夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

本業を包囲した締め切りたち

12月から1月にかけて、年末の本業を挟んで試験だらけでした。12月が4科目 + 実技1種類、1月が8科目 + 実技1種類。このあと2月下旬から3月にかけてもたくさんあり、ナスたま1年生らしいことになっております。

さて、いつも通り、試験が終わった科目と教科書をざっとご紹介。

本業を保留したことが失敗だった12月分

年末と言えば本業の最盛期ですが、何となく間に合うかなと冬休みに入るまでは本業を保留。これが大失敗だったのですが...。本業に使うべきだった時間の割当先の一つが、試験勉強でしたね。

バイタルサイン測定

看護技術プラクティス[第3版動画付き]

看護技術プラクティス[第3版動画付き]

12月の口火を切ったのは実技試験、バイタルサイン測定。体温、脈拍数、呼吸数、血圧の測定です。実は私、これ、1度落ちました。腋窩での体温測定時、腋窩の汗を拭き取り損ねまして...。実施中に気付いてはいたのですが、事前に渡されてた採点表に4点とあった項目なのでそのままにしました。が、腋窩の状態を整えないと正確な体温が測れないので点数にかかわらず不合格。

実技の参考書として多く用いているのが『看護技術プラクティス』第3版。今年の第3版から写真入りになったせいで大きく厚く重くなったそうな。実は写真ってあまり見ないんですよね。こんなことやるのかーって知るのには便利かと思いますが、看護学生以外が買うような物でもないか。第3版でも現在売られているのはQRコードが入っていて動画にリンクしているそうです。私が使っているのはその前の表紙が緑のものですが、別冊でQRコードリストが配られました。サンプル動画が公開されているので看護の実技に興味がある方はご覧になってみてください。尤も、ウェブ上にいろいろ転がってますけどね。

gakken-mesh.jp

薬理学I

わかりやすい薬理学

わかりやすい薬理学

薬理学は生化学でも使ったヌーベルヒロカワのわかりやすいシリーズから『わかりやすい薬理学』。わかりやすくしようとしすぎていて不足だったり、順序が悪かったりってのはこのシリーズの特徴なのかも。整理ノートと称した問題集が便利なのですが、結構出題意図が謎な問題もあったり。謎と言えるまで勉強しろってことなのかも知れませんが。今のところAmazonで中古品が117円ですから、薬の基礎を知りたいならば買ってみてもいいかも。薬理学は12月の試験の中で最難関との前評判でしたが蓋を開けてみれば全員及第点って程度。昨年落とした人が多かったことに由来する前評判でしたが、昨年の問題も大したことなかったんだよね。

基礎看護方法論III

基礎看護技術 2 (新体系看護学全書 基礎看護学 3)

基礎看護技術 2 (新体系看護学全書 基礎看護学 3)

基礎看護方法論III(環境整備、休息)はメヂカルフレンドの『新体系 看護学全書 専門分野Ⅰ 基礎看護学3 基礎看護技術II』第3版。よくまとまっている教科書だと思うけど、観察すべき点や留意点といった問われがちなところがちょっと薄い。上述プラクティスで補って使ってます。教科書の内容は環境整備、食事、排泄、活動と休息、清潔と衣生活、呼吸、創傷管理、与薬、検査、救急救命と一般の方にも興味深い内容かも知れません。

病態治療論I

呼吸器―成人看護学〈2〉 (系統看護学講座 専門分野)

呼吸器―成人看護学〈2〉 (系統看護学講座 専門分野)

循環器―成人看護学〈3〉 (系統看護学講座 専門分野)

循環器―成人看護学〈3〉 (系統看護学講座 専門分野)

臨床外科看護各論 (系統看護学講座)

臨床外科看護各論 (系統看護学講座)

病態治療論I(呼吸器、循環器内科、循環器外科)は医学書院の系看から2冊、『系統看護学講座 専門分野II 成人看護学2 呼吸器』第14版と『系統看護学講座 専門分野II 成人看護学3 循環器』第14版。授業では教科書を使いませんでした。どの科目も専門の医師が来ますので、臨床での経験も踏まえて独自の資料で説明です。よって授業の内容は高度なのですが、試験は割と簡単にしてくれていました。と言いながら、循環器ではたこつぼ心筋症の原因を誤答した。ストレスですな。系看の器官別教科書は検査、疾患、看護の3本立てで記されており、見通しのよい構成です。検査や疾患に興味があれば一般の方にもおすすめです。

