要される場面では全裸だろうとコスプレ中だろうと救急車に運んで欲しいですよね。何であれ、死ぬよりはましというやつです。

踏まえて、救急要請の妥当性判断の基準として「全裸でも救急車に運んで欲しいか」、「服を脱がされるが救急車に運んで欲しいか」と考えてみましょう。実際に服を脱がされることはそうありませんが。

実はこの基準、惨憺たる現場の逆説的な話なんです。しっかりと身なりを整えて救急車に乗ってくる人っているんですよね。消防、救急車は119番を呼んだ自称要救助者を無視することができません。そこを悪用してのタクシー代わりなのですが、タクシー代わりにしている人にはその自覚がない。なんて指摘されると、御仁は「どんなときなら呼んでいいんだよ」と偉そうに言うわけですよ。返してやりましょうよ、着替えられないなら呼んでいいと。

もちろん物事には例外があります。特に交通事故や転落事故等の外部から強い力が加わる外傷、高エネルギー外傷では無条件で、たとえ無傷に見えて元気に動けても救急要請しましょう。

ちなみに私は旅行中、顔面冷たく、冷汗しっとりという状態で倒れ込んだことがあります。そのときは見事に裸だったのですが、回復しなければ救急車だなと思いつつ心配したのは携帯電話に手が届かないってことでした。やっぱり服のことなんて考えませんよ。幸いそのときはおそらく迷走神経反射で、しばらく倒れていた後に回復したので救急要請しませんでしたけど。それがよいかどうかは別の話。


ナース服を着たまま運ばれてきても何ら問題なく対応いたしますのでご安心ください。

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コロったってことはzero trustなんだよ

ついに私もコロってしまいました。寒さに引きこもっていたぼっち本格派なので、どこで感染したのかは明らかですね。

さて、いざ感染してみて己の行動、組織の感染管理はどうだったのかなってのを振り返ってみると、改善すべきことを3つ思いつきます。

  1. 換気は重要、万難排して行え
  2. マスクを着けよう、患者にも
  3. 感染管理はzero trustで

換気は重要、万難排して行え

特別な設備がない環境でできる感染拡大予防策は換気だけ。そして換気は効果が大きい。WHOも明言している。

  • Ventilation is important: Open windows when indoors to increase the amount of outdoor air.

(World Health Organizaiton "Coronavirus disease (COVID-19): How is it transmitted?" より)

今時の病院であればまともな空調、換気システムが入っているのでしょうが、まともな設備がない病院もありますよね。そんなところなら代わりに窓が開けられることでしょう。真冬に窓を開ければ冷たい風が入ってくるし室温は下がりますが、半袖の制服で作業できる程度にしておけばいい。大切なのは換気されていることです。*1

ええ、私は窓を開けるんですけど、閉められちゃうんですよ。

お前が寒いとか、寒くて患者が可哀相とか、お気持ちで行動を決定してはならない。多少の室温低下が患者の病状に悪影響を与えることはありませんが、COVID-19に罹患してしまえば言うまでもありません。最悪死にます。

それでもお気持ち派が強い理由ってのは何でしょうね。少なくとも彼らにとっては治療、早期退院が最優先ではないようです

マスクを着けよう、患者にも

自分では常にサージカルマスクを着けていますが。患者はどうかというと、着けていない方もいますよね。と言うか、着けても外すんですよね。どういうこと? って思われる方もいるかと思いますが、認知機能の低下によるものなんでしょうね。マスクを着ける理由も理解していただけませんし、着けるようお願いしても外します。

でも、とにかく着け直し続けないとならなかった。COVID-19の流行がなければ、まあ放っておいても大事には至らなかったんです。その癖が抜けていなかった。

  • Masks are a key measure to reduce transmission and save lives.

