夜勤病棟の女神様(仮)

ひよっこナースの日常

6Rと3Rの差に見る何か

あれま、前回更新から1ヶ月。真冬日も多い中、相変わらず面白おかしくやってます。試験が立て込んでいた上に余計なことを乗っけていたので時間がなかなか取れず...。今月後半は余裕が出そうですので、その辺の話もできればと思います。

さて、今日は試験の中で覚えにくかった覚えやすいらしい標語の話。

与薬の6R

看護業務の中には、患者に薬を投与する、与薬と呼ばれるものがあります。与薬での事故は医療現場で広く発生しており、ちょくちょくニュースになったりもしますね。例えば2013年*1に報道されたもののうち、看護師が関わったものは日本看護協会調べで8件だそうです。

与薬における事故は、基本的に単純な誤りです。最も単純なのは薬剤の容器を取り違え。そんな単純な誤りで事故を起こすなど許されないってことで*2、看護教育の中で指導されるのが件の6R。

  1. Right patient
  2. Right drug
  3. Right dose
  4. Right time
  5. Right route
  6. Right purpose

いや、そりゃ、確かに6Rですけど。nRと言えば3Rを思い浮かべますよね。

  1. Reduce
  2. Reuse
  3. Recycle

なぜこの乗りで6個にならなかった。

おいしくない和洋折衷

なぜ6Rがこんなことになってしまったのか、推測を持ってウェブをザクザク検索していて、何となく見えてきました。あ、でもこれはあくまでザクザク検索して推測を重ねただけなので合ってるかわかりませんデスよ。

  1. もともと米国で6 Rights of Medication Administrationと言われていた
  2. 2000年代初頭、3Rが日本で流行る*3
  3. 3Rにあやかって6 Rightsを6Rとして広める*4

んー、6 Rightsのままの方がわかりやすかったのにね。

しかし6 Rightsのままにしなかった理由は、流行り以外にもう一つ、改変したことがありそうです。6 Rightsは表現がいくつかありますが、意味としてはこの6つ。

  1. Right patient
  2. Right drug *5
  3. Right dose *6
  4. Right time
  5. Right route
  6. Right documentation

6 Rightsのdocumentationが6Rではpurposeに変わっています。なぜ改変したのか。本当おのところは6Rを考えた誰かに聞かなきゃわかりませんが、documentationの示すMedication Administration Recordが日本には存在しないからかも知れません。なら5Rにしときゃよかったのに。

無理矢理6Rにしたことは、6Rの存在を怪しいものにしてしまったように感じます。改めて考えてみれば、purposeは与薬で生じる誤りではありません。処方で生じる誤りです。ナスたま1年生が考えてここまで来ることを、然もありなんと教えてしまう連中の頭の中が心配ではありますが。厚生労働省が「新人看護職員研修ガイドライン」の中で6Rの指導を提示しており、お上には逆らえぬと言ったところでしょうか。

困ったらWHOに聞いてみる

国内が怪しいなと思ったらWHOを見るとおもしろかったりすることをこのblogで学んだので、今回も探してみました。WHOが言うところのpatient safetyにこの辺が含まれるのね。

Remember the 5 Rs when prescribing and administering medication

In many parts of the world, training programmeshave emphasized the importance of checking the 5 Rs before dispensing or administering a medication. The 5 Rs are: right drug, right route, right time, right dose and right patient.

Patient Safety Curriculum Guide Multi-professional Edition, p.247 より)

5 Rsって見て、あ、正しかったんだなってちょっと嬉しかった。

日本語で欲しい人はこの辺なのかな。

解説書籍もあるみたい。

WHOの資料のどこからノンテクニカルスキルってのを持ってきたのか謎なんだが。

6Rが3Rと違って覚えにくいって言うだけのつもりだったのに。意外と長くなってしまった。

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*1:なぜか2014年以降の更新がない。

*2:原因が単純なほど、道具を変えずに根絶するのは難しいんだけどね。

*3:3Rって日本発のようですが、今や世界で使われているんですね。

*4:1999年以前に6Rと言っている資料を見つけられませんでした。そもそも与薬の注意事項が6つなかったと聞いた記憶が。

*5:medicationを使う方が多いみたい。

*6:dosageを使う方が多いみたい。

社会人入試に通ったら

成人の日ですな。ここ弘前の成人式は昨日でした。が、昨晩市街を横断していても新成人らしき影は駅前にちょこっとだけでした。こっちじゃ成人式への出席率は高いらしいんだけど。*1

年も明けて11日。成人式がとうの昔だった社会人向け入試は概ね終わる時期です。合格なさったみなさま、おめでとうございます。不合格だったみなさま、合う合わないはあるから仕方ない。来年デスよ。

さて、社会人入試で合格したら準備すべき意外なものが一つあります。今日はそのお話。

I've got a mail. It says to me, Passed.