老年看護学概論

老年看護学概論・老年保健 (新体系看護学全書)

老年看護学概論・老年保健 (新体系看護学全書)

老年看護学概論はメヂカルフレンド『新体系 看護学全書 老年看護学1 老年看護学概論・老年保健』第3版。概論とつく科目は苦手な私ですが、これもご多分に漏れず。「要は何が言いたいの?」と言いたくなる。教科書は高齢者の特徴、高齢者を取り巻く環境について書かれています。今の日本においてはとても重要なところのはず。概論の教科書なので疾患や技術については書かれていません。

年始早々昼間に活動させた1月分

1月は始業が15日からと遅かったので、11営業日で8科目と、明日も試験な毎日でした。試験は1限目に入っていて、2限目以降は通常通り授業という日々です。

人体の構造と機能IV

トートラ人体の構造と機能 第4版

トートラ人体の構造と機能 第4版

人体の構造と機能IV、解剖生理学の総まとめです。教科書はおなじみトートラ。人体のことが一通り乗っているおすすめの1冊です。春から続いてきた科目もこれで終わりかと感慨深いものがある試験となりましたが、まとめと言うことで要点が並ぶ内容でした。この範囲は国家試験の必修問題としてよく問われるそうですが、苦戦する学生も多いのだとか。人体にとって最も大切なのは水と塩。これは忘れないようにしたい。

精神看護学概論

精神看護学概論・精神保健 (新体系看護学全書 精神看護学1)

精神看護学概論・精神保健 (新体系看護学全書 精神看護学1)

精神看護学概論はメヂカルフレンド『新体系 看護学全書 精神看護学1 精神看護学概論 精神保健』第3版。私が使ったのは2012年版ですが、今年、2016年に改訂されているのですね。精神障害とは何なのか、精神障害を取り巻く状況はどう変わってきたのかが記された教科書です。誰もが精神障害になり得る、健康と障害は同一線上に存在するとする連続体概念(health-illness continuum)を強く押し出した内容で、未だに偏見がある精神障害に対して普通に接することができる学生を育てようとする気概を感じます。なかなかよい内容だなって思いました、開くと眠かったけど。

成人看護学概論

成人看護学総論―成人看護学〈1〉 (系統看護学講座 専門分野)

成人看護学総論―成人看護学〈1〉 (系統看護学講座 専門分野)

成人看護学概論は医学書院『系統看護学講座 専門分野II 成人看護学1 成人看護学総論』第14版ですが、授業ではほとんど使いませんでした。概論なので授業内容は老年、精神同様の成人を取り巻く環境に加え、看護の考え方までが含まれます。看護はそうなんだろうと思うほかありませんでしたが、実情を知っている環境については、頭痛が痛い部分もありましたね...。

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基礎看護方法論II

基礎看護技術 1 (新体系看護学全書 基礎看護学 2)

基礎看護技術 1 (新体系看護学全書 基礎看護学 2)

基礎看護方法論II(ヘルスアセスメント)は『新体系 看護学全書 専門分野Ⅰ 基礎看護学2 基礎看護技術I』第4版。再試験となったバイタルサイン測定はこの科目の実技試験です。筆記試験となると意外と正確に覚えていないことも多く、上腕動脈を間違えましたね...。入院時に体重を量る理由(投薬量、哺乳量を決めるため)は正答率が低かったようです。

病態治療論II

内分泌・代謝―成人看護学〈6〉 (系統看護学講座 専門分野)

内分泌・代謝―成人看護学〈6〉 (系統看護学講座 専門分野)

女性生殖器―成人看護学〈9〉 (系統看護学講座 専門分野)

女性生殖器―成人看護学〈9〉 (系統看護学講座 専門分野)

呼吸器―成人看護学〈2〉 (系統看護学講座 専門分野)

呼吸器―成人看護学〈2〉 (系統看護学講座 専門分野)

臨床外科看護各論 (系統看護学講座)

臨床外科看護各論 (系統看護学講座)