World Health Organization "Masks are a key measure to reduce transmission and save lives." より)

看護師的には食事介助ではどうしてもマスクを外した状態の患者と関わらざるを得ませんが。感染の可能性は極力低減しなくてはならない。あきらめたらそこで試合終了だよ。

感染管理はzero trustで

上述も含めこれに尽きる。

病院における感染管理って未だに境界型セキュリティ(perimeter security model)なんですよ。グリーンゾーン(trust zone)、イエローゾーン(dmz)、レッドゾーン(untrust zone)とかやってる。もちろんこの考え方を全面的に否定するつもりはなく、適用していて構わないと思うのですが。殊にSARS-CoV-2について言えば、これだけでは不十分であることが実績として表れています。trust zoneにCOVID-19罹患者が現れるのですから。つまりtrust zoneでSARS-CoV-2が闊歩している。そして予期せぬ院内感染拡大を起こす。

院内感染管理にzero trust modelを導入しない限りこの状況を改善することは難しいでしょう。え? 境界のセキュリティ強化? いや、現実を見ようよ、目の前で起こっていることが現実。zero trustになってるのですよ。

具体的には上述2点を組織的に徹底していくのはもちろんのこと、看護師を始め医療スタッフ側はN95マスクを常時装着して患者に接するのが適当だと考えますが、いかがでしょうか。N95マスクはそりゃ高い。Amazonでざっと見ても、サージカルが15円/枚に対してN95マスクは300円/枚。それでも医療スタッフが欠けたと大騒ぎするより、医療スタッフを介した院内感染を起こすよりは安いと思うんですけどねぇ。少なくとも、試してみて費用と効果を見るくらいはすべきでしょう。

患者側はリスクベースで継続的な検査をしていくことでしょうか。感染管理の目標は予期せぬ感染を起こさないこと。感染の可能性が常に評価され、可能性が高まったときに検査できていれば、生じるのは予期した感染。予期せぬ感染および感染拡大は防げます。個室なのか多床室なのか、入院何日後か、病棟から出たのか、病棟外の人と接触したのか、話したり叫んだりするのか、マスクを外すのか等、様々なリスクファクターを考慮して頻度を決めて検査したらいいんじゃないですかね。結果をリスク評価にフィードバックしていけば状況はよくなることでしょう。尤も、同じチェックリストを使い続け同じ過ちを犯し続け同じ「もっと確認する」的な対策を立て続ける世界で、これが実現可能かは費用よりも難しい何かがありそうですが。

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*1:看護の教科書的には窓を開けての換気は推奨されません。皮肉にも感染症対策として。虫やら何やら入り得るので。

年越し宗谷岬、今年もどうかご安全に(360日後だけど)

あけましておめでとうございます。昨年末から元旦にかけては暖かめだった(と言っても氷点下)稚内ですが、2日から本気を出してきましたね。道内各地での降雪量も増えているようです。

さて、そんな穏やかな年越しでしたから稚内は大賑わい。街は相変わらず寂しい感じでしたけど。宗谷岬が大賑わいでした

例年「年越し宗谷岬」のために全国各地からバイクに乗った人たちが集まってきます。自転車や徒歩というさらなる強者も。そりゃもう気持ちはわかるんですよね。夏になれば私もバイクに乗りますし、今年は私も徒歩で年越し宗谷岬でしたし。

Untitled

胸部プロテクター重要、胸を失えば人は死ぬ

私も好きだからこそ伝えたいことがある。胸部プロテクターを装着しましょう。近年のライダー向け安全啓発では散々繰り返されていることなのですが、これ、病棟看護師的にも本当に重要だと感じます。夏も冬も、胸郭に受傷して救急搬送されてくる人はいるのですよ。

毎度挙げられるデータですが、警視庁「二輪車の交通死亡事故統計(2021年中)」によれば過去5年間の死亡事故における致命傷部位の1位が頭部(48.7%)、2位が胸部(28.0%)。ここまでで全体の3/4を占めます。実はこのデータは都内のもの故に死者の半数を通勤中が占めるという特殊なものではあるのですが、胸部外傷が危険なことはどのような状況下でも変わりません。

いいですか、その部位が失われたことを考えてみてください。

  • 頭が失われる → 死ぬ
  • 肺が失われる → 死ぬ
  • 足が失われる → 死にはしないかも

こういうことです。「胸部」と言われるとピンとこないかも知れませんがそこには肺や心臓が入ってるんですよ。事故で受傷したら最悪、呼吸ができなくなると言うことです。

バイクをやめろと言う看護師よ滅べ

看護師は学生時代に必ず「全人的に患者を診る」とか「患者の生活を最優先に」とか習います。学生時代どころか大抵の病院の看護部はそんな感じの看護目標すら持っています。それにもかかわらずバイク事故で入院してきた人を見ると「危ないから乗るのやめたら」的な話が出るんですよね。お前ら自分が何を言ってるのかわかってるのかと。