大学のシラバスを取り寄せろ

もしあなたが大学や短大などの高等教育機関で単位を修得していたら、その修得科目のシラバスを準備すべし。

経験上、これ、書類に明記されてないんですよね。しかし単位認定のため、修得済み単位と看護学校の単位との互換性を判断する資料として必要になります。そのうち、下手すれば突然に求められますので準備しておきましょう。各種証明書より入手性が悪いのに要求納期を短くするとは、ね。

ちなみに私は突然言われてどうしたものかと大学に相談した結果、ウェブに出ている現行版のシラバスで乗り切りました。

仮に単位認定を受けない場合

シラバスが取り寄せられないとか、申請し損ねとか、何らかの理由で単位認定を受けないとどれぐらい苦労が増えるものでしょうか。さほど増えません。

実は私も社会学*2で認定を申請し損ねたのですが、内容としては学部の一般教養科目における入り口程度のものでした。試験も全く苦労なく。単位認定を受けた科目も全て出席していますが、やはり、単位認定となるだけはあるなって感じです。どうせ1コマ穴が開いても使いようがないよねってなりますから、単位認定については軽く考えておけばよろしいかと。尤も、私のクラスで単位認定を受けているもうお一方は、単位認定科目にきっちり出てきません。好みによるところもありますな。

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*1:埼玉県川口市の私は欠席でした。

*2:科目名が「家族社会学」で別物だろうと判断しちゃった。それこそシラバス読めよ。

EBMと言ってるうちはなされない

明けましておめでとうございます。手洗いのおかげかはわかりませんが感染症にやられることもなく本業の修羅場を乗り切りまして、弘前にてゆるゆる過ごしております。

さて、前回の続きです。

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答えは手首

手首を洗うか否か。

日本の医療方面では、もちろん看護教育においても、手指衛生では手首も洗えとされています。むしろ強調されているほどです。

しかしWHOのおすすめでは手首が含まれません

実は私も、昨年の11月まで、この事実に気付きませんでした。自分の手洗い手順がどうも崩れている気がして、WHOのページを見たときに「あれ?」と。しかしWHOが主張するには根拠があるはずです。ハムを颯爽と発癌物質にぶっ込んでくるWHOなのです、冷徹なまでに根拠に基づいた方法を推奨しているに違いありません。

そこで調べてみたところ、出てきました。英国のNational Clinical Guideline Centreが2012年に発行した「Infection: Prevention and Control of Healthcare-Associated Infections in Primary and Community Care」にドンピシャ、手首を洗うか否かについて記されています。

  • Should wrists be washed?

(中略)

Although current practice is that wrists should be washed as part of hand decontamination, there is uncertainty as to whether there is evidence to support this. In addition, there is a need to identify an end point to the areas of the hand to be included.

(「Standard principles for hand decontamination - Infection: Prevention and Control of Healthcare-Associated Infections in Primary and Community Care - National Library of Medicine - PubMed Health」 より)

さすがはWHO、根拠に基づくことを徹底してらっしゃる。

EBMの仮面 vs. EBMの権化

このblogでも何度か触れたかと思いますが、今や日本の看護、医療方面ではEBMを重視しています。Evidence-Basede Medicene、根拠に基づいた医療。英語であることからもわかるとおり輸入品なのですが、まともに輸入できないのはこの界隈の癖なのでしょうか。キホンのキ、手指衛生にすら輸入失敗が出てしまったようです。

これも繰り言かなと思いますが、少なくとも看護におけるEvidenceは出典程度の意味になっていて、下手すると先に挙げたサラヤのページに書いてあったとかなかったとかそのレベルに落ちます。看護の教科書には大量に出典が記されていますが、自著を差していることも少なくありません。

残念ながら看護教育の現場で、WHOの推奨を持ってきたところで通用しないでしょう。看護の現場に出てどうなるのかは楽しみなところですが、これまた何度も言うように、一般教養の問題ですからねぇ。「わかってくれないひとにはやさしくウソつこう」*1ってのは大切ですな、残念ながら。

天地無用!の主題歌ベストアルバム

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*1:横山智佐「ぼくはもっとパイオニア」より。

手を洗おー!

