夜勤病棟の女神様(仮)

りんごと桜の街、看護学生の日常

看護雑誌で今夜も一杯 『INFECTION CONTROL 2015年5月号』

ATMみたいな

前回はわかる領域に手を着けてしまったが故に負の盛り上がりを見せてしまいましたので、今回は。と言いつつ、やはり馴染みのある文字列には目が行ってしまいます。

今週はメディカ出版『INFECTION CONTROL』の2015年5月号を肴にしてみましょう。ちょうど昨日6月号が入ってきましたので、1号古くなっちゃいましたが。

この雑誌、「ICTのための医療関連感染対策の総合専門誌」と銘打たれております。ICTですよ、ICT。ここで総務省が浮かんだりしちゃう私ですよ。しかも特集は「はじめての正しいデバイス感染対策 これだけ!」。デバイスですよデバイス、続けてハイと言いたくなってしまう17歳の私です。DOSは5でしたからもうUMBはあったのですよ。

なお、この「ICT」は「Infection Control Team」です。雑誌の中では一度の註釈もないようですが、某IT業界も(今や紙の雑誌はだいぶ減りましたが)そんなもんですよね。「総合専門誌」って言い回しには殴りたくなりますが、ましてや感染対策に限った専門誌ですから、そんなことわかってて当然の人が読むものでしょう。

では、今週もトリスハイボールを飲みながら。本当はホッピー(黒)飲みたいんだけどねぇ。日本酒は創作に向かない気がする。

ザックリと、ザックリしすぎ?

初めに食すのはもちろん特集「はじめての正しいデバイス感染対策 これだけ!」です。またもや用語ですよ。「デバイス」と言うと某業界的には周辺機器、KVMやプリンタとかスキャナを思い浮かべますが、今回の特集における「デバイス」は主に「身体に接続されている管」のこと。カテーテルとか、チューブとか*1。これが医療全般で通る話なのかどうかは不明ですが...。

この管は体内器官と外界を接続しますから、そりゃ外界からいただけないものが伝って感染となるよねと、割とわかりやすい話ではあります。わかりやすいってことは起こりやすいってことですから、感染対策の基本として重要なものでしょう。

特集の最初は、世界で、日本でどのぐらいのデバイス感染が起きているか。

全くわからない領域ですから、ここは素直に藤田烈氏(東京大学医学部附属病院 臨床研究支援センター 中央管理ユニット 生物統計・データ管理部門)の書かれた要約で理解しちゃいましょう。

  1. デバイス感染の発生頻度は国ごとに大きな違いがある
  2. 日本のデバイス感染対策のレベルは高い
  3. 日本における当面の課題はVAP*2対策である

(p.14)

なるほどねぇ。他と比べるでもなく、何となく、日本の医療機関は割とキチッとしている感じを受けていましたが、デバイス感染について言えばその感じの通りのようです。みなさん安心して入院してくださいね?

実際他と比べてどうなのかなって疑問には、国別一覧表が用意されています。

表1 2005年以降に論文上で公開されたデバイス感染発生頻度国別一覧

1,000医療器具使用日あたりの感染発生件数、年度ごとに報告されている場合は直近の値を引用

国名 CALBSI*3 CAUTI*4 VAP
日本(全国80施設 2009~2014) 2.0 1.2 4.0
米国(全国2,821施設 2012)* 0.9~1.2 1.2~2.4 0.9~1.6
ドイツ(全国547施設 1997~2005) 1.4 5.6

* Medica/surgical(内科外科混合)集中治療室のデータを抜粋

(p.15、全16行中の上から3行を抜粋。アクロニムに対する註釈は筆者による)

ん? 日本は全体で見ればよい方だけど、直下のUSと比べていまいちでないかい? 表の見方がわからんなーと思ってたらアスタリスクが目に入りました。条件が大幅に違うっぽい。集中治療室は一般病室に比べれば感染症に対する注意も念入りです。こーゆー表をポンと載せて説明しちゃうってのが、この界隈なんだろうなぁと前回の肴を思い出しつつ。先に引用した要約の信憑性が崩れる音がするよ...。

nsns.hatenablog.com

それは砕け散るセキュリティのように

このあと、具体的な対策がデバイスおよび状況別に7種類取り上げられています。

  1. 血管カテーテル
  2. 尿路カテーテル
  3. 人工呼吸器(人工呼吸器回路(物々しい機械)についての記載はなし)
  4. 腹腔ドレーン
  5. 胃瘻カテーテル
  6. 透析シャント
  7. 在宅でのデバイス感染対策
    1. 血管カテーテル
    2. 皮下埋込型器具(CVポート)
    3. 胃瘻カテーテル
    4. 腎瘻, 膀胱瘻, 尿管皮膚瘻(ウロストミー)

意外とどれも、わからなくはない内容が書かれていて、さすが「はじめての」「これだけ!」と銘打っているだけのことはあります。共通対策を抜き出すとこんな感じかな。

  1. 医療従事者の手指衛生
  2. 医療従事者の個人防護用具着用(患者から何らかの排出がある場合)
  3. 定められた期間内でのデバイス交換
  4. 頻繁なデバイス正常性チェック

わからなくはない理由はこの共通対策から感じられるとおりで、まずは、学生それも1年生でも理解できる基本をきっちり守りましょうってことなんですね。某IT業界で言えばセキュリティと同じです。ああ、そもそもその辺の原始、ウイルスやワクチンって医療業界から拝借しているんですものね。

感染対策から世界を見る

たった1ページの連載なのですが、「トピックニュース ニュース丸かぶり」がおもしろい。1ヶ月間のニュースのうち、感染対策の観点から熱いニュースをコンパクトに紹介しています。

今回注目したいのは「帰宅困難者受け入れ施設において感染症が発生しても、受け入れ施設は故意または重篤な過失がない限り責任を負わない」ことが国や東京都ら都県によって示されたというニュース。

状況が状況だけに、平時よりも感染症が発生しやすい状況でしょう。それで貸し渋られては本末転倒ですものね。これは確かに、熱いニュースです。

次がないのが一番ですが、起こってしまったとき、私は看護師として活動できるようになっているのかな。

大丈夫だと思っていたの結末は

最後に味わうのは「東京医療保健大学大学院*5 公開講座レポート」。もうね、この基調講演の題目だけで多くの人は激怒か卒倒だと思うのですよ。基調講演から飛ばしすぎ。「シングルユース器材の再滅菌使用」ですって、奥さん。

全国の医療機関ではリスクの低い医療器具を再使用している現状もあることから、すぐに通知を遵守することは困難ですが、事故や感染が発生した場合は施設の責任が問われるとのことでした。

(p.96)

キチッとしていなかった*6。命扱ってる連中が情報扱ってる甘すぎる連中よりも甘いとは思いませんでした。幸運を祈る!

*1:実はこの2つがどう違うか知らないのですが、いずれも管なのは確かです。

*2:Ventilator-Associated Pneumonia: 人工呼吸器関連肺炎

*3:Central Line-Associated BloodStream Infection: 中心ライン関連血流感染症

*4:Catheter-Assciated Unrinary Tract Infection: カテーテル関連尿経路感染症

*5:Symposium on Radiation Nursingで講演なさっていた草間朋子氏のいるところですな。

*6:シングルユース器材の再使用そのものについては必ずしも危険とは言えないようなのでさておいても、ね。