バイクが危険な乗り物であること、年越し宗谷岬が難しい挑戦であることは乗ってる連中が一番よくわかってる。それでも好きでやってるわけですよ。看護師が考えるべきことは如何にすれば危険を低減できるか、再来院を回避させられるかでしょう。

私も事故経験者ですからあまり偉そうなことは言えませんが、バイク事故の患者がいると聞けばバイクや装備について聞きますよね。踏まえて、この3点は伝えたい。

  • タイヤはケチるな
  • ヘルメットはフルフェイス
  • 胸部プロテクターを装着しろ

胸部プロテクターの装着率が上がってきている主な原因がバイク仲間からのすすめという話もある*1ので、目新しいネタでもありませんが書いてみました。


RSタイチのジャケットを着ていたときに使ってた。昨秋からジャケットをクシタニに変えたのでプロテクターも変えた。

ジャケットに装着するタイプが一番手軽だと思うけど、装着方法が各社バラバラなのが何とも。JMCAにがんばって欲しいところ。マジックテープを貼ったり、スナップボタンをつけたりすれば何となく互換性は出せるみたいですけどね。

え? 高いって? 3,000円台からあるから、本当に、絶対、着けた方がいいって。

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看護師国試必修、統計問題はだいたい3割

今年も看護師国家試験が近づいてきました。たまには事前に受験生お役立ちネタを。

多くの統計問題の正解が約3割

国家試験の必修問題では公衆衛生に関する統計についての問題が結構出ます。ちょっと数えてみたところ。

  • 2021年度 111回: 午前 4問, 午後 1問
  • 2020年度 110回: 午前 2問, 午後 3問
  • 2019年度 109回: 午前 3問, 午後 3問

必修は午前、午後、それぞれで8割の正答率を確保する必要があり、誤答が許されるのはそれぞれで5問ずつ。そんな中で統計問題はそれぞれで2, 3問ずつ出ているのが常で、落としたくない問題と言えます。111回午前などは4問も出ており統計問題を全部落としたら極めて厳しい戦いとなるわけです。

一方で看護学生は苦手ですよね、統計。看護学生に限らず、看護師もこういった数字が苦手な印象です。数字を見ただけで「無理」って思っちゃう人が多いみたいですが、この手の数字はまずザックリ「だいたいn割」と捉えることが大切です。

そして看護師国家試験について言えば、「だいたい3割」の問題がとても多い。こんなにある。

  • 高齢化率(28.9%, 2022)*1
    • 年少 1割、生産年齢 6割、高齢 3割
  • 高齢者世帯の割合(29.0%, 2021)*2
    • 高齢者世帯「65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに 18歳未満の未婚の者が加わった世帯をいう。」
    • 高齢者のいる世帯ではない
    • 高齢者のいる世帯の割合(49.4%, 2022)*3
  • 高齢者のいる世帯のうち単独世帯(28.8%, 2021)*4
  • 高齢者のいる世帯のうち夫婦のみの世帯(32.0%, 2021)*5
  • 死因別、全死亡者に占める悪性新生物の割合(26.4%, 2021)*6
    • 1位 悪性新生物の半分の割合で2位 心疾患、さらに半分の割合で3位 老衰、4位 脳血管疾患、5位 肺炎
    • 死亡150万人、出生80万人。死亡者数は急な右肩上がりなので要注意
  • 有訴者率(30.25%, 2019)*7
  • 男性喫煙率(27.1%, 2020)*8
    • 国試的には数字が悪く、肺癌の原因になり得る男性が問われる
    • 喫煙率 16.7%、女性喫煙率 7.6%
  • 単独世帯の割合(29.5%, 2021)*9
  • 合計特殊出生率が最も高い母の年齢階級(割合ではないが、30-34歳, 0.4820, 2021)*11

つまり迷ったら「だいたい3割」を選ぶべし。


『国民衛生の動向』の主要読者は看護学生に違いない。

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