病態治療論IIは消化器内科、消化器外科、内分泌、女性生殖器、呼吸器外科とてんこ盛り。先生となる医師も5名。教科書は医学書院系統看護学講座シリーズ第14版からそれぞれ。教科書の使用状況は両極端で、内分泌なんて未だに開いたことがありませんね...。教科書は上述の通り検査、疾患、看護と3本立てになっているものです。この科目でおもしろかったのは、肝臓担当と女性生殖器担当の温度差でしょうか。あらゆることの結果が出てくる肝臓に対し、他との切り分けが容易な女性生殖器ってのがそのまま出てました。

哲学

パンセ (中公文庫)

パンセ (中公文庫)

哲学は教科書なし。なので参考文献の一つであったパスカル『パンセ』を挙げてみた。この科目のテーマは「この私が生きるとはどういうことか」ってところですかね。昼寝の時間扱いされてしまうこの手の授業ですが、私は好きでした。

基礎看護方法論I

基礎看護技術 1 (新体系看護学全書 基礎看護学 2)

基礎看護技術 1 (新体系看護学全書 基礎看護学 2)

基礎看護方法論I(コミュニケーション、感染予防、医療安全)はおなじみメヂカルフレンド『新体系 看護学全書 専門分野I 基礎看護学2 基礎看護技術I』です。コミュニケーションの授業を私は何度受ければよいのだろう。とゆわけで、大嫌いな「Iメッセージ」とかごろごろしてるわけですよ。根拠なく語られる「ほうれんそう」とかね。医療安全も製造方面からの輸入のようですが、危険の根本原因をどうにかしようとゆー流れにならないのが凄い。

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無菌操作

無菌操作の実技試験。無菌操作について解説が面倒だからWikipediaに頼ろうと思ったんだけど、意外とわかりにくかった。看護における無菌操作をザックリ言うと、滅菌物、例えば摂氏やガーゼを適切に扱えるかってところです。身近なところでは総称の処置において、上から細菌を乗せることなどないように行えるかです。参考書は前述のプラクティスなど。

治療総論

臨床放射線医学 (系統看護学講座 別巻)

臨床放射線医学 (系統看護学講座 別巻)

リハビリテーション看護 第6版 (系統看護学講座)

リハビリテーション看護 第6版 (系統看護学講座)

系統看護学講座 別巻 臨床外科看護総論

系統看護学講座 別巻 臨床外科看護総論

治療総論(放射線リハビリテーション、麻酔、救急救命)は医学書院の系統看護学シリーズですが、授業では使いませんでした。特筆すべきは放射線で、PowerPointのスライドを印刷した資料が配られるのですが、教科書より厚かった。放射線も含め要点を押さえた授業だったので、試験は解きやすかったです。

ふぅ、これで全部かな。ざっと書くだけで思いの外時間がかかった。たくさん試験を受けたんだねぇ。とゆー裏でさらに個人的に試験を受けてた話は、次回に。

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6Rと3Rの差に見る何か

あれま、前回更新から1ヶ月。真冬日も多い中、相変わらず面白おかしくやってます。試験が立て込んでいた上に余計なことを乗っけていたので時間がなかなか取れず...。今月後半は余裕が出そうですので、その辺の話もできればと思います。

さて、今日は試験の中で覚えにくかった覚えやすいらしい標語の話。

与薬の6R

看護業務の中には、患者に薬を投与する、与薬と呼ばれるものがあります。与薬での事故は医療現場で広く発生しており、ちょくちょくニュースになったりもしますね。例えば2013年*1に報道されたもののうち、看護師が関わったものは日本看護協会調べで8件だそうです。

与薬における事故は、基本的に単純な誤りです。最も単純なのは薬剤の容器を取り違え。そんな単純な誤りで事故を起こすなど許されないってことで*2、看護教育の中で指導されるのが件の6R。

  1. Right patient
  2. Right drug
  3. Right dose
  4. Right time
  5. Right route
  6. Right purpose

いや、そりゃ、確かに6Rですけど。nRと言えば3Rを思い浮かべますよね。

  1. Reduce
  2. Reuse
  3. Recycle

なぜこの乗りで6個にならなかった。

おいしくない和洋折衷

なぜ6Rがこんなことになってしまったのか、推測を持ってウェブをザクザク検索していて、何となく見えてきました。あ、でもこれはあくまでザクザク検索して推測を重ねただけなので合ってるかわかりませんデスよ。