1日早いけどメリークリスマス。1ヶ月以上も放置してしまいました。先述の通り、早寝のために書く時間を削っているだけで、相変わらず楽しくやってます。昨日22日には2学期が終わり、今日から本業の修羅場に突入。だけど、書きかけの原稿があったのでちゃちゃっと公開しちゃうのデス。

閑話休題。「手を洗おー!」でピンときたあなた、「うまい、うますぎる」お方ですね。知らない人はこの辺とかこの辺とか見て昨今の騒ぎに思いを巡らせてみては。『水夏 ~おー・157章~』を思い出してはいけない。

水夏 ~おー・157章~

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彼女の知らなかった冬

「手を洗おー!」の2000年頃はあまり話題になっていなかったと記憶しますが、今や冬と言えばノロウィルスです。冬の感染症と言えばインフルエンザとノロウィルス。どちらも避けて通りたい、感染予防しましょ。

とゆわけで、感染に対する標準予防策(standard precautions)の柱たる手洗いを改めてご紹介。WHOの手洗いガイドを見ながらちゃんと手を洗おー!

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謎解きはあけましておめでとうのあとで

ここまでで「あれ?」と思った方、どのぐらいいらっしゃるのでしょうか。医療従事者でもなくお気づきでしたら拍手です。大拍手。逆に医療従事者で気付いていない方々は、わかってるからなのか、わかってないからなのか。

何が「あれ?」なのかは年明けに紹介したいと思います。

それではまだ早いのですが、よいお年を。

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看護学校から見る月127時間残業

とゆわけで、だいぶ引っ張った誓い式(旧戴帽式)ネタ後編です。

前編はこちら。

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誓いの言葉で乗るビッグウェーブ

式次第が記され配布される紙に、1年生全員の「目指す看護師像」が列挙されています。ササッと1行ずつ書かれているのですが、これが意外と興味深い。言うまでもなく、真剣に書いている学生なんてのは多くないわけで。故に、興味深いのです。

主流は「患者に信頼される看護師」。何と恐ろしいことでしょう。私は「いつもそこにいる看護師」と書いて、あちこちから恐怖だとかホラーだとか言われましたが。実際に恐怖なのは、いい加減に書いた結果「信頼される」としてしまう感覚だと思うのですよ。

遅れても乗るしかない、このビッグウェーブに。

b.hatena.ne.jp

先月、日本のウェブ界隈では某IT業界の長時間労働について盛り上がっていました。

長時間労働自慢は好きにして構いませんが、病気にならないでくださいね。と思うのが看護学生であり、看護師です。しかし病気になってしまったら一緒にがんばりましょうと思うのも看護師。のはずですが、長時間労働については結果として冷たく思うこととなる現実がありそうです。

生存者には鞭を

入院患者の傷病別分類でトップをひた走るのが精神障害ですから、当然、病棟を主戦場とせん看護学生にはその辺の教育もなされます。長時間労働、もう少し広い範囲で言えば産業保健について扱う科目は1年生の半ばの時点で3科目もあります。

  1. 公衆衛生学
  2. 精神看護学概論
  3. 成人看護学概論

この中で一番熱かったのは成人看護学概論でしょうか。

こともあろうに某IT業界では有名なニューメディア総研(現アドバンストラフィックシステムズ)事件を取り上げたわけですよ。念のために事件の要点をおさらい。

  • 女性SE(31歳)が127時間残業の翌月、自殺未遂
  • 1ヶ月間の休業後、長時間労働に復帰
  • 復帰5日後、不整脈で死亡(労災認定済み)

この事件の説明で、先生*1が痛ましそうに言うんですよ。

周りの人は、何かしてあげられなかったのかなって思います。

そして、学生はうんうんとそれを聞いているわけですよ。

なんてこった。こーゆー思われ方をしているのか。やっとの思いで生き残ったら、なぜあいつを助けなかったと言われるのか。

想像力の限界を知っている看護学校にて

想像できないんでしょうね。周りも当然長時間労働だろうとか、周りが他人の死を待つほどである可能性とか、想像すらできないんですよ。

某IT業界(あるいは長時間労働が十八番のどこかの業界)にいると長時間労働の現物がごろごろしています。自ら経験しています。だから長時間労働について、本人や周辺について想像できます。

経験がなければ、そんなもん想像できっこない。ニュースに表れた数字から何時間働いたのかはわかる。死因となった疾患はわかる。しかし本人がどう働いていたか、周囲がどう働いていたか、もう少し広く組織がどう動いていたかっつー根本原因のところが想像できない。想像できないと言うと怒られるかも知れない。正確に言うなら、事実に基づいた想像ができない。だから、事実が地球の裏側にあるような想像になってしまう。