  1. もともと米国で6 Rights of Medication Administrationと言われていた
  2. 2000年代初頭、3Rが日本で流行る*3
  3. 3Rにあやかって6 Rightsを6Rとして広める*4

んー、6 Rightsのままの方がわかりやすかったのにね。

しかし6 Rightsのままにしなかった理由は、流行り以外にもう一つ、改変したことがありそうです。6 Rightsは表現がいくつかありますが、意味としてはこの6つ。

  1. Right patient
  2. Right drug *5
  3. Right dose *6
  4. Right time
  5. Right route
  6. Right documentation

6 Rightsのdocumentationが6Rではpurposeに変わっています。なぜ改変したのか。本当おのところは6Rを考えた誰かに聞かなきゃわかりませんが、documentationの示すMedication Administration Recordが日本には存在しないからかも知れません。なら5Rにしときゃよかったのに。

無理矢理6Rにしたことは、6Rの存在を怪しいものにしてしまったように感じます。改めて考えてみれば、purposeは与薬で生じる誤りではありません。処方で生じる誤りです。ナスたま1年生が考えてここまで来ることを、然もありなんと教えてしまう連中の頭の中が心配ではありますが。厚生労働省が「新人看護職員研修ガイドライン」の中で6Rの指導を提示しており、お上には逆らえぬと言ったところでしょうか。

困ったらWHOに聞いてみる

国内が怪しいなと思ったらWHOを見るとおもしろかったりすることをこのblogで学んだので、今回も探してみました。WHOが言うところのpatient safetyにこの辺が含まれるのね。

Remember the 5 Rs when prescribing and administering medication

In many parts of the world, training programmeshave emphasized the importance of checking the 5 Rs before dispensing or administering a medication. The 5 Rs are: right drug, right route, right time, right dose and right patient.

Patient Safety Curriculum Guide Multi-professional Edition, p.247 より)

5 Rsって見て、あ、正しかったんだなってちょっと嬉しかった。

日本語で欲しい人はこの辺なのかな。

解説書籍もあるみたい。

WHOの資料のどこからノンテクニカルスキルってのを持ってきたのか謎なんだが。

6Rが3Rと違って覚えにくいって言うだけのつもりだったのに。意外と長くなってしまった。

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*1:なぜか2014年以降の更新がない。

*2:原因が単純なほど、道具を変えずに根絶するのは難しいんだけどね。

*3:3Rって日本発のようですが、今や世界で使われているんですね。

*4:1999年以前に6Rと言っている資料を見つけられませんでした。そもそも与薬の注意事項が6つなかったと聞いた記憶が。

*5:medicationを使う方が多いみたい。

*6:dosageを使う方が多いみたい。

社会人入試に通ったら

成人の日ですな。ここ弘前の成人式は昨日でした。が、昨晩市街を横断していても新成人らしき影は駅前にちょこっとだけでした。こっちじゃ成人式への出席率は高いらしいんだけど。*1

年も明けて11日。成人式がとうの昔だった社会人向け入試は概ね終わる時期です。合格なさったみなさま、おめでとうございます。不合格だったみなさま、合う合わないはあるから仕方ない。来年デスよ。

さて、社会人入試で合格したら準備すべき意外なものが一つあります。今日はそのお話。

I've got a mail. It says to me, Passed.

大学のシラバスを取り寄せろ

もしあなたが大学や短大などの高等教育機関で単位を修得していたら、その修得科目のシラバスを準備すべし。

経験上、これ、書類に明記されてないんですよね。しかし単位認定のため、修得済み単位と看護学校の単位との互換性を判断する資料として必要になります。そのうち、下手すれば突然に求められますので準備しておきましょう。各種証明書より入手性が悪いのに要求納期を短くするとは、ね。

ちなみに私は突然言われてどうしたものかと大学に相談した結果、ウェブに出ている現行版のシラバスで乗り切りました。

仮に単位認定を受けない場合

シラバスが取り寄せられないとか、申請し損ねとか、何らかの理由で単位認定を受けないとどれぐらい苦労が増えるものでしょうか。さほど増えません。

実は私も社会学*2で認定を申請し損ねたのですが、内容としては学部の一般教養科目における入り口程度のものでした。試験も全く苦労なく。単位認定を受けた科目も全て出席していますが、やはり、単位認定となるだけはあるなって感じです。どうせ1コマ穴が開いても使いようがないよねってなりますから、単位認定については軽く考えておけばよろしいかと。尤も、私のクラスで単位認定を受けているもうお一方は、単位認定科目にきっちり出てきません。好みによるところもありますな。

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*1:埼玉県川口市の私は欠席でした。

*2:科目名が「家族社会学」で別物だろうと判断しちゃった。それこそシラバス読めよ。

EBMと言ってるうちはなされない

明けましておめでとうございます。手洗いのおかげかはわかりませんが感染症にやられることもなく本業の修羅場を乗り切りまして、弘前にてゆるゆる過ごしております。

さて、前回の続きです。

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答えは手首

手首を洗うか否か。

日本の医療方面では、もちろん看護教育においても、手指衛生では手首も洗えとされています。むしろ強調されているほどです。

しかしWHOのおすすめでは手首が含まれません

実は私も、昨年の11月まで、この事実に気付きませんでした。自分の手洗い手順がどうも崩れている気がして、WHOのページを見たときに「あれ?」と。しかしWHOが主張するには根拠があるはずです。ハムを颯爽と発癌物質にぶっ込んでくるWHOなのです、冷徹なまでに根拠に基づいた方法を推奨しているに違いありません。

そこで調べてみたところ、出てきました。英国のNational Clinical Guideline Centreが2012年に発行した「Infection: Prevention and Control of Healthcare-Associated Infections in Primary and Community Care」にドンピシャ、手首を洗うか否かについて記されています。

  • Should wrists be washed?

(中略)

Although current practice is that wrists should be washed as part of hand decontamination, there is uncertainty as to whether there is evidence to support this. In addition, there is a need to identify an end point to the areas of the hand to be included.

(「Standard principles for hand decontamination - Infection: Prevention and Control of Healthcare-Associated Infections in Primary and Community Care - National Library of Medicine - PubMed Health」 より)

さすがはWHO、根拠に基づくことを徹底してらっしゃる。

EBMの仮面 vs. EBMの権化

このblogでも何度か触れたかと思いますが、今や日本の看護、医療方面ではEBMを重視しています。Evidence-Basede Medicene、根拠に基づいた医療。英語であることからもわかるとおり輸入品なのですが、まともに輸入できないのはこの界隈の癖なのでしょうか。キホンのキ、手指衛生にすら輸入失敗が出てしまったようです。

これも繰り言かなと思いますが、少なくとも看護におけるEvidenceは出典程度の意味になっていて、下手すると先に挙げたサラヤのページに書いてあったとかなかったとかそのレベルに落ちます。看護の教科書には大量に出典が記されていますが、自著を差していることも少なくありません。

残念ながら看護教育の現場で、WHOの推奨を持ってきたところで通用しないでしょう。看護の現場に出てどうなるのかは楽しみなところですが、これまた何度も言うように、一般教養の問題ですからねぇ。「わかってくれないひとにはやさしくウソつこう」*1ってのは大切ですな、残念ながら。

天地無用!の主題歌ベストアルバム

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*1:横山智佐「ぼくはもっとパイオニア」より。

手を洗おー!

1日早いけどメリークリスマス。1ヶ月以上も放置してしまいました。先述の通り、早寝のために書く時間を削っているだけで、相変わらず楽しくやってます。昨日22日には2学期が終わり、今日から本業の修羅場に突入。だけど、書きかけの原稿があったのでちゃちゃっと公開しちゃうのデス。

閑話休題。「手を洗おー!」でピンときたあなた、「うまい、うますぎる」お方ですね。知らない人はこの辺とかこの辺とか見て昨今の騒ぎに思いを巡らせてみては。『水夏 ~おー・157章~』を思い出してはいけない。

水夏 ~おー・157章~

水夏 ~おー・157章~

彼女の知らなかった冬

「手を洗おー!」の2000年頃はあまり話題になっていなかったと記憶しますが、今や冬と言えばノロウィルスです。冬の感染症と言えばインフルエンザとノロウィルス。どちらも避けて通りたい、感染予防しましょ。

とゆわけで、感染に対する標準予防策(standard precautions)の柱たる手洗いを改めてご紹介。WHOの手洗いガイドを見ながらちゃんと手を洗おー!