看護学生は、看護師は、何事も経験しなければわからないって知っているんです。だから看護学校では、学生が嫌がるような実践も積み重ねるのは前出の通り。

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しかし人間ですからね。感情に訴えられたとき、知っていることが飛んでしまったりするのでしょう。余談にはなりますが、長時間労働を社会に悪と知らしめるためには、皮肉にも長時間労働を広めるしかないのかも知れません。

死出の旅の第一歩は人知れず

上述のような長時間労働自慢はある種の内輪ネタであり冗談であるから、ひたすらに時間数とその結果との話になってしまうのですが。長時間労働が病気、精神障害を来すか否かには他の要素もあると思うんですよね。

科学的になんであると言えるところには至っていないと理解していますが、精神の問題だけに、精神に根ざす要素、心の持ちようはあるのでしょう。

その持ちようの一つが「私のあり方」なんじゃないかと考えています。

他人による評価を自分の評価としてしまうあり方、目標ってのは危険なんじゃないかなって。ここで冒頭に繋がります。*2

「患者に信頼される看護師」となれるか否か。患者が私を信頼するか否か。それは患者の私に対する評価次第で、私自身が制御できないこと。そこに重きを置くことは、己の舵を他人に任せることです。

真剣みもなく、いい加減に。それでも知らず知らずに他人がどうするかを自分の目標にしてしまう。自分がどうするかより、他人がどうするかに重きを置いてしまう。彼女たちの感覚に精神障害の堅調な推移を感じつつ、患者にもこの当然を持って接してしまうんだろうかと某IT業界出身ナスたまとしての頭痛も感じつつ。

そして何より、長時間労働の果てに病院に辿り着いた患者が、蠱惑的なナースに鞭打たれることを想像してしまう誓い式でした。それはそれで喜び溢れる人もいるんだろうけどね。

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*1:もちろん看護師。

*2:看護方面が大好きなAbraham Harold Maslowのhierarchy of needsで言えば、self-actualizationなのかesteemなのかってこと。

せめて人間らしく

お久しぶりです。ここの頃書けていなかったのは、特別忙しかったり、あろう事か病床についていたりってことではありません。ついに、ついにやは寝に向けた生活改革に着手いたしまして、ここの執筆時間が直撃を受けたってことですね。日常の就寝時間を早めるべく本気で取り組むのは、私史上初かも知れません。

誓い式(旧戴帽式)ネタ後編が書けていないのは承知しつつ、間をつなげるべく近況、今日の話でも。

推薦入試だった、らしい

週のど真ん中の真っ昼間に記事を書けているのは、それ故。本日は学校が推薦入試を実施しており、休講でした*1。受験者数は今年も昨年も存じませんが、合格者は昨年10名強だったかな。今年も入学生の1/4ぐらいが今日の試験で決まるのでしょう。楽しみですなぁ。

Tax accountant exam is over. Will you pass it?

推薦入試と言えば小論文と面接。今時当たり前に、いずれに対しても、それどころか志望理由書の書き方にすら、参考書、いわゆるマニュアルが存在します。

看護医療技術系の志望理由書の書き方 合格できる志望理由書が本書ならかける 改訂版

看護医療技術系の志望理由書の書き方 合格できる志望理由書が本書ならかける 改訂版

この辺を持ち出すのは、少なくとも社会人入試においては違うんじゃないってのは以前書きました。

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その後数ヶ月を経て、現役学生の入試でも違うんじゃないかなと思う今日この頃です。なぜなら、私たちは人間であり、コンピュータではないから。

ちょうど今週日曜日まで、東京モーターショー 2015が開催されていました。いろいろな話題がありましたが、今後に向けては自動運転技術が注目の的でしたよね。そう、コンピュータはいわゆるマニュアル通り、マニュアルに基づく社会での状況判断と状況適応ができるようになってきています。このレベルの作業なら、もう人間は不要なんですよ。

医療業界においてもコンピュータは必須のものですし、コンピュータが支援する場面は確実に増えています。その中でも看護師が存在し続けるためには、ね。

看護師を目指す理由を聞かれてマニュアル通りに答えるなんてのは、私たちは間もなくゴミ箱行きですって言っているようなものじゃないでしょうか。*2

「明日はもっと私らしく」*3、その前に今日は。明日が長く続く現役学生の受験生にこそ、人間らしさを追求して欲しいかな。

YOU GET TO BURNING

YOU GET TO BURNING

*1:何をしていたかはお察しください。

*2:鶏か卵か、評価の問題もあるんだけどね。先述の通り、己で変えられるのは己だけってこと。

*3:桑島法子『私らしく』より。

身近な病気に見るナスたま生後6ヶ月

足の親指を深爪して爪囲炎*1になりました。たまにやるんですが、地味に痛いんですよね。おとなしくしておけばいいものを、普通に歩くから靴が当たり余計に治らない。

さて、今回はこの身近な病気を通して、半年間看護学生やってるとこうなるよってのをお伝えします。

蜂窩織炎ですよ、好中球ですよ

爪囲炎(paronychia)は炎症の種類で言えば蜂窩織炎(cellulitis)。何らかの細菌感染、大抵は常在菌、黄色ブドウ球菌による感染を受けた後、好中球が細菌を食べてお掃除している状態ですね。食べた結果が膿汁。

膿汁の色は要注意で、黄色なら前述の通り黄色ブドウ球菌あたりでしょうが、緑色だと緑膿菌の恐れがあります。緑膿菌に感染することは健康な人だとまずないはずなので、緑色なら(きっとびっくりしてそうするでしょうが)とっとと病院へ。

爪囲炎を起こす常在細菌は、その名の通り、常にその辺、人の身体にすらいる細菌。しかし極めて弱い菌であることから、通常、人に悪さはできません。ところが人の身体が弱っていれば細菌の力が勝り、感染して病気を起こす。私の周囲炎の場合、深爪で傷付いたところをやられたわけです。このような感染を日和見感染(opportunistic infection)と呼びます。日本語だと専門用語っぽくありませんが、教科書に太字で書かれるほどのものです。

爪囲炎、と言うか蜂窩織炎そのものは病理学で学びます。その病理学が、今月唯一の試験でした。試験と言えばおなじみの教科書紹介。

疾病のなりたちと回復の促進〈1〉病理学 (系統看護学講座 専門基礎分野)

疾病のなりたちと回復の促進〈1〉病理学 (系統看護学講座 専門基礎分野)

網羅的にわかりやすく書かれておりおすすめ。足りないかなってところは本書のキーワードをGoogle先生に投げれば山ほど解説が返ってきます。

ちなみに病理学の試験は例年及第点に満たない人が多く、難しいとされています。多肢選択式にもかかわらず半数が落とします。一夜漬けが効かないってのもあるんですが、病理学は病理学だけでは理解しがたいとこも原因なのでしょう。

常在細菌、日和見感染については微生物学。夏休み明けに終わった試験として紹介しましたね。この教科書もおすすめ。

系統看護学講座 専門基礎 〔6〕―疾病のなりたちと回復の促進 微生物学 4

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オーバルの方が可愛いんだけどね

深爪による爪囲炎を防ぐにはどうしたらよいか。要は深爪をしなければよいのですが、深爪しやすい、しにくい爪の切り方ってものがあります。ま、この辺は爪にいろ縫ったりする肩だとすでにご存じかも知れません。

  • 深爪しやすい: オーバル(卵形に爪先を整える)
  • 深爪しにくい: スクエアオフ(四角型に爪先を整える)

私が爪囲炎にかかるときは見事にオーバルで切ってるからね。わかってるんだよ、特に足はスクエアオフにしとけって。でもなんだか、両脇を落としたくなっちゃうことがあるのだよ。そして後悔するわけだ...。

看護において、この爪の切り方は重要です。爪囲炎はまさにわかりやすい例。入院患者さんは概ねで身体が弱っているわけで、易感染な状態、日和見感染を受けやすい状態です。ここでオーバルに切るリスクを冒すのは愚かにも程があろうというものです。

その辺の看護技術について書かれている教科書はこれ。試験は来月だったかな。

新体系看護学全書 基礎看護学 3 基礎看護技術 2

新体系看護学全書 基礎看護学 3 基礎看護技術 2

看護学生がこれ言っちゃまずいんでしょうが、看護技術の教科書は「ふーん」って感じですかね。わかりやすいとかわかりにくいとか思うことはありません。これもご多分に漏れず。爪切りについては整容技術として記されています。

この教科書『基礎看護技術 II』では診療に伴う技術、呼吸と循環、創傷、与薬と輸血に関する技術が含まれていますので、割と看護学生以外が読んでおもしろい内容なのかも知れません。

とゆわけで、ナスたま1年生も折り返し地点になると、これぐらいは話をできるようになるようです。

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『基礎看護技術 II』の守備範囲だとこの2つ。

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感染のお話。

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*1:瘭疽とも呼ばれます。化膿性の炎症ですね。