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謎解きはあけましておめでとうのあとで

ここまでで「あれ?」と思った方、どのぐらいいらっしゃるのでしょうか。医療従事者でもなくお気づきでしたら拍手です。大拍手。逆に医療従事者で気付いていない方々は、わかってるからなのか、わかってないからなのか。

何が「あれ?」なのかは年明けに紹介したいと思います。

それではまだ早いのですが、よいお年を。

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看護学校から見る月127時間残業

とゆわけで、だいぶ引っ張った誓い式(旧戴帽式)ネタ後編です。

前編はこちら。

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誓いの言葉で乗るビッグウェーブ

式次第が記され配布される紙に、1年生全員の「目指す看護師像」が列挙されています。ササッと1行ずつ書かれているのですが、これが意外と興味深い。言うまでもなく、真剣に書いている学生なんてのは多くないわけで。故に、興味深いのです。

主流は「患者に信頼される看護師」。何と恐ろしいことでしょう。私は「いつもそこにいる看護師」と書いて、あちこちから恐怖だとかホラーだとか言われましたが。実際に恐怖なのは、いい加減に書いた結果「信頼される」としてしまう感覚だと思うのですよ。

遅れても乗るしかない、このビッグウェーブに。

b.hatena.ne.jp

先月、日本のウェブ界隈では某IT業界の長時間労働について盛り上がっていました。

長時間労働自慢は好きにして構いませんが、病気にならないでくださいね。と思うのが看護学生であり、看護師です。しかし病気になってしまったら一緒にがんばりましょうと思うのも看護師。のはずですが、長時間労働については結果として冷たく思うこととなる現実がありそうです。

生存者には鞭を

入院患者の傷病別分類でトップをひた走るのが精神障害ですから、当然、病棟を主戦場とせん看護学生にはその辺の教育もなされます。長時間労働、もう少し広い範囲で言えば産業保健について扱う科目は1年生の半ばの時点で3科目もあります。

  1. 公衆衛生学
  2. 精神看護学概論
  3. 成人看護学概論

この中で一番熱かったのは成人看護学概論でしょうか。

こともあろうに某IT業界では有名なニューメディア総研(現アドバンストラフィックシステムズ)事件を取り上げたわけですよ。念のために事件の要点をおさらい。

  • 女性SE(31歳)が127時間残業の翌月、自殺未遂
  • 1ヶ月間の休業後、長時間労働に復帰
  • 復帰5日後、不整脈で死亡(労災認定済み)

この事件の説明で、先生*1が痛ましそうに言うんですよ。

周りの人は、何かしてあげられなかったのかなって思います。

そして、学生はうんうんとそれを聞いているわけですよ。

なんてこった。こーゆー思われ方をしているのか。やっとの思いで生き残ったら、なぜあいつを助けなかったと言われるのか。

想像力の限界を知っている看護学校にて

想像できないんでしょうね。周りも当然長時間労働だろうとか、周りが他人の死を待つほどである可能性とか、想像すらできないんですよ。

某IT業界(あるいは長時間労働が十八番のどこかの業界)にいると長時間労働の現物がごろごろしています。自ら経験しています。だから長時間労働について、本人や周辺について想像できます。

経験がなければ、そんなもん想像できっこない。ニュースに表れた数字から何時間働いたのかはわかる。死因となった疾患はわかる。しかし本人がどう働いていたか、周囲がどう働いていたか、もう少し広く組織がどう動いていたかっつー根本原因のところが想像できない。想像できないと言うと怒られるかも知れない。正確に言うなら、事実に基づいた想像ができない。だから、事実が地球の裏側にあるような想像になってしまう。

看護学生は、看護師は、何事も経験しなければわからないって知っているんです。だから看護学校では、学生が嫌がるような実践も積み重ねるのは前出の通り。

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しかし人間ですからね。感情に訴えられたとき、知っていることが飛んでしまったりするのでしょう。余談にはなりますが、長時間労働を社会に悪と知らしめるためには、皮肉にも長時間労働を広めるしかないのかも知れません。

死出の旅の第一歩は人知れず

上述のような長時間労働自慢はある種の内輪ネタであり冗談であるから、ひたすらに時間数とその結果との話になってしまうのですが。長時間労働が病気、精神障害を来すか否かには他の要素もあると思うんですよね。

科学的になんであると言えるところには至っていないと理解していますが、精神の問題だけに、精神に根ざす要素、心の持ちようはあるのでしょう。

その持ちようの一つが「私のあり方」なんじゃないかと考えています。

他人による評価を自分の評価としてしまうあり方、目標ってのは危険なんじゃないかなって。ここで冒頭に繋がります。*2

「患者に信頼される看護師」となれるか否か。患者が私を信頼するか否か。それは患者の私に対する評価次第で、私自身が制御できないこと。そこに重きを置くことは、己の舵を他人に任せることです。

真剣みもなく、いい加減に。それでも知らず知らずに他人がどうするかを自分の目標にしてしまう。自分がどうするかより、他人がどうするかに重きを置いてしまう。彼女たちの感覚に精神障害の堅調な推移を感じつつ、患者にもこの当然を持って接してしまうんだろうかと某IT業界出身ナスたまとしての頭痛も感じつつ。

そして何より、長時間労働の果てに病院に辿り着いた患者が、蠱惑的なナースに鞭打たれることを想像してしまう誓い式でした。それはそれで喜び溢れる人もいるんだろうけどね。

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*1:もちろん看護師。

*2:看護方面が大好きなAbraham Harold Maslowのhierarchy of needsで言えば、self-actualizationなのかesteemなのかってこと。

せめて人間らしく

お久しぶりです。ここの頃書けていなかったのは、特別忙しかったり、あろう事か病床についていたりってことではありません。ついに、ついにやは寝に向けた生活改革に着手いたしまして、ここの執筆時間が直撃を受けたってことですね。日常の就寝時間を早めるべく本気で取り組むのは、私史上初かも知れません。

誓い式(旧戴帽式)ネタ後編が書けていないのは承知しつつ、間をつなげるべく近況、今日の話でも。

推薦入試だった、らしい

週のど真ん中の真っ昼間に記事を書けているのは、それ故。本日は学校が推薦入試を実施しており、休講でした*1。受験者数は今年も昨年も存じませんが、合格者は昨年10名強だったかな。今年も入学生の1/4ぐらいが今日の試験で決まるのでしょう。楽しみですなぁ。

Tax accountant exam is over. Will you pass it?

推薦入試と言えば小論文と面接。今時当たり前に、いずれに対しても、それどころか志望理由書の書き方にすら、参考書、いわゆるマニュアルが存在します。

看護医療技術系の志望理由書の書き方 合格できる志望理由書が本書ならかける 改訂版

看護医療技術系の志望理由書の書き方 合格できる志望理由書が本書ならかける 改訂版

この辺を持ち出すのは、少なくとも社会人入試においては違うんじゃないってのは以前書きました。

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その後数ヶ月を経て、現役学生の入試でも違うんじゃないかなと思う今日この頃です。なぜなら、私たちは人間であり、コンピュータではないから。

ちょうど今週日曜日まで、東京モーターショー 2015が開催されていました。いろいろな話題がありましたが、今後に向けては自動運転技術が注目の的でしたよね。そう、コンピュータはいわゆるマニュアル通り、マニュアルに基づく社会での状況判断と状況適応ができるようになってきています。このレベルの作業なら、もう人間は不要なんですよ。

医療業界においてもコンピュータは必須のものですし、コンピュータが支援する場面は確実に増えています。その中でも看護師が存在し続けるためには、ね。

看護師を目指す理由を聞かれてマニュアル通りに答えるなんてのは、私たちは間もなくゴミ箱行きですって言っているようなものじゃないでしょうか。*2

「明日はもっと私らしく」*3、その前に今日は。明日が長く続く現役学生の受験生にこそ、人間らしさを追求して欲しいかな。

YOU GET TO BURNING

YOU GET TO BURNING

*1:何をしていたかはお察しください。

*2:鶏か卵か、評価の問題もあるんだけどね。先述の通り、己で変えられるのは己だけってこと。

*3:桑島法子『私らしく